他国を目指して 4
人を避けているせいもあって歩むスピードは少し遅い。
けど、その甲斐あってか誰にも話しかけられないまま進むことができている。
ポシェットの中に食料はそれなりに入ってるので特に問題もないけれど、さっき通り過ぎた冒険者を避けるときに別の道に逸れちゃった。光を指に灯して地図を見つめる。ルート変更が必要そうだった。
「あれ?でも前回の道よりショートカットになってるみたいだけど」
地図には今までの道に線が引かれていたけれど、ただ辿り着くためであれば今いる道の方が早いように思う。
何か理由があるのかなぁ?
首を傾げても、答えてくれる人はいないし、戻ってさっきのなんか乱暴そうな人たちにかち合うのは嫌。あと、まともな人だった場合はしょうがないけれどダンジョン外に追い出されちゃう可能性が高い。うん、ちっさい子がダンジョンにいたらそうなる。
とりあえず進もう!
立ち上がって、えいえいおーと拳を上に向ける。
こういうのは気分だ。気分。
全く人に会わないのは逆にラッキー。でもなんか道が狭くなってるのは気になる。
結界を道の幅ギリギリに展開したらブラッドバットが私が移動するたびに潰れている。まぁ、魔物だし……うん。大量に倒してるからたまに魔石出るけど、雑魚なので基本的には何も出ない。
いや、それにしても多いな!?
しばらく進むと、赤っぽい重厚な扉を発見した。私が近づくと勝手に開く。
足を踏み入れると次は自動で閉まった。思わず後ろを振り返ると、ガシャンガシャンと大きな音が聞こえて、扉から音の方へ顔を向けた。
「巨大ゴーレム…?」
まさに腕を私に向けて発射するところだった。
ちょっとだけ可愛くない悲鳴を上げて、慌てて結界を強化して弾き飛ばした。
いや待って、硬い!!?
えっ?こわ……!
あっ、でもなんか結界の強度の方が強いみたい。練習してきてよかったー!あの虐待か?みたいな聖女生活も無駄じゃなかったー!いや、今回そんな生活してないので何も知らない人から見たらズルかも。
ゴンゴン壁と結界にぶつかる大きなゴーレムを、膝を抱えて眺める。もう見てるしかできないし。
今までよりも長い時間がかかったけれど、1日くらいずっとぶつけてやっと消滅した。すると、赤い宝箱が現れてそれを開ける。
「お金と装備だ!」
こういうところで手に入る装備っていうのは大抵持ち主の身体のサイズに変化してくれる。
拝みながらとりあえずポシェットへ。
扉を抜けて、先に進めばあともう少し!
◯メモ
ブラッドバット
吸血蝙蝠。数によっては地味に脅威。虫除けとかで大体はなんとかなる。
年に数名は血液全部吸われて死ぬ。たまにちょっと強い個体がいてそいつが魔石を落とす。
種族生死関係なく血が餌。餌の都合上か、生物がよく死ぬところに多く生息する。