E級ダンジョン④
地魔法の穴掘り魔法は地削りというらしい。初期魔法にしては珍しく、魔力の溜めが必要になるが、術者の遠くにも発動できる。俺と戦った時のように、術者周辺ならば、ほぼノータイムだ。
魔力を込めると、最大で直径2メートルの穴を生み出せるので、汎用性もある。デカ人形には、自分と同じタイプを優先して狙うように指示しておいた。
初期魔法は、術者の手元から飛んでいくものが多いが、中級の魔法には、遠距離に発生する魔法がある。遠距離発生型は、発動までに魔力の溜めが必要で時間がかかるし、魔力の高まりを感知されるので、避けられやすいのが難点だ。当たれば申し分ないわけだが。動きを封じる為の牽制に使うか、難しいが、避けられない状況を作って当てることが基本だ。
リープやカンのスキルが、もう少しでレベル6になるはずだ。レベル6になると、中級魔法や戦技が使えるようになる。遠距離発生型も、従魔達で囲めば、容易に当てられるだろう。戦力も上がるし、戦い方も変わるだろうから楽しみだ。
「それまでは地道に行くか」
『......』
「どうしたんだ?」
荒野狼の群れを倒しながら進んでいると、チビ人形がこっちに来てと意思を飛ばしてきた。ちび人形の下へ行ってみると、2メートル大で、草が所々生えた岩塊がある。周りの岩より白っぽい気がするな。これがなんだろうか?
チビ人形が岩を叩く素振りを見せる。これを壊せってことか。ならデカ人形に地削りを使ってもらおう。デカ人形も何かあるのが分かるようだ。魔法を発動させ、岩を1/3程削ると中は空洞になっており、小さな木箱が出てきた。
「え?これって宝箱じゃん」
E級だと滅多に見つからないって言われてるんだけど...
罠はないよな?
「チビ、悪いんだけど開けてくれ」
コクリと頷いて木箱を開ける。チビ人形には何も起きない。
流石にE級で罠は無いか?でも、今後も開けてもらうのが無難だ。
「ポーションっぽいな。助かる」
俺は、ホールに木箱ごと仕舞っておくことにした。魔魂空間は、ダンジョンの環境をコピーしてから物も入れられるようになった。
現在、中には従魔達と、今日の戦利品が入っているのみだ。物資さえあれば、ダンジョンだろうが異界だろうが、安全に寝られる空間になった。
「お前達、ありがとな。他にもあるか分かるのか?」
頭をブンブン左右に振っている。どうやら分からないようだ。近くにあれば分かるのかもしれないな。劣岩人形が岩のゴーレムだから分かるのか、2階層のモンスターだから分かるのか、どっちだろうか?両方の可能性もあるな。デザートウルフで試してみよう。
先程倒したデザートウルフ1体を復活させて連れて行く。これでゴーレム達との反応の違いで確認できるはずだ。狼もゲートまでの道のりは分かるが、宝箱は分からないのは確認している。
劣岩人形の数は少ないようだ。階層が深くなれば増えるかもしれないが、2階層のモンスター40体の内、8体が劣岩人形だった。兵隊の役目をコボルドからゴーレムに変えた方がいいかな。
因みに、魔魂獣は従魔から解放しても消えていなくなっている訳じゃない。解放しても魔魂空間の中で暮らしている。大鼠達も健在だ。ただ、外に出ると消えてしまう。可哀そうだが我慢してほしい。今のところ不満はなさそうだが、何とかしてやりたいとは思っている。
短剣使いのコボルドを解放し、劣岩人形をさらに増員した。リープ達5体の主力とコボルドランサー1体、デザートウルフ1体、ゴーレム8体の編成が出来上がった。
...ゴーレム達は、このダンジョンのキラー的存在だな。狼達も善戦はする。纏わりつくチビ人形を爪で追い払い、牙で致命の一撃を狙うが、ゴーレムの耐久性には敵わない。まごまごしている内に主力に狩られてしまった。ここって狼達メインのダンジョンのはずなんだけどな...
そうこうしている内に、2階層の探索が終わった。階層門からはいつでも入口に戻ることが出来る。今日の収穫を整理しよう。
宝箱はもう一つ発見した。中身は同じくポーションだった。重症は無理だが、大抵の傷を癒してくれるから何本あっても困らない。
岩の中にある宝箱は、ゴーレムしか感知できなかった。種族の特性が重要だったみたいだ。
2階層のモンスター数も80体、内ゴーレムが16体だった。1,2階合わせてE級魔石148個、荒野狼の毛皮や牙が30個前後、劣岩人形の小塊2個、ポーション2個が今回の戦利品となった。
学園の腕輪は、3300ポイントから4100ポイントに増えていた。1体10ポイントで、2階層攻略出来れば元が取れると。
時間も21時20分前だ。よし、今日は帰ろう。
「みんなおつかれさん。帰ろう」
ゲートを潜って外に出る。ダンジョンルームを出ると、当然夜空が広がっている。ダンジョンは昼間の明るさだったから、不思議な新鮮さを感じる。
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