第30話 E級ダンジョン周回
宝箱を開けると、刀が収められていた。〈狼刀砂牙〉か。刀身が短めで、取り回しが良さそうだ。見た目は普通だが、抜いてみて分かった。これは魔剣の類だ。
地面に突き刺すと砂の棘が飛び出す。砂だから致命傷にはならないだろうが、牽制にはなるか?魔力を注ぐとさらに威力が増した。これなら使えそうだ。切れ味も今の鉄剣より断然良さそうだ。
「目覚めろ」
「ぐおぉん」
ちょっと縮んだけど、灰色の毛に覆われた大きな体は健在だ。体長2メートル、尻尾まで入れるともっと大きく見える。白鬣狼に近い大きさだ。
【種 族】 デザートウルフヘッド 雄
【名 前】
【ランク】 D
【レベル】 16
【 力 】 31
【耐久力】 24
【素早さ】 31
【魔 力】 16
【体 力】 24
【知 力】 26
【スキル】 爪襲術5・牙襲術5・砂地適応・統率・狼頭領
【経験値】 0/830000
元ボスだから名前は付けようか。荒野、砂漠、砂、狼...
「いいのが思いつかないから色で決めようか。んー...グレイにしようか」
「ぐおぅっ」
よし、一旦確認は終わりだな。ドロップ品は従魔達が回収している。後はダンジョンの核に触れるだけ。
このダンジョンはアビスシステムが用意したものだ。俺が触ってまた占拠ってことにならないよな?学園のダンジョンを踏破するには、核に触れる以外無いから結局触ることにはなるんだが...
迷っても仕方ないか、核に手をかざす。
『E級ダンジョン核に接触しました。能力を強化します』
『【狼の荒野】のアクセス権を獲得しました』
『【狼の荒野】の環境を獲得しました』
『【アビスネットワーク】を構築可能です。ランク4で実行可能になります』
良かった。アビスのダンジョンを占拠しなくて済んだし、アクセス権は手に入った。魔魂術がアビスの力だから当然かもしれないが、今後ドキドキしなくて済むな。アビスネットワークは気になるけど、今の俺では条件が不足しているようだ。残念...
学園の腕輪にダンジョンのクリアが刻まれたはずだ。探索者証と腕輪の情報から毎週SPの配布量が変動し、1ヵ月毎に成績が公表され、等級の高い報酬が得られる。E級クリアはポイント高いだろうな。
日を跨いで1時55分、流石に疲れたな。従魔達にも強行軍させたしホールに入って寝よう。
空間内は更に広くなっており、狼の荒野をメインとした作りに変えた。元々暗くはなかったが、光が射していると落ち着くな。寝床として洞窟も一部残してある。
「みんなおつかれさんだ。明日もあるから、もう休もう」
魔魂空間には、ダンジョン内で過ごすことを考えて、あらかじめ寝袋を用意しておいた。携帯食を食べて寝ることにする。今度からは食料や食器も準備しておこう。
◆◆◆◆◆◆
ダンジョン内で安全に眠れるって反則だな。学園のダンジョンは、外に出なければ新たにポイントを払う必要がない。俺は物資さえあれば、いくらでもダンジョンで過ごせる。他の生徒からしたら、反則に近いことをやっている...気にしないようにしよう。俺は強くなりたいんだ。それに週末限定だしな。
朝7時、若干寝不足だが経験値を稼いでおきたい。ついでに疑似生命核も手に入れたいしな。因みに、ダンジョン核のアイテム交換機能で疑似生命核は交換できる。だが、それはしたくない。1つ20000ポイントもしたからだ。これならダンジョンを巡ってドロップを狙いたい。
今日最初の仕事は、ボス部屋の攻略からだ。早速ホールを開こうとすると、謎の力にグイッと引っ張られる。
「うわっ」
外へ出るとボス部屋の扉の前に戻されていた。扉が閉まっていると閉鎖空間になっているようだ。焦った。一瞬、死が頭を過ぎった。ズルするつもりはないが、咎められた気分だ。
でもやることは変わらない。一度倒したボス、さらに昨日よりも増した戦力で一網打尽にした。今回は〈渇きの槍〉が出た。これはカンに渡してやる。
本番はここからだ。なるべく早く回るために、チームを2つに分けることにする。昨日までは初見だったから安全マージンを確保したが、今日は大丈夫なはずだ。
・Aチーム 俺・リープ・ギンコ・キバ+ゴーレム達
・Bチーム グレイ・ワンダー・カン・ブルー・リーダーウルフ+ゴーレム達
Bチームは俺の代わりに層を厚めにしておいた。何かあっても念話が出来るから心配はない。
「みんな行くぞ。チームを頼んだぞグレイ」
「ぐおうっ」
これなら1層を、1時間掛からずに攻略出来るかもしれない。1階層にはゴーレムが出ないから2階層から折り返そう。4階層に守護者がいれば、疑似生命核がまた手に入るかもな。