不憫系王子様
私は基本的には貴族の子として学園に通っているのだけれど、何故か元の身分を指して平民という人もいる。意外と上位貴族はそういうことを言わない。私が王国に与えている影響を親からある程度聞いているのだと思う。
「婚約関係もおまえたちを引き裂くのは碌なことにならないと報告したら、陛下が周囲にいらないことをしないように触れを出していた」
「ありがたいことですわ」
ユリウス殿下の言葉に私は頷き、カミラは苦笑した。
彼は最近なぜか私たちのそばにいる。なんか、私たちと連んでいたら突撃が少ないらしい。幼い頃から、きっとあの二人の子であれば愚鈍であろう、と言われ続け、しかも下位の貴族子女に頻繁に突撃されて精神的に疲弊していた彼は「今が人生で一番落ち着いている」と虚な瞳で言った。
「この学年では令嬢としてであればわたくしたちが一番身分が高いですしね」
「上に話を通すくらいならやってやるから本当に頼む。私は兄上たちの邪魔になるくらいなら結婚などせんでいい」
令嬢避けに令嬢を使う王子様ってどうなんだろう。
今までの生活がよっぽどキツかったのかなりふり構ってられない感じが見受けられる。
何故かジェリーに怯えている。というか、私に近寄ってくる異性、大体ジェリーと目があった瞬間に震え出す。
おかしいな。大抵優しく柔和に微笑んでるのに。
「ジェリーにも話は通した。もう本当に今心安らぐ場所がない。何でもいいから助けてほしい」
「切実ですわねぇ」
カミラが「あらあら」とでも言うように頬に手を当てる。
部屋ですら今ではお兄さんのところに避難しているらしい。お陰で今の彼の評判はすこぶる悪い。
成績も学園内でトップクラス、性格はまぁ接している感じで言うと悪くはないし、顔も良い。数々の被害を受けているのに評判は悪くなる。正直かなり可哀想な人だ。
「早く修道院に入りたい」
「昨今、聖職者だって結婚しておりますわ。王家にいた方がまだ安心かもしれません」
カミラの返答に一層顔色を悪くした。
そんなことを言うカミラには婿入り予定の婚約者がいるらしい。不仲らしいけど。
正直、私たちのそばにいる方が婚約者のいる貴族子女を狙っているとかいう噂流されなくて良いと思います。
けれど、お陰で私たちも落ち着いてお勉強できているのも確かだったりする。ユリウス殿下にもお付きの人がいて、ある程度は追い払ってくれるので。
ただ、やっているのは本当にお勉強だ。たまにユリウス殿下は寝ているけれど、基本的には黙々とお勉強をしている。用事がなければジェリーやアロイスさんも参加している。
カミラは自分の婚約者もユリウス殿下くらいお勉強してほしいとぼやいていた。侯爵家に婿入りするんだから普通ちゃんとお勉強するものでは?私の考えはおかしいのかしら。




