他国を目指して 3
エトナ洞窟に辿り着いてこっそりとその中に入る。
エトナ洞窟は洞窟型ダンジョンだ。こんなど田舎にあるのにそれなりに人がいるのはここでレベル上げを狙ったり報酬目的かな。
他の冒険者たちの大きな声は聞こえるが、まぁ彼らはダンジョン攻略をするために来たのだろう。私のいく先とは道が違うので、出会うことはないと思いたい。
今の私は、基本的に人間が怖い。
聖女という道をとざしたのにはそういう理由もある。
発表された理由を信じて、他人に石を投げ、暴力を肯定する。そんな存在が恐ろしくないわけがなかった。
死んだことには本当に後悔はない。ただ、痛めつけられたことに何も思っていないわけではない。
唇を噛んで静かに枝分かれした道を進んだ。
ダンジョン内だから普通に魔物も出る。
光の魔法でも攻撃に使える魔法もあるって聞くけれど、私がいたのは教会だったからかそういうのは教えてもらえなかった。正直、逃げられたくなかったからじゃないかって今なら思うけれど。
いくら私の魔力が膨大でも、普段から国を覆う魔法を使わされていたこともあり、自分自身を守るための力はそこまで持たされていなかった。きっと私が消えたらあのお嬢様たちが数人がかりで聖女候補として必死に結界を張るだろう。前も、私の力が失われた後にそうしていたし。ただ、今までサボっていたこともあってか持続はしなかったみたい。
「ひ……っ!びっくりしたぁ……」
現れたゴーレムが岩の塊みたいなものを発射してくる。あと、腕が火を吹いて飛んでくる。結界があるからまぁ大丈夫とはいえびっくりするし正直いきなりは怖い。
とりあえず動けないようにならないかなぁ。
結界を少しだけ大きくすると、ゴーレムが壁にめり込んだ。そのままそこに近づけば、壁と結界に交互にぶつかって少し後に光が散っていくような感じで消えていった。
「結界でも壁にぶつけてヒット作れば魔物が倒せる…だと?」
驚きの発見だ。
魔法を正式に学ぶまで攻撃手段がないって思ってたのにこんな方法があるなんて!
というかなんか金属が落ちているので拾っていく。ドロップアイテムなら売れるだろうし。
嬉しい誤算で虫系やゴーレム系の魔物を押し潰して進む。ゴースト系はこれでも元聖職者なので、パッと消滅させられます。魔石っていうなんかキラキラした石もちゃんと拾う。
これ、教会のお金にガメつい方々が私から全部取り上げていたから絶対貴重品だ。間違いない。そういうところだけ信用できるのがきついけど、今役に立っているからなんとも言えない。
途中、冒険者とすれ違いそうになった時は大きな岩場とかに隠れた。幸いというか、虫やネズミには慣れっこなので特に悲鳴も上げずにすむ。
地図を見ながら慎重に進む。ここまでは地図通りだ。時折書いてあるのはお父さんの字かな?すごく役に立つ。お父さんもお母さんもある日いきなり、事故に遭って死んでしまったんだよね。
前回の人生でも聖女の業務に追われてお墓参りすら出来なかった。今回も何もできないっていうのは寂しいけれど。
「そういえば、お母さんの時計も無くしちゃったな」
前回でジェリーとさよならをした時に、「離れていてもあなたを思っています」って言って渡したけど、今回は渡していないのであるはずだった。でも、いくら探しても出てこなかったの。
どうしてかなぁ。
◯メモ
ゴーレム系の魔物
鉱石で構成されている。基本的には魔法に弱い。また。コアと呼ばれる目のような玉を射抜いたりできれば倒すことができる。
ドロップアイテムは構成素材による。レア素材として魔力を強く内蔵した鉱石がドロップすることもある。