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薮を突いたら



こっそりではあるけれど、護衛が付いている身なのでとりあえず動かないままでいる。何なのかなぁ、と首を傾げると、小さく女性のような笑い声が聞こえた。

問題なさそう、ともう一度本に目を向けようとした瞬間、「きゃっ」という声が聞こえる。何?どういうこと?


扉が開く音がして、入り口に目を向けるとジェリーが嬉しそうに手を振った。

それと同時になんか荒い息遣いが聞こえる。くぐもった声は低く、男性のもののようだ。

ジェリーの笑顔が固まった。


ジェリーは合図をして護衛の方を動かすと、アロイスさんに「荷物、頼めるか?」と尋ねる。片付けくらいできるしとまとめていると椅子が動いた。目の前に陣取ったジェリーは私の耳に手を当てて、にっこり…これ怒っている時の笑顔じゃない?


それからしばらくして耳から手が離れる。



「どうかしましたか?」


「いや、人間の学校に獣が混ざっていただけさ。君の耳に何も届いてなければ良いんだけど」



いや、多分あれ人間でした…と口に出す前に考え、その結果が弾き出されると同時に嘘でしょ、という感想が脳内を占めた。



「え。まさか、私が薬草を育てていると周知して頂いているこのエリアで……?」


「君がいるからこそ、一応監視用の魔道具が設置されているけれど、学園に訴え出るかい?」



瞳が言葉にせずとも「それとも消す?」と問いかけている気がした。

いや消さなくても良いんだけど、他人があれこれした何かが付着しているかもしれない薬草を触りたいとは思えなくって苦笑する。

……魔道具でわかるというのなら、何かかかってるところだけ刈り取ってしまおうと思う。欲しい人がいたら持っていってもらってもいいけど、私はちょっと遠慮したい。


たしかに現段階では辺境伯家の研究となっています。でもこれ、一応王様からもそれなりに期待されている実験なのですが。お金も出してくれてる。

だって、聖女が生まれるかどうか、なんていう偶然と奇跡に頼った政治とか普通に怖いじゃありませんか。だから防衛手段は多い方が良いって言われているみたい。



「近寄る人が少ないから、逢引に使われたんだろうな」



それもあってか、アロイスさんの言葉にも棘を感じる。

彼が真面目であることもあってか眉を顰めている。どうも受け入れづらかったらしい。



「聖女の温室……しかも薬草の生育区画での狼藉だ。ジュリアス様かメリッサ様に文を送って正式に抗議してもらう方向でいってもいいかもしれない」



義父様やエイリーク義兄様はその辺りには向いていないのだ。なので、問題の受付先はもっぱらその二人か、冒険者関連はフレッド兄さんになっている。

暴力が必要な局面では義父様やエイリーク義兄様を頼って欲しいって言われているのだけれど、暴力が必要な局面とは……?

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