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入学準備 1



「学園入学にあたって、マーガレット。君は当家の令嬢、我が妹という扱いになる」



ジュリアス義兄様にそう言われて頷いた。

一応はご令嬢としてのお勉強はさせてもらったけど、何か不備でもあったのかな?

そんなことを考えていると、苦笑していた。



「いや、君には今のところ問題はないはずだよ。保護目的で養子にした女の子にしては、ね。今日の話はジェラルドくんの件だよ」



私より一年早く入学した彼はやっぱり優秀らしく、あちこちから養子にしたいだの娘の婿になどと言われているらしい。当の本人は私以外の女性は今も無理なので逃げ回っているらしい。


そりゃあ、死んだことになっているとはいえ、元は他国の王子様。

それなりの教育は受けてきているはずだし、彼は基本的に真面目なのできっちり学んでそれだけでなく教養だって相応のものを身につけているだろう。それに加えてあの容姿だ。注目されない方がおかしいのかもしれない。



「あの時はまだ早いと思っていたし、実際にまだ早かったと思うのだけどもう5年も気持ちが変わらないまま2人は常にいちゃついているだろう?もういいかなって」



あれから5年経ってる事もあって、婚約を考えてくれたらしい。ついでに、周辺国がきな臭くなっているので余計な茶々入れがないうちに色々済ませる方が得策だと言われた。



「正直、ジェラルドくんと婚約させる選択肢は今でもどうかと思うんだけど、君たちは互いでないと受け付けないだろう?」



ジュリアス義兄様の懸案事項はジェリーのお兄様らしい。要するに、彼がもし返り咲くようなことがあれば、側近として王族に復帰させられるかもしれないということを懸念しているのだ。

ジェリー自身は私といられれば特に貴族だとか平民だとかは気にしないという突き抜けっぷりであるが。

一方で環境がそれを許さない事もあると、いやというほど思い知ってもいる。



「まぁ、聖女とその騎士様という土台もできた事だし、噂を流せばそんなに悪い状況にはならないだろう」


「……そのためのお仕事でしたの?」


「そうだよ、メグ。私は君を使い捨てにするつもりはない。しっかりとした信頼の上で成り立つ雇用関係を形成したいと考えているんだ」



にっこりと微笑むその笑顔は胡散臭い。

けれど、面倒を持ち込んだ身なので困ったように笑みを作ることしか出来なかった。



「マーガレット!制服が届きましたよ!!」



楽しそうに部屋に入ってきたメリッサ義母様に「母上、ノックくらいしてください」とジュリアス義兄様はため息を吐いた。














「旦那様はお優しいですね」


「いやぁ、私は自分でも性格が良くない自覚があるよ?」



メリッサがマーガレットを連れて出ていくと、ジュリアスはメイドにそう言って、マーガレットたちに向けるものとは違う甘やかな笑顔を見せた。

それに照れたように頬を染めるメイドの瞳にもまた熱がこもっている。



「オリヴィアのその姿も久しぶりに見ると愛らしいものだね」


「お上手ですこと」



メイドの格好をした妻に彼はそっと手を伸ばす。それに応えるように近づいた2人の影が重なった。


妻はちゃんと知っている。

思い合う二人をどうにかして一緒にいさせてやりたいと願っていた夫の気持ちを。

そんな夫の優しさにかつてのオリヴィアは救われたのだから。

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