第4話 初めての魔魂術~リープラット~
市街地から結界を抜けて、大分寂れたところまでやってきた。ここらは人が住んでいるとはいえ、結界を抜けると緊張感出てきたな。初めてだから仕方ないよな。
魔獣がいても小型の鼠や猫に鳥くらいだ。こいつらは大体、エーテルの影響で魔獣に変化した、元は地球の動物だ。
小型だから大人しいわけじゃないけど、この辺りの魔獣に限っては害がない。害があったら真っ先にハンター達に駆除されている。犬系は駆除されてしまったが...
因みに、普通の動物も生き残ってはいるぞ。
「...いないな。もっと外側まで行くか」
すぐそこは異界。というところまで来てしまった。
「流石にやばいか?...」
いや、異界に入ってすぐ危ないわけじゃないしな。この辺りを探してみよう。
廃墟の建物や、暗がりを重点的に調べていこう。
「いた!鼠...大鼠か?」
しばらく探索していたら、錆びた大き目のガレージの奥に、1匹の真っ白な鼠がいた。ただ、大鼠じゃないかもな。よく見たら、体は20センチ程、耳が大きく、体の半分を覆ってるし、尻尾の先まで毛が生えてる。...なんか兎みたいな特徴だな。
「珍しいタイプか?でも、せっかく見つけたんだ。絶対仕留めるぞ」
俺はすぐにナイフを抜いた。入り口から逃がさないようにすれば問題ない。じりじりと近寄って、もう目の前だ。
こちらを警戒していた大耳鼠が、ぴくっと身震いし動こうとした瞬間、俺は一息に跳躍し、大耳鼠の首元にナイフを逆手で突き立てた。白い体毛を血がじわりと染めていく。
「...ふぅー。初めてだから、ちょっと緊張したぞ」
こいつもランク外だろう。逃げようとしてたしな。
いくら弱いとはいえ、魔獣は魔獣だ。初めて魔獣を仕留めて、自分でも興奮しているのが分かる。
「さ、気を取り直して魔石を取り出すか」
魔石の位置は大体、心臓近くか額に埋まっている。こいつのはすぐに見つかった。額に緑の結晶が覗いていた。簡単に取り出せる。
「ちっさ。1センチしかない...さすがランク外」
『魔石の入手により、能力が解放されました』
お?解放?出来ることが増えたのか。リープラット?それが大耳鼠の名称なのか。魔石から情報を読み取れるようになった。リープって何だったっけ?
さあ、ここからが本番だ。掌に魔石を載せる。
「目覚めろ、リープラット」
魔石が宙に浮き、元の体が霧のように分解し、魔石を中心に霧が包み始めた。そうやって一瞬で体の再構成を終えて、目の前には俺が仕留めた大耳鼠、元いリープラットが現れた。俺が付けた首元の傷も消えているようだ。
俺とリープラットの何かが繋がった感覚があった。
「きゅっきゅ」
「おお!鳴いたぞ。動いてるし、生きてるんだよな?」
『魔魂獣の召喚により、能力が解放されました』
...また能力が解放されたな。
事前に分かっていたことは、魔石と元の体が必要ということだけだ。生きているかどうかは分からない。もしかしたら、俺はネクロマンサーかもしれないぞ。
試しに、リープラットを抱えてみる。
「体温もあるし、心臓の鼓動もあるな」
どうやら俺は、ネクロマンサーではなかったようだ。それに近いことをやっているけど。ただし、復活させた魔物は、死ぬと二度と復活出来ないようだ。
従魔とは俺の意思と力の一部を共有できるようだ。能力も確認できる。他にもメリットはあるし、ネクロマンサーじゃなくて良かったかもな。
...やっぱり魔魂術のことは秘密だな。傍から見たら魔物使いにしか見えないだろうし、それで通すか。
よし、魔魂術については大分把握できたな。まだ時間もあるし、鼠探しを再開するか。
「おいで...」
名前、必要だな。能力も見てなかったし、何にしようか?
【種 族】 リープラット〈魔鼠・特異体〉雄
【名 前】
【ランク】 ー
【レベル】 1
【 力 】 1
【耐久力】 2
【素早さ】 3
【魔 力】 3
【体 力】 2
【知 力】 3
【スキル】 風魔法1 跳躍1
リープって跳躍のことか。気付きを得た。
「お前オスなんだな。オーラは当然低いけど...お前、魔法使えんの?」
「きゅきゅっ」
首を左右に振っているから使えないようだ。俺にも撃ってこなかったし。でも、風魔法ってあるしな。魔力が低すぎて使えないのか?後で試してみよう。
「それじゃあ、お前の名前は...ん-。フー、とび...いや、リープでいっか」
特異体ってことは、こいつが特別ってことだ。名前っぽいし、いいじゃないか。
「じゃ、これからよろしくなリープ」
「きゅ」
分かったよ。と言わんばかりに、頭を下にこくんと下げた。
ちゃんと伝わったようだ。こいつ頭いいな?従魔になったからか?
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