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祈りを捧げる場所



教会というものを厭う、というよりは恐怖が先に立って今回ではなかなか近づくことはなかった。

けれど、ララ姉さんに連れられて足を踏み入れた。


故郷やアルマリア王国王都の教会というものには良い記憶がなかったが、この地の教会はそこまでおかしくもないらしい。


平民だというシスターも笑いながら孤児の世話をしていたし、仕事は貴賤問わず均等に割り振られている。

定期的に監査が入るらしく、その領土によって多少異なれどもしっかりと運営されていると後ろからついてきているワイアット様の部下の方が説明してくださった。

ヘンリーと名乗ったその方もまた、平民出身なのだとか。もしかして初めからこの国に生まれていたらあんな目に合わなかった?



「まぁ、中央で争っている方の一部は話が変わってきますけどね」



どこの国にも権力争いはあるらしい。

そして、そういう方々が発狂しながら近づいてくるのを防止するための養子縁組だそう。…権力を手にするために手段を選ばない人間がいるのはわかる。学園に通わされていた頃によく見ましたし、だからこそきっと私たちは陥れられた。向こうには期間限定の恋愛だとか、関係ありませんしね。



「組織が大きくなれば、それだけ確執も増えていく。仕方のないことです」



ヘンリーさんがそう言って苦笑する。

人が集まればある程度諍いも起きるものだ。


フレッド兄さんは結局、私をこのグリズリー辺境伯家の養女とすることに同意した。

そして、ララ姉さんと子供たちをここで預かってもらうことにもなった。

フレッド兄さんは単独でアルマ村へと戻った。ギルドの長なので、仕方がないのですって。最低でも、冒険者ギルドの総本部から新しい方が来るまでは離れられないし、そもそも辞めるつもりがない。



「田舎とはいえ、地方ギルドの責任者だからな。簡単に放り出す事なんてできない」



ギルドマスターであることは権力もそれなりにある。相当頭のおかしい人間でない限り、その家族を狙うなんてできないだろう。

その条件の一つがAランク以上の冒険者ランクをもつことであるから尚更。少なくとも、フレッド兄さんはそれ以上のランクの冒険者である。自由を尊ぶ冒険者だからこそ、ある程度の礼をつくさねばならない。国外に出ちゃったら損失だからね。


それに調子に乗ってしまう方もいるみたいですが。


思考が大きく逸れたのを、壮麗な女神像が現実に引き戻す。ただの石像であるはずなのに思わず祈りたくなる気持ちが溢れる。



「この領地で発掘された遺跡より発見された女神像です。物語のドラゴンの姫君を模しているとも、この世界を作った神を模しているとも言われております」



正確に伝わっているとは言い難いが、祈る場所にふさわしい像だと思う。

自然に指を組んで、目を閉じて祈る。

やり直しをさせてくれてありがとうございます、と。



(これできっと、あの人を破滅に導くことはない)



どこか晴れやかな気持ちで瞳を開いた。

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