入学準備 4
王都までは結構遠かった。国の端の方から中央に向かうのだもの。小さい国ってわけじゃないし、仕方がない。
でも、なんか立ち止まった途端に人助け求められるのは何故でしょう?
私もただの人間なので休養と休息は必要だ。
聖女にそういったものは必要ないって考えてる人、割と下位の貴族や平民に多いのは前の人生でもなんとなく気がついていた。
教会の上の方の人とか、王族なんかは前から“どう使い潰すか”を考えて私を扱っていたのでそこら辺はきっちりしていたと思う。まぁ、力が無くなればすぐに売られそうになったり、そういう関係を迫られたりしたので、所詮それだけの存在だったのだとも思ったけれど。
どうやらその辺りはこちらでもそう違うわけではないらしい。
治癒には魔力が必要で、魔力の回復には体力と時間が必要だ。あと動けるだけの栄養。それらを全て聖女の能力でどうにかできると思ってる人って意外といる。
「とりあえず、メグが手を出すまでもないものは現地の冒険者に依頼しておいた」
「こういうのは金があれば割となんとかなるもんだよな」
手続きを終えたドライさんもそう付け足す。
その対応に不服そうな人たちもいたけど、ジェリーが「ん?」と目を向けると途端に目を逸らした。高ランク冒険者の圧はそれなりに怖いらしい。
「掃討が完了した後、浄化だけかければ良いということでしょうか?」
尋ねると、そればかりは他の人ができないからと不服そうに頷かれた。
「君を危ないところになんて行かせたくはないのだけれど、ごめんね」
「あなたと平穏に過ごすためであれば、なんだって頑張れますわ」
「そこ。2人の世界に入らない」
見つめあっていると、アロイスさんにそんなことを言われてしまった。2人の世界に入ってるつもりは……あ、あんまりないよ?
そんな感じで時々人助けを求められながら学園に向かっていたら、結構余裕をもって出発したのに到着したのは入学式の前日だった。
グリズリー家のタウンハウスに滞在することになっているのでそちらに荷物を運び入れる。
聖女の保護と活動の支援をしていると周知されているため、注目を集めているのはちょっと怖い。注目を集めることは良いことだけではないのだ。目立つとそれなりの悪感情も同時に集めてしまう。
その反面、おかげで調べものがやりやすいのも確かだ。
仕舞い込んだ手紙をそっと開く。
聖女とは一体何なのだろうか。
私たちが時間を巻き戻ったのは何故なのか。
取り留めもなく、そんなことを考えながら窓から星を見上げた。




