第23話 E級ダンジョン
邑灘学園の授業は中学と変わらずあって、教養科目は特筆することは無い。他の高校よりも学ぶ範囲が狭いくらいだ。この学園で優先されるのは探索者専門の授業だ。
罠の知識や集団狩り等の狩猟知識、魔物のやダンジョンの知識、獲得した資源の有効活用法、異界の植生と様々ある。
一般教養の勉強は眠くなるから好きじゃない、でも探索系は座学も新鮮だし、実習も多くて楽しめてる。戦闘訓練は中学の時は型の練習か対人戦が主だったが、ここでは対戦相手がモンスターだ。もちろん受験の時の幻術体だ。幻術体を倒しても、オーラが成長することはないが、リスク無しで格上とも戦えるのは最高の体験だろう。
一度、C級の白鬣狼を出してもらった時は、生徒4人で囲んでも相手にならなかった。善戦はしたけど、攻撃が通じなかったという方が正しいか。最後、噛まれる直前に幻術を解いてもらったが、死ぬかと思った。慢心していた俺には、いいお灸になった。
入学してから3日、大分慣れてきたので放課後にダンジョンルームに行こうと思ってる。因みに俺は、カンと同じく忍び足を手に入れた。
戦闘スキルもあったが槍と短剣、使えない牙強化系だったので、今回は汎用性が高い隠密系を選んだ。牙襲術はギンコに取得させた。リープには風の道という、風属性を微強化スキルを、ブルーには火属性版の火の道を取得させた。
最後にキバは追跡という直近の足跡を辿れるスキル取ってもらった。
E級ダンジョンはどこを選ぼうか、12部屋あって半分以上は空いてる。先輩達は異界にも行っているし、1年はF級だ。F級は1階層しかなく、一度に4人しか入れない。E級は5階層で一階層がF級の倍広く、1層ごとに4人、計20人は入れる。E級からは、人気の場所でもない限り順番待ちは起こらなさそうだ。
人数制限はF・E級のみらしい。外の世界はそんなもの無いし、D級からは学生4人じゃ厳しいんだろう。
狼の荒野ダンジョンの扉で、800ポイント払う。E級は、攻略状況によって、各階層に飛べるようだが、俺は最初からだ。F級は300ポイントで入れる。ポイントを払った時、俺は気づいた。
「これ、核に吸われてるよな?」
もしやと思い、俺はすぐにコボルドダンジョンのCPを確認する。
おお!かつかつだったCPが増えてるぞ。もう4200ポイントも増えてる。生徒が利用すればするほどプラス収支だ。利用数にばらつきはあっても、1日1000ポイント以上は見込めそうかな?扉の吸収機構はアビスもカオスも関係ないんだな。ありがとうアビス神。
予想外の出来事についほくほくしてしまった。気を取り直して扉の中に進む。E級ゲート、見た目はアビス産も一緒だ。F級より少し大きいくらいか。俺はゲートに手を触れた。
『【狼の荒野】
・ランク・E
・荒野型・5層
・主な種族:狼族 劣岩人形 』
狼ダンジョンの情報か、見れるの忘れてたな。今回は俺の能力に変化は無かった。ちょっと期待してたけど仕方ない。そのままゲートに入った。
「空がある!デカい岩もあるなー」
地面は基本砂地で、さらさらした個所や硬い砂岩で構成されている。所々、岩が露出していて、初めて見る景色に興奮してしまう。基本は平地のようで、岩山っぽいのも見える。
ここは洞窟型と違って四方に空間が開けてるから、気を付けないとな。纏衣を使えば視野を確保できるが、常時使うには魔力が持たない。
でも、俺にはこいつ等がいるからな。4人パ-ティより目がある。リープ達主要戦力5体に、10体のコボルド集団だ。魔魂術レベル3になって、最大従魔数30体、同時召喚数は15体になった。
邑灘学園に入る前、F級で修行中、気づいた重要なことがある。深化したことで、俺と魔魂獣の繋がりが強化され、気の吸収量が、並列化していたことだ。完全にとはいかないが、魔魂空間にいるコボルド達のレベルも上がるようになっていた。
検証の結果、俺と召喚している従魔は、経験値の分配が起こらず、魔魂空間のコボルドは7割の経験値を得ていることが分かった。戦闘スキルは、個別で訓練しなければいけないが、とんでもないズルをしている気分だ。
何が言いたいかというと、F級だったコボルド達もE級になって、ここでも十分使える戦力になったということだ。最近は、ずっと洞窟で過ごしていたからな、みんなには暴れてもらおう。大瑠璃のブルーも、羽が伸ばせるだろう。
アビス・コントロール ~魔魂術士の異界探訪~ をお読みいただきありがとうございます。
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