過去の手がかり2
まずは依頼をしっかりとこなさないと。
他国の民だった私を受け入れてくれたこの国には感謝しているし、友人も家族もできた。だから、彼らのためにできることはしたいと思っている。
……まぁ、やっぱり命まではかけられないけど。そんなことをすればジェリーがどうなるか想像がつかない。私の一番大切な人に何度もあんな顔をさせたくはないし。
一度目の人生の時は私も大概恋に溺れていたから気が付かなかったけれど、ジェリーってば私が思う以上に過激だった。
私に何かあれば、おそらく彼もただでは済まないだろう。
私が不幸になって史上最悪の悪魔を産む可能性もあるし、後をすぐさま追いかけてくる可能性もある。どちらにせよ、碌なことにならない。いえ、そういう一途なところもちょっと可愛いと思うし好きだけれど…!
「それでは、聖女様。並びに警護の皆様。よろしくお願い致します」
この度の討伐の責任者である人に話しかけられる。はい、と返事をして手始めに周囲を浄化する。
魔物が発生する場所は瘴気が多い。それを祓うことで魔物の弱体化と減少が期待できる。流石に正面切って突っ走るのは「攻撃魔法が使えない」という私の能力の性質上無理だと判断されている。
私の力が規格外だとはいえ、もし何かあった時の損失を考えるとその方が安心ができるらしい。あと、私たちの研究も完成していないので、魔法の完成による国力の安定を期待されている今、まだ私を失うわけにはいかないという事情もあるようだ。
「これがジャンヌ様であれば、国の旗を掲げ、魔物との戦いで陣頭指揮をとられるだろうに」
そんなことを言っている青年が将軍に拳骨を落とされていた。
「グリズリー嬢がいなければ、現在軍に配給されている魔法回復薬はもっと質の悪いものだった。それだけで我々の生存率は上がっている。攻撃特化の聖女と守護特化の聖女の違いは幼子でも習う内容だぞ」
あと、補助特化の聖女もいるらしいけれど、その聖女がいる国の留学生は聖女のことになると笑顔で口を閉ざした。
彼女は教えてくださらなかったけれど、本当にどういう方なのでしょう。
「聖女によって特性が違うのは何故でしょうね?」
「各能力保持者の性格によるんじゃないかな」
「いえ、今でも私攻撃魔法使えるようになりたいのですけど」
本当に守りと治癒以外は使えないの。
まぁ、一度目にバレなかっただけマシだと思いましょう。
そう思いながら、怪我をして後退してくる兵を治療し、比較的安全になった場所から浄化し、強い魔力反応が有れば結界を貼った。
全部終わったあと、ジャンヌ様と比べてきた方々は膝をついて尊敬の眼を向けてきたのだけれど、なんでだろう。
「実際に力を使っているところを見なければ納得がいかないものなんだよ」
アロイスさんがそう言って苦笑した。
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