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場所が変われど芽吹くもの




王城の一室で美しい赤髪の少女は微笑んでいた。細められた瞳は金色で、目の前の少年を面白そうに見つめている。


王子妃に、ではなく目の前の年下の少年は王妃にならないかと少女に問うた。

とてもとても、綺麗な笑顔でそう問うて座っていた。



「まぁ、わたくしは第一王子殿下に嫁ぐという事でしょうか?」


「君は兄上が好みなのかい?残念だったね、王太子に内々で決まっているのは私なんだ」



アルマリア王国第三王子、グラディウス・フォン・アルマリアはそう言ってにんまりと悪戯っ子のように笑顔を作った。

グラディウスの言った言葉の意味を考えるように少女…ラトゥーナ・フォン・エヴァンジェリンは思考を巡らせる。


エヴァンジェリン侯爵家の次女である彼女は生まれ持ってジェラルド第二王子の婚約者と目されていた。

彼女はそれを不服に思いながらも王子を愛した。



──「王子」という立場を愛した。



ラトゥーナにとっては王子でなければジェラルドに価値はない。

彼は狂った王子として有名であったという理由もある。特に女に触れられることを酷く嫌悪して泣き叫んだ。初めて対面した際は目の前で嘔吐すらした。


そんな弱い男のくせに正義感だけは強かった。


ラトゥーナは爵位の低い者、平民などを人とは思っていないところがあった。

使用人をただ少し“可愛がった”だけで彼は青い顔をしながら注意をしてくる。気分が悪かった。



(狂人として秘密裏に死を賜ったというのだから、溜飲が下がるというものですけれど)



マーガレットたちの1回目の人生でもこの少女は同じような考えのもと、彼らを追い込み、その結果として二人は思い合うようになっていった。

自分には決して心を開かなかったジェラルドがよりにもよって下賎だと彼女が蔑む階級の少女に恋に落ちた時は、“ささやかな悪戯”をするくらいには気に入らなかった。


ラトゥーナという少女は自分の思い通りにならない何もかもが気に入らない。そういう人間だった。



「どう?ジェラルド兄上が死んだ以上、年齢の合う王族で君が嫁げる人間は私くらいだと思うのだけれど」



国外に出る、という選択肢もあるがラトゥーナの父である侯爵は国内での権力争いに執心している。現状でその手段は取れない以上、女として頂点の立場を得るというのは悪くない事であると感じた。

後ろにいる側仕えも早く返事をしろというような目で彼女を見つめている。



(言いたいことはわかりますけれど、主家の人間に向ける目ではなくってよ。“躾”が必要かしら)



笑顔で頷いて、心の中で側仕えへの躾の内容を考える。

人1人の運命がそれによってどう変わるかなんて少女には関心のない話だ。



そう。力を奪い尽くし、利用した、かつて聖女と呼ばれた少女が断頭台に上がった時でさえ、その頃には関心を無くしていた人間であるのだから。

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