第11話 深化~コボルドランサー~
「...ボスも復活出来たら最高だな」
魔石を手に取る。
『Eランクの魔石を入手しました。能力が強化されました』
魔魂術のレベルが上がった。魔魂纏衣ね...これは俺の欠点が補えそうだ。ありがとうアビス神。これは後で試そう、まずは...
『コボルドランサー・ランクE・レベル8・スキル〈獣槍術3・投擲2・ボス』
レベル8で槍術3...そりゃボスがF級なわけ無いよな。一対一なんてしなくてよかった。
じゃあやってみるか。
「目覚めろ、コボルドランサー」
気が集まってコボルドランサーの姿を形作っていく。現れたランサーは、ほっそりとした体躯はそのままだが、何故か身長が縮んでいた。180センチもあった上背が、今は150程になってしまった。
何故だ?
【種 族】 コボルドランサー〈特異体〉雄
【名 前】
【ランク】 E
【レベル】 8
【 力 】 16
【耐久力】 11
【素早さ】 15
【魔 力】 9
【体 力】 12
【知 力】 11
【スキル】 獣槍術3・投擲2
なるほど、ランクもレベルもそのままだが、ボスという特性が失われたからか。能力値も落ちているっぽい、でも強い。金属製の槍を装備しているから、しっかりとした前衛になってくれそうだ。
「名前はどうしようか、流石にランサーは可哀そうだよな...槍、突く、つらぬく、かん...決めた。お前の名前はカンだ。よろしくな」
「がるぁ...」
カンは了解したとばかりに小さく顎を引く。静かな性格の様だ。
諸々確認を終えて、今日の本題が首を長くして待っている。
カンが元いた上座の奥、台座の様な岩の上に直径20センチ程の青い球体が浮いている。ダンジョン核だ。淡い光が綺麗だ。
魔魂術は、確実にこいつと関連性がある。じゃなきゃゲートに反応するわけ無いしな。また何か、能力が解放されるんだろうか?
「...ふぅ」
俺は、軽く深呼吸してダンジョン核に手を伸ばす。
『新規のダンジョン核を認識しました。あなたを介してアクセスを開始します』
「え?」
『ダンジョン核に接触しました。能力が解放されました』
『【コボルド族の住処】のアクセス権を獲得しました』
『【コボルド族の住処】の環境を獲得しました。』
『【コボルド族の住処】を占拠しました』
『ダンジョンを占拠しました。能力が強化されます』
『【アビスシステム】を深化します』
「お、お?なんだ?あっつぃ」
「あ...やば...」
システムがメッセージを捲し立てたと思ったら、大量の情報が流れ込んできた。身体の下から上まで熱い何かが駆け抜けて行く。頭がすっきりとした爽快感を感じた時、俺は意識を失った。
◆◆◆◆◆◆
「きゅぅっきゅ」「ぐるぅ...」
目を覚ますと、リープ達が心配そうに俺を覗いていた。
「いたた、みんな悪かったな。どうなったんだ?」
硬い地面に転がっていたせいで体が痛む。今、何時だ?時計を見る。
「17時55分か」
四時間くらい経ったのか。まさか気絶するなんてな。昼間にここを攻略しに来てよかったな。
頭は、はっきりしている。アビスシステムが深化して、身体に最適化したようだ。
深化した時、流れてきた大量の情報は、俺の能力に付随したものだけど、アビスやゲートの重大なことを知った気がする。
魔魂術は特別な能力だったとしても、俺はそうじゃない。
俺は出来ることしかやらないしな。
まあ、俺の行動の過程で、アビス神の思惑に適うこともあるかもしれない。そこは気楽に考えよう。
能力の確認は後でやるとして、いい時間だし、一旦帰ろうか。
俺は魔魂空間を開く。
みんなが、開いたホールの先に広がる空間に一瞬驚いているが、順々に入っていく。この空間には、俺も入れるようになった。
「開け」
入口のゲートと同じものが目の前に現れる。...めっちゃ便利なんだが。ゲートを潜って外にワープした。
久しぶりに太陽の光を浴びた気がする。初日に見た夕陽よりも眩しく感じた。
紆余曲折あったけど、目的を果たさなきゃな。
俺はダンジョンの入口に手をかざす。
「閉じろ」
ゲートが消えていく...
初めてのダンジョン攻略で思わぬことが起きたが、無事クリアだ。
今日はぐっすり眠れそうだ。
※アビス・コントロール ~魔魂術士の異界探訪~ をお読みいただきありがとうございます。
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