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タヌキと俺と、時々坊主  作者: 黒辺あゆみ
2話 ひとちがい

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17 ご対面

「人に聞かれたくない話って、なんか怖いんですけど?」


「いやね、大したことではないんですよ。

 ちょっとしたことです、ちょうど君たち二人が具合が良かったので」


男子と清水がそんな会話をしながら近づいてきたのに気付いたらしく、女子二人がピタリと黙った。


「ちょっと、なんで私まで?

 彼一人でいいじゃない!」


「まあまあ、頼りにされたんだからいいじゃないか。

 内申が良くなるかもよ?」


さらには文句を言う女子を、男子が取りなすように宥める声も聞こえる。


「え……?」


その声を聞いて、ケンカ相手の方が驚いている。

 それはそうだろう、今まで喧嘩をしていた片方の声と、全くソックリなのだから。

 当の本人は気付いていないようなのは、仕方のないことかもしれない。

 自分の声が他人にどう聞こえているかというのは、自分の声を録音して聞くような趣味を持っていないと、案外わからないものだろう。

 やがて、渡り廊下へ繋がっている出入り口から、清水が二人の生徒を連れて現れた。

 その後ろを、ひっそりと崎山がついて来ている。

 清水が目的の女子の腕を掴んでいるため、彼女は大人しくここまでついて来ることになったらしい。

 強引に脱走することもできたのだろうが、そうするほどの危機感がなかったと見える。


(なるほど、警戒心が足りないってのは本当だな)


≪デショ?

 のこのこついて来ちゃって、あの坊主のことも気付いていないんじゃないのぉ?

 おバカぁ~≫


郁也とポン助が脳内で会話をしている内に、二人の「彼女」が顔を合わせる。


「なに、これ……」


「どういうこと?」


顔かたちや背丈、髪型までソックリな「彼女」を見て、ケンカをしていた女子二人はあっけにとられていた。

 一方で、あちらの「彼女」も驚いたようだ。


「嵌めやがったな!?」


「彼女」は怒り顔になってそう叫ぶと、清水の腕を振り解いてその場から駆け出そうとするのだが。


「おっとぉ、どこに行くのカナ♪」


逃げようとした「彼女」の前に、彼らの後ろにいた崎山が立ちふさがる。

 どうするかと一瞬迷ったような「彼女」に向けて、清水が大きく腕を振る。


「ギャン!」


すると彼女が獣のような悲鳴を上げた。


「やれやれ、なんの得にもならないというのに」


清水はそう零して、彼女に絡みついた数珠をギュッと引っぱる。

 するとまるで粘土がぐにゃりと潰れていくように、「彼女」の輪郭が次第にぼやけていく。


「な、な……」


「なにこれ!」


「ちょっ、怖い!」


女子二人と隣にいた男子はパニックだ。

 同様に、郁也もパニクっていたりする。気味が悪くて吐きそうなのを、なんとか堪えるので精一杯であった。

 そんな中、清水は冷静に告げる。


「嵌めるもなにも、そちらがいつまでものんびり遊んでいるのが悪いんですよ。

 ちょっとからかって逃げればいいものを」


清水が腕を動かすたびに、数珠がギチギチに絡みつく。

 郁也はあの数珠の痛みを思い出し、さらに顔色を悪くする。


「ちくしょう、ちくしょう!

 美味い場所だったのに!」


悲鳴交じりに叫んだソレは、やがて黒い霧になり、風に流されるようにサアッと消えてしまう。


「ハイ終了」


「え~? なんかつまんない終わり方ぁ!

 もっと派手なのが見れると思ったぁ!」


自由になった数珠を腕の一振りで仕舞った清水を、崎山が詰る。


「ひ、ひ……!」


「あわわわ」


そんな二人と対照的に、自分そっくりな誰かが気味の悪い感じで消えてしまった女子はショックからか、しゃっくりが止まらなくなり、ソレにまとわりつかれていた男子は腰を抜かしている。

 もう一人の女子は、驚き過ぎて声にならないようだ。

 ところで、これを一体どうやって収集するのか?

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