第18話 探索者証
12月。
4ヵ月間、CPの赤字をAPで補填するという一人自転車操業という荒業で、約2万ポイントのAPを稼いだ。これにはダンジョンも困惑したことだろう。
経験値は40万ポイントを超える。レベルは13になった。
この修行の様な作業の毎日の中で、想定外のことがあった。贅沢な話なのだが、がっかりしたというか...
そろそろスキルでも取ってみようかと選択したら、警告文が出てきた。能力付与は一個体に1つしか付与できないということが判明した。
当初の俺は、ポイントを貯めれば、無限に強くれる。なんて子供じみたことを考えていたのだ。気づいた時はショックだったが、よく考えれば話がうま過ぎたな。
ま、コストも高いから、ぽんぽん取れるものではないんだが...
とりあえず、ダミーコアに4000ポイントを使っておいた。
それに、無限の可能性はまだ残っている。要は同じダンジョン核じゃなければいいのだ。
◆◆◆◆◆◆
2月、俺達は大きな四角い建物の前に来ていた。
「協会って初めて来たなぁ」
「僕も初めてだなぁ」
「こんな所で、おのぼりさんにならないでよね」
邑灘協会本部は、邑灘市の中央にある。ここは本部付の探索者がメインで使い、その他大勢の探索者は街にいくつかある支部を利用している。
本部付が偉いとか、支部が下とかいうことではない。職員さんで言えば、本部が当然上だが。
そんな本部に中学生が何の様かというと、
「おはようございます。探索者証の発行に来たんですけど」
「おはようございます。探索者予定書はお持ちですか?...はい、少々お待ちください」
美月が代表して用を伝えて、予定書をまとめて渡すと、職員は下がっていった。予定書は、ちゃんと学校に行ってたら貰える。
職員が戻って来て、5センチ程のプレートを渡された。こいつにオーラを流せば本人を認識する。
「お?」
プレートとも繋がったし、アビスシステムとも繋がった感じがした。
なんだ?
2人はプレートのことしか感じなかったらしい。俺の深化と関係あるのかも?
分からないことは置いといて、ついに探索者の証を手に入れたぞ。こいつは魔道具の一種で、本部でしか発行されない、優れた記録端末だ。
プレート発行のために生徒が集まるから、2月から発行して、人が集中しないようにしたそうだ。
何が優れているかというと、倒したモンスターのオーラを検知し、名前と数を記録してくれるのだ。昇格の指標にもなる。
その説明で、俺はあることに気づく、確証は無いから後で確かめてみよう。
「赤枠でF級か」
赤 橙 黄 緑 青 藍 紫
F E D C B A S
色ですぐ階級が分かるようになっている。目指すなら紫、S級だよな。
2月末に、邑灘学園の試験が始まる。落ちる気は全くしないが、探索者証を見ていると、なんだか気がはやるな。
「ねぇ...今日から修練に付き合って欲しいんだけど」
「いいぞ。俺もそわそわしてたんだよ」
「僕も、なんか落ち着かないんだよね」
2人も俺と同じ感覚を抱いたようだ。試験まであと少し、...扱いてやるか。