まだ早い
「前とか今回はという以前にマーガレットはまだ10歳だ。嫁にとかはまだ早い」
ジュリアス義兄様が全く笑っているように感じない笑顔でそう言い切った。
それに関しては本当にそう思います。私、10歳。まだ子供。
「ですが、うかうかしていて王族に目をつけられたらと思うと……」
「平民のままであったならまだしも、今の王家に我が家に対して横暴な真似をしようとする馬鹿はいないよ」
なんでも、メリッサ義母様は以前現陛下の甥の婚約者だったらしい。彼は身分の低い性悪の女に誑かされ、大勢の観衆の中で婚約破棄を申し付けた。
当時、辺境伯はワイアット義父様になったばかりで義母の元婚約者殿はそれを掴んでおらず、ワイアット義父様のお父様に嫁がせるつもりで辺境伯に嫁げと命じた。
当時の国王陛下は息子のやらかしに激怒し、同じくやらかしていた第二王子と共に廃嫡したらしい。当時の王は歳が離れていた弟に王位を継がせることにした。それが現在の国王陛下である。
そんな事情もあって少なくともメリッサ義母様が御健在の間は無茶を通せないような契約となっているみたいです。
「そういうわけで、今すぐでなくとも君の努力次第だ」
だから、節度ある付き合いで頼むと言われた瞬間に絶望したような顔になっていた。
いや、中身はなんであれ私たちまだ子供!!節度ある付き合いは普通ですよ!!
「ジェリー、アンタ一体何しようと……」
「不埒なことをしたいわけではないぞ!?だが婚約者でないとできないことはあるだろう?……逢引とか」
それはそうである。貴族令嬢は簡単に男の子と一緒にいたらやばい噂を流されるものだと聞いています。
そうやってドライ様に答えるジェリーは少し頬を赤くしてそっぽを向いた。
それから、何を思い出したのか暗い声で続きを呟く。
「それに、以前の事があるからこそ彼女が遠くに連れていかれないようにしたかった」
ジェリーの後ろでアロイス様が「やめろやめろ。目からハイライトを消すな!!」と怖がっている。気持ちはわかる。
ちなみに彼らも結構な魔力量があるので強制的に鑑定を受けさせられていた。
国立の魔法学園に放り込まれることだけは決まってしまったため、ギルドで定期開催されている勉強会に参加させられている。
そしてジェリーのスキル名が「お婿さん」であったりする。
お嫁さんというか、パートナーのためであればあらゆる技術・能力の成長率が上がるという特殊な成長スキルであるらしい。これもしかして結構破格のものでは?
そんな彼は勉強会のおかげで会う時間が減った、と会う度に隣を陣取ってずっと私の顔を見ている。
「ずっと、君から離れたくないな」
やっぱり笑顔のこの人が好きだなぁ、なんてどこか呑気にそう思った。




