第5話 リープの魔法
「今15時か、17時までここらで大鼠でも探すか。猫系は見当たらないし。後、リープの風魔法だな」
施設には、18時に帰れば大丈夫だ。
鼠探しの前に、リープが魔法を使えるか試そう。
「リープ、今でも無理か?」
「きゅきゅっ」
首を左右に振っている。なら、アレをやってみるか。
「いくぞリープ...供給! ...どうだ?今なら何か使えるんじゃないか?」
「ききっ」
「おおっ!出たっ」
リープが鳴いたと同時に、魔力が高まり、額の前方から風の塊が撃ち出される。人の頭大の瓦礫に、ズカッと重い衝撃を加えた。瓦礫が5つに砕けたな。今のってランク1の魔法か?結構な威力だぞ。
今やったのは、魔魂供給といって、オーラの一部を与えたり、借りたりできるスキルだ。
力を与えたら、もちろん俺のオーラは減る。魔力を10ポイント渡したから、今の俺は2しかない。代わりにリープは13まで上がった。
今は一体を対象に一つしか受け渡し出来ないみたいだ。
俺と従魔の魂が繋がっている証の様なスキルだ。かなり使えるな。
しかし、想定外の威力だったな風魔法。因みに、風魔法と言っても視覚で捉えることができる。空気が蜃気楼のように歪むし、翡翠色の魔力反応も出る。
これなら大鼠も一撃でいけそうだ。
リープには肩に乗ってもらって、鼠狩りを再開だ。
オーラは訓練やモンスターを倒した時、微量の気を吸収して境地が上がっていく。ランク外でも意味はあるだろう。
北に向かって移動していると、道路沿いに昔のファストフード店が見えてきた。何かいそうな雰囲気がある。
「きっきっ」
リープが何か感じたのか、店の奥に鼻を向けて何かを知らせてくる。どうやらリープのお仲間?がいるようだ。
バックヤードの方だな。鼠の鳴き声が、きーきー聞こえてきた。入口から見えたのは4匹、鳥の死骸をつついているようだ。大鼠は30センチ大の大きさの様だ。
『リープ!』
「ききっ」
頭の中で念じても、従魔には伝わる。奇襲に便利な能力だ。
練習時と同様に、風の塊が4匹の大鼠を襲う。鳥の死骸に集まっていたのですべての大鼠に命中した。
「一発で終わったな...」
一応、ナイフを抜いて近づく...問題ないな。
「魔石は1個砕けてるな...3個か」
ランク外の魔石なんて売れても数百円だったよな?ここは兵隊を増やしておこう。
「目覚めろ、大鼠」
魔石に魔魂術を施す。リープの時と同様、何かが繋がった感覚があった。
情報ではビッグラットだが、呼び名は関係ないようだ。それと、従魔が倒した魔石でも、発動に問題ないようだ。
「よし、ちゃんと復活したな」
大鼠のオーラは軒並み低いな。素早さと体力が2で、あとは1だった。
これを見ると、リープはランク外の中ではかなり優秀なようだ。最初の従魔がリープだったのは幸運だったかもな。
後に残ったのは、鳥の死骸だけだ。原型の半分くらいしか残っていない。元の大きさはリープより少し大きいくらいか。一応、魔石の確認はしておこう。
魔石は床に転がっていた。魔物って魔石は食べないのか?...大瑠璃?まんまだな。
綺麗な青い体が特徴の鳥。名前からは原生生物のおおるりが変化した魔物ということが分かる。どこかで怪我を負って、この辺りで力尽きたのか。大鼠がやれるわけないし。
「...リープならいけるかもな」
魔法なら鳥系にも攻撃が届く。リープの風魔法はランク外なら過剰すぎるくらいだし、F級にも通用するレベルだ。
そろそろ時間だし、鳥型も探しながら帰るとしようか。
「お前たちは、何かあれば教えてくれ」
「「キュー」」
大鼠たちにはあまり期待できないが、いないよりはマシだ。
「リープも頼んだぞ」
「きゅ」
ここまで危険はほぼ無かったが、もう少し市街地に近づくまでは気を付けないとな。
※アビス・コントロール ~魔魂術士の異界探訪~ をお読みいただきありがとうございます。
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