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タヌキと俺と、時々坊主  作者: 黒辺あゆみ
4話 夏に涼し

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3 お盆の準備

お盆の期間は旧暦七月十五日を中心にした前後の期間であるらしく、祖父母の地域では八月十三日から十五日の三日で色々なことを行う。

 なんでも一日目は先祖が帰ってくる日、二日目は滞在日、三日目は午後になるとあの世に戻るということらしい。

 正直な話、郁也の両親は「お盆は夏休み」という認識だったため、郁也自身もお盆休みで里帰りなんてしたことはなかった。

 両親が別居していた頃にだって、この時期は両親それぞれでどこかへ旅行へ行っていたはずだ。

 そして郁也は一人マンションでいつも通りの日常を過ごしていた。

 だから今回がお盆初体験であるし、八月に入ってすぐに墓掃除をするなど、こんな早くからお盆の準備が始まっているなんてことだって初めて知った。


「郁也ちゃんがいると、墓掃除が楽だねぇ」


「んだなぁ、年々水の入ったバケツを運ぶのがしんどくてなぁ」


墓掃除をしながら祖父母がそう言ってくれるのが、郁也は嬉しく思う半分、これまで全くこうした過ごし方を考えたこともなかったことに、申し訳なくも思う。

 そんなことを墓掃除の様子を見にきた清水にこっそりと漏らすと、清水はニコリと笑った。


「よかったじゃないですか、祖父母孝行、ご先祖孝行をするのが間に合って」


そう話す清水曰く、祖父母が死んでしまった後で墓守の大変さを知って、これまで押し付けていたことを悔いる家族も、たまにいるのだという。


「そもそも橘くんは、自分で選んで里帰りしなかったわけではないのですし。

 不義理をしたと思うのなら、その分これからやればいいのですよ」


そんなことを説く清水は、お寺の仕事をするからか、お坊さんの格好をしているのでいつもりよりもありがたい存在である気になる。


「……そんなものですか?」


「そんなものです」


そして自信たっぷりに頷かれると、なんとなく安心してしまうのがお坊さんマジックである。

 ところで、ポン助は墓掃除の間、何故か忙しなくピリピリしていた。

 忙しないと言っても脳内のことなのだが、ずっとなにかを気にしている風なのだ。


(どうした?)


《むぅ~、なんか見られている気がするぅ?》


(やめろ、そういう話はパス!)


ポン助だってビビりのくせに、自分からオカルト話を呼び込んでどうするのか?

 郁也もそうしたことへの耐性は、肝試しまでとっておきたいのだ。

 そんなこんながあった後。

 墓掃除が終われば、自宅の仏壇を飾る作業が待っている。

 七日に仏壇を飾ってキュウリやナスで馬を作るのだという。

 納戸から提灯を出したり、飾り棚を設置したりをするのだが、その中でも郁也はナスで馬を作った。

 けれど家で採れるナスが大きい品種だったため、かなり立派な馬ができてしまった。

 むしろ馬ではない別の生き物に見えてくる。

 けれどこの安定感だと、きっと先祖も安心して帰って来れることだろう。

 しかし季節が夏場でナスが痛みやすいため、郁也は毎日このナス馬を作り変えていたりする。


≪ナスって、なんか苦くて昔っからキライ~≫


ポン助が郁也の工作しているナス馬(?)を見てそんなことをボヤく。


(それは、生で齧るからじゃないか? 俺はナス、好きだけど)


そう言う郁也とて、ナスをまともに食べたのはこの家に来てからなのだが。

 なにせこれまでは自力で食事を調達するため、面倒臭さから一日のメニューは食パンと弁当という食生活だったので、野菜を積極的に食べるということをしたことがないのだ。

 面倒を見ないが、生活費だけは多すぎるくらいに与える両親だったのである。

 子供は金さえ与えておけば育つと考えている節があった気もするけれども。

 そんな郁也だが今では特に、祖母が作ってくれるナスのステーキが好きだ。


こうして準備万端で、とうとうお盆当日がやってきた。

 そう、いよいよ肝試しである。

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