過去の手がかり5
最終的に双方血まみれになりながらドライさんは勝った。
なんというか、無理してほしくはないけど本人が強敵を見つけたら突っ込んでいく性格のようで、邪魔をする方が双方危ないのだ。
奥にあった宝箱から出た槍は「俺は槍使わねぇのでジェリー要ります?」とドライさんが手に取って問いかける。それに対してジェリーは「慣れない武器を使ってもな」と考え込む素振りを見せる。
「メグ、とりあえず保存しておいてもらって良いか?」
「はい」
いつものポシェットに槍を入れる。お金に関しては一人で倒したドライさんにまとめてお渡しした。
改めて遺跡を見ると、奥に血がついた手帳のようなものを見つける。美しく流れるような字だ。それはどこか、地図に書いてあった父の文字と似ていた。
「あの時計に近いものもないようだな」
「そう簡単に見つかるものでもないでしょう」
ジェリーたちが後ろで話しているけれど、それよりも手帳を軽く読んで私は目を見開いた。
──これは逃避行の記録だ。
滅びた国から恋人を連れて、命からがら生き延びた男の手記である。
どこか見慣れたような字で記されたそれは最後の方ブチギレていた。なんか、魔物がゴロゴロいるとか、魔猪の大群とかどうすればよかったとか書いてある。ここを無事に通り抜けたとしたら新しい手帳に「鎧猪がこんなとこにいるとか聞いていないが!?」とか書いていると思います。私もそう思った。
「骨とかはねぇので、その手帳の主も何らかの方法で脱出……もしくは踏破した可能性が高ェっスねぇ」
戦いで血を流して頭が冷えたのか呑気な声が後ろからかかった。治療は済ませたので、怪我はないはずだけど返り血がベッタリで一瞬びっくりする。治したの自分なのにね。
「そうであれば良いのですけれど」
もう顔も覚えていない父とよく似た字を書く方だ。元気であれば良いと思う。
遺跡のもう少し奥を調べると、壁に短く刻まれていた文字はこの国の古語のようだった。
「うん、遅いな」
エイリーク義兄様が半目でそう言った。ちなみに文字の内容は「鎧猪がいるぞ」である。確かにそれは扉にでも書いてもらわないと見た時には幽霊になっていることも考えられる。
床にポツポツと続く血の跡は台座のようなもののところまで続いていた。紙が落ちていて拾い上げた。
──我が愛し■■、■ルー■ル■
お前しか助けられ■■無き■を許■■■くれ。しかし、我が国の宝を、■■■■お前を■■ためにはこうする他なかったのだ。
我らが血族に伝わる■■を発動させること叶わなかった今、もはやこの運命を覆すことは■わぬであろう。
発動させられなかったとはいえ、奴らの狙う■より賜っ■、■を操るともいう■■を渡すわけに■■■ぬ。もし何らかの手段で意のままに操ることができればその時こそ、より多くの者が■しむことになるだろう。
どこか見知らぬ遠い地で、お前が■■になれることを心より祈る。
ところどころ、血で汚れて読めないけれどどこか切実な祈りのようなものを感じる。署名があるけれど、その部分は執拗に消されている。見られるのがまずい相手でもいたのかもしれません。
そんなことを考えていると、台座の上が少し光っているのが見えた。
「何……?」
「どうかしたのかい、メグ」
「いえ、あそこ。先程まで光っていましたか?」
ジェリーに問いかけると、彼は眉間に皺を寄せて「光?」と繰り返した。
「そんなもの、私には見えないけれど」
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