ヴェールで隠して
聖女が各地で活動しているという実績があった方が、変な横槍を防ぐことができるだろうと言われた。
結託されるのが一番面倒なことになるそうだ。だから、ある程度「各地を回っているよ〜」というアピールをしておけば不満も弱まるだろうとのこと。それ以上を求めてくるのであれば、二度とそこには行かなくていいし、何か言われれば報告して欲しいとグリズリー辺境伯家の皆様に言われている。こんなに心を砕いてもらえるなんて、前回の15歳の時とはすごい違いです。
まぁ、前回が酷すぎたらしいことは今をもって考えるとすぐにわかることですけれど。
けれど、すっごく目立っちゃえば冒険者活動が難しくなるし、これ以上縁談をいっぱい持ち込まれるのも嫌だろう、ということで解決策としてヴェールを被って活動することになりました。お面と迷ったらしいのだけど、ヴェールの方がお洗濯もできるしオシャレなの用意してもいいしと女性ウケした。というか、メリッサ義母様がお面を嫌がった。
フレッド兄さんも「こっちの方が聖職者っぽいし、聖女アピールになるんじゃないか」と言っていたのでいいと思います。
用意してもらった仮面、なぜか顔を全て覆うものだけだったので暑かったし息苦しかったので私はこっちの方でよかったなって思います。
「ですが、エイリーク義兄様まで同行して頂いてよかったのですか?」
「ん?まぁ、魔物も周辺国も目立った動きはねぇからな」
ガシガシと短い髪を掻く。領地を出てから、おかしな人たちに絡まれているせいもあってか少しだけ疲れたような声ではあった。
けれどその瞳は警戒を怠ることなく周囲を見渡す。
「教会の派閥によっては、聖女スキル保持者を手に入れればのし上がれる…なーんて甘い考えのアホもいるらしい。もちろんそんなやつばっかじゃねぇけど」
ジークハルトとかそうでもねぇだろ?なんて言われて頷いた。
そういえば道中たまたまお仕事しているところにかち合ってしまったのだけれど、大きな剣を引きずって「ふふ」と笑いながら、
「──次はどれを潰しましょうか?」
なんて悪魔を前に問いかけていた。
弱い悪魔であったらしく、足を丁寧に折り畳み、頭を地面に擦り付けながら「どうか、どうか通常の手段で祓ってください!!」と泣きながら頼んでいた。
やっと問題児的なことを言われていたその意味がわかった瞬間だった。
「それより、そこの後ろで待てくらってるボウズはいつ帰るんだ?」
「私はいつでもどこでもメグと共にあるが」
「そういうの、最近ではストーカーっていうんだよ!?」
アロイスさんはすっかりツッコミ属性を手に入れている。
エイリーク義兄様との鍛錬に釣られて一緒にやってきてしまったドライさんも含めて相変わらず騒がしい一団となってしまっていた。
「見ろ!このヴェール越しからでも滲み出る愛らしさ!!これでは多くの男が彼女に魅了されてしまう!!」
「エイリーク義兄様。これのせいで大凡見えないのにそういうことってあり得るんですか?」
普通に顔が見えないからそんなことはなかなかないと思う、とこのことです。やっぱそうですよね。




