変わった今 2
少し黙り込んでしまったけど、隠しておいても仕方がないので、私はジェリーに自分が現在、保護されている立場とはいえ貴族令嬢になっていることを告げる。
「ということは……、貴族かそれに準じる肩書きを持たねばメグの隣には立てないということか……?」
後ろに“ガーン“という効果音が見えた気がした。
そんな彼をアロイス様とドライ様は可哀想な子を見る目で見ている。
あー…うん。前は期間限定絶対に離れることが決まっている恋だったから多少擁護してくれていたけど、今はそんな扱いなのなんとなくわかる。
「いや、できる。私はやるぞ!」
「本当にやりかねないの怖いからやめろください」
ドライ様が止めるが、どこか諦めた感じも滲ませているので「ああ、やるな」と思っているのかもしれない。
「保護が必要なほどの希少スキルだというのであれば今のジェリーでは無理があるんじゃないか」
「そんなことはない。私は恋人のためなら必要な能力をそれなりの速さで覚えられる」
胸を張る彼に二人は静かに「まだ違うでしょうが」と突っ込んだ。
ふと空を見ると赤くなりはじめている。
そろそろ帰らないと、と呟くと、ジェリーが「送るよ」と慌てて引き留めてくる。
「流石に女性を一人で出歩かせるわけには…」
「いえ……あの。少し離れたところに騎士がいます」
つまりずっと見られているのである。
私が大丈夫だと合図を送っているから踏み込んでこないだけである。
でも、こうなった以上、私の人生やり直しの件も姉さんたちにちゃんと話さないといけないと思う。
考え込んでいる私に、「それでも」と彼は微笑んだ。
「私が、少しでも君の側にいたいんだ」
ダメだろうか?なんて聞かないで欲しい。
だって、私だって離れがたいにきまっているのだから。
「二人の世界に入らないでくださーい」
アロイス様は見事な棒読みでそう言って手を叩いた。おかしいな。そんなに二人の世界を作っていたのかな?
遠くから「お嬢様ー!!」と声が聞こえてくる。流石に時間切れということだろう。
「ジェリー、ではまた」
「絶対に迎えに行く、メグ」
その瞳に宿る熱はかつてと変わらないままだ。
それを、嬉しくも苦しくも思う。
前回彼を不幸にしてしまった私は、また何かを間違えてはいないだろうか?
彼に焦がれながらも、ずっと悩み続ける。




