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変わった今 1


ジェリーは、あの一度目をしっかり覚えていたらしい。

しかも、私よりちょっとだけ長く生きた分人間不信と王国不信を拗らせて気が狂いそうになっていたので、王太子殿下に死んだことにされて国を出てきたとか。



「兄上も今は王太子ではないんだ」



初耳だ、と目を見開いた。

暗殺者とヤバい女に目をつけられていたのとで辟易して遊学すると国を出たらしい。ヤバい女…?あの元婚約者殿並ですか?

それで、逃げる際に弟君が王太子となったらしい。



「失礼ですがでん……」


「それは死人だよ。私のことはただジェリーとあの頃のように」


「か、かしこまりました」



頭がこの事態についていけていない。熱の籠った瞳を向けられているおかげで更に思考能力は落ちている気がする。


あの私視点では唯一まともだった王太子殿下も国を放り出したあたりがもう国の崩壊を予期させる。…意外と弟君はできるかもしれないけれど。



「固くならずとも大丈夫ですよ。ジェリーは本当にこう……正直僕たちよりもよほど旅に馴染んでいるので」



ジェリーの乳兄弟であるはずのアロイス様だって貴族子息だ。その彼も一緒に国を出ている以上、今までのようにいくことばかりでなくて苦労もしたと思う。

けれど、その彼以上に温室育ちのはずのジェリーが馴染んでるってどういうことなの?

首を傾げると、ジェリーは「ああ」と言ってぽんて手を叩いた。



「私は前回、離縁して修道院に向かう際に供も用意されなかったため、自力で辿り着いたからな。おかげで旅には多少、慣れている」



王族を一人で放り出すってどんな家に婿入りさせられたんですか!?



「ジェリーの妄言もここまで来ると怖いな」



未来で剣聖にもなれると噂されたドライ様が呟く。

二人共に一応事情は伝えているものの半信半疑のようだ。



「あ…もしや、あんな目にあった原因の私が君に近づくのは恐怖だろうか?」


「いえ、嬉しいです」



難しいことばかり起こっているし、難しい話を聞いているので顔を顰めていたらしい。会えたことは嬉しいのだと口に出すとジェリーはホッとしたように微笑んだ。



「よかった。君を守りきれなかった私なんて嫌われているかもしれないと思ったから」


「私は、自分の判断であそこに立ちました。そのこと自体に後悔はありません。あるとすれば……あなたがその後の人生でも、決して穏やかに生きることができなかった。そのことだけです」



私さえ居なくなれば、というのは甘えだったのだ。そう、わずかでも二人で生き残る可能性があるとすれば、私たちはそれこそ駆け落ちでもすべきだったのかもしれない。



「今はすでに人生が変わっている。この手はもう離さないと誓おう。

──だから、今度こそは共に生きてほしい。マーガレット」



今の私ってば養子とはいえ貴族令嬢だから現段階では難しいんだよなぁ。

えっと……どうしよう。

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