第21話 入学
俺は、無事に邑灘学園に合格すことが出来た。もちろん俺だけじゃなく、美月も武も受かっている。俺達と距離の近い連中は、大体合格している。
実は、うちの中学優秀だったんじゃないか?正確な人数は知らないけどな。
「入学から早々、順位付けさせられるとはな」
「この腕輪で管理してるんでしょ?まあ、殺し合いじゃないんだから大丈夫よ」
「不穏なこと言うんじゃないよ」
「ハードな学園生活は望むところだぞ」
この学園では、通常授業以外はポイント制と言っていい。簡単に言うと、ポイントを稼いで消費することで学園からの報酬が得られる。点を獲得するにはいくつかあるようだ。学園が決めた日時に行われる対人戦、魔物の討伐、ダンジョンの攻略、学園の仕事等がある。今日の説明ではこんな感じだった。
そして今日、入学初日から行われるのは対人戦だ。生産科は関係ないが、特殊科は割を食うかもな。戦闘向きならいいが、そうじゃなければポイントを稼ぐ手段が減るということだ。
いいのか?流石に理不尽じゃないか?
「特殊科の非戦闘員の皆さんは、こちらに集まってくださーい。生産科の皆さんは、生産棟に移動ですよー」
どうやら何らかの救済があるようだ。学園もちゃんと考えているようだ。俺は対人戦に参加するから関係ないが、不審は抱きたくないしな。
「対戦は、最低300ポイントから賭けるように。あと、ここで使い果たすなよ」
俺の腕輪には、1500ポイントと表示されている。このポイントは、入学試験の結果から決められているらしいが、高いのか低いのかまだ分からない。
50メートル四方の舞台が10もある。魔法も使うし、遠距離メインの生徒もいるだろうから十分な広さだ。
今回は、ルールが入学式用だから誰とでも戦えるらしい。誰が強いかなんて分からないからな、ここで見極めろということか。
今回はあいつに戦ってもらうか。俺が魔物使いだってことを、しかっり宣伝しとかなきゃな。
「出てこい、カン」
【種 族】 コボルドランサー〈特異体〉雄
【名 前】 カン
【ランク】 E
【レベル】 14
【 力 】 33
【耐久力】 21
【素早さ】 26
【魔 力】 17
【体 力】 22
【知 力】 20
【スキル】 獣槍術4・投擲3・忍び足2
【経験値】 1000/410000
カンは、俺と同じレベル14だ。F級ダンジョンでは、もうレベルが上がらなくってきた。新入生にはきつい、というか勝てないだろう。忍び足も追加したし。
『いくぞ、カン。お前の強さを見せてやれ』
『がる...』
「お前テイマーか、でもコボルドなんか相手にならねーよ」
こいつ舐めてるな。カンには加減を教えているから問題ないだろう。
「くっ、こいつ!どこいった!グへッ」
...まるで相手にならないな。戦闘技術どうこうじゃなく、レベルが違い過ぎて、攻撃がかすりもしない。たまに忍び足で足音も消してるし、可哀そうになってきた。つまらないとばかりに、カンが石突で腹を軽く打って終わらせた。
「これで300ポイントか。よくやったぞ、カン」
果たして俺に挑んでくる奴はいるのか?カンにもっと手加減させるべきだったかと考えていると、次の対戦相手が上がってきた。杞憂だったか。
「俺も300ポイント賭ける。コボルドと戦わせてくれ」
「後悔するなよ、カン頼む」
「がるぁ...」
どうやら物怖じしない奴らが多いようだ。都合がいいな。あいつらにも、カンにもいい訓練になる。カンは手加減のだけど。
結局、カンは10人抜きを果たした。10人の時点で先生からストップがかかってしまった。仕方ないが、戦果はバッチリだ。計3600ポイントも稼がせてもらった。
因みに、生徒の初期ポイントは大体1000前後だった。俺はまあまあ良かったんだな。
「あのコボルドやべぇよ」
「ほんとにアイツの姿が消えたんだ...」
「魔法も狙いがつかないもんなぁ」
「レベル差があっただけさ」
等々、カンの話で盛り上がってるな。
生徒は全員寮生活で、1ヵ月分を毎回ポイントで払う。最低100ポイントらしい。今、5100ポイントあるからグレードの高い寮にしてみるか。一度くらい経験するのも悪くない。