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エッセイ

なろう読者のボーダーライン――あなたは異世界になぜか存在する地球のあれやこれやをどこまで許容できますか?

作者: ウツロ

 小説家になろうで一大勢力をほこるハイファンタジー。これらは異世界だが、物質的にも文化的にも存在しえない内容がえがかれていることもおおい。

 しかし、とてつもない人気である。ポイントなど天井知らずである。

 なぜであろう。なろう読者がどこに違和感をおぼえ、どこまで許容できるかがわからない。

 ならば、自作品の宣伝もかねて考えていきたいと思ったしだいである。


 現在『追放された召喚術士、しかたがないので農業をはじめる』という現地主人公のハイファンタジー作品を執筆している。

 いわゆるざまあといったカテゴリーに属すものだ。流行に全のっかりした感じである。


 わたしはこれまで世界観やオリジナリティーに気をつかって書いてきた……つもりだ。

 しかし、いまひとつブックマークがのびない、評価がつかない、というかそもそも閲覧数が少なすぎるなどの理由で手をのばしたのである。

 

 ぶっちゃけ世界観はなんちゃって中世ヨーロッパという非常にふんわりしたもので、文章表現もけっこう崩している。

 とくに作品にでてくる単語、これらはかなりテキトーだ。

 ふつうに考えたら違和感しかない。

 しかし、あえてムシして書いている。書いちゃっている。


 まず一話。いきなりジャガイモがでてくる。

 異世界にジャガイモ? 違和感しかない。

 しかし、読者は気にならないようである。とくに指摘もなければブクマもボチボチついている。


 まあ、第一話なので速攻ブラウザバックされている可能性もあるが、ジャガイモが気に入らなかったのか、作品そのものだったのか判断しようがないので許されたと考える。


 なぜ、ジャガイモはいいのだろうか?

 異世界なのだから地球の作物が存在するのはおかしいのではないか?


 しかし、これらはこう解釈できる。

 異世界にはジャガイモそっくりの作物があり、日本語に翻訳すればジャガイモになるのだろうと。

 現地でくりひろげられる会話もそうだろう。なんで日本語でしゃべっとんねんつー話だ。

 それらは日本語に翻訳してお届けしているからだ。なろう規約にもしっかり書いてある。

 日本語で書けと。それ以外は認めんぞと。

 その姿勢は感想欄にもでている。アルファベットやカタカナのみで表記するのは認められていないのだ。

 良い点にしこたま長文で書き、さいごシンプルに一言の部分に「ナイス!」とか書くと、はじかれる。ナメんな。


 つぎ。方言。

「なんでやねん」とか「んなワケあるかい!」とかふつうにつかっている。

 これもいまのところおとがめなしである。

 これが原因でブクマがはげているようなきざしはない。

 許されたのだろう。

 やはり異世界にも地域によってなまりがあり、日本語に翻訳すれば関西弁となったのだ。


 つぎ。

「サル」「ゴリラ」

 地球に生息する動物たちである。

 モンスターがわんさかいる世界で、おサルさんたちがワンパクに活動している。

 違和感しかない。

 しかし、いまのところこれもおとがめなしである。


 なぜだろうか?

 理由は簡単。騎士のそんざいだ。

 なろうには騎士といった単語がひじょうによくでてくる。

 騎士がいるなら馬もいるだろう。サルやゴリラでガタガタぬかすなつー理論なのだ。

 さすがである。ビバなろうファンタジー。

 お馬さんパカパカがセーフなら、サルやゴリラがバナナ食ってウホウホ言っててもセーフなのだ。表現の幅が広がる。つくり手にとってやさしい世界といえるだろう。


 つぎ。冒険者ギルドの雇用形態。

 ここで物言いがついた。

 ちょっとおかしくない? って指摘である。

 独自の解釈をいれてしまったのだ。これがいけなかったようだ。

 感想だったが、返信後すぐに消してしまわれたようで詳細は確認できない。たしか現実に考えてありえない雇用形態であるとの内容だったように思う。


 これにはどう返信するか悩んだ。

 というのも前述のようにサルやジャガイモの指摘なら「そのとおりですね」と書けたからだ。

 しかし、指摘の内容が現代日本の価値観にねざしたもののように感じたのだ。

 なんちゃってとはいえ、いちおう中世。

 職業選択の自由もなければ基本的人権の尊重もない。

 ちからによっておかしいがまかりとおる世界なのである。

 そのとおりですねと言えない案件だった。


 なろうファンタジーはいびつな世界だ。

 買い物をしても釣り銭をちょろまかされない。銀行もないのに小銭がでてくる。

 冒険者ギルドなど最たるものだろう。

 一流ホテルのようなクソ丁寧な受付スタッフがいたりする。

 地球の発展途上国を考えればいかにありえないかがわかる。2021年でもそんなサービスはうけられない。

 紛争地域以下と考えたほうがシックリくる。


 しかし、なろうでは冒険者ギルドはどこも似たり寄ったりの施設である。

 ギルドはギルドとしてありつづける。

 であるならば、現代日本の価値観が適応されるのかもしれない。

 このあたりが読者のボーダーラインになってくるのだろうか?


 しかし、その後、他者からの指摘もなかった。

 極端にブクマが減ったりもしなかった。

 おおくの読者にとって問題ない内容だったのだろうか?


 ならば、もうちょっといけそうな気がした。


 そして最新話。

『九十七話 しりとり』『九十八話 負けず嫌いのルディー』。

 つづきだったので二時間あけて二話更新したが、ついにきた。

 みるみるうちにブクマがはげたのだ。


 攻めすぎたようだ。AGAなら第2ステージである。

 いや、しらんけど。


 まあランキング作品などと比べればチンケな数のブクマだが、これまでにない動きだったのでよくわかった。

 なろう読者のボーダーがこのへんなのだろう。


 まず題名でわかると思うが「しりとり」。

 ここからすでに暗雲がたちこめている。


 いまさら説明するまでもないが、しりとりは最後のことばにつぎのことばをつなげるゲームである。「ん」がついたら負け。いわゆる日本語ぜんていのあそびだ。

 厳密にいえば外国語にもしりとりのような言葉遊びがあるようだが、さすがに異世界主人公がつかうには違和感がありすぎるように思う。


 あとはおなじ九十七話でつかった「プライスレス」。

 お金にはかえられない価値という意味だ。

 これもなかなか微妙である。

 わたしならアウトだ。つーかジャガイモの時点でアウトなのだが、ここは小説家になろう。

 わたしがどう思うかではなく、読者の大多数がどう思うかが重要なのだ。


 そもそも「ステータス」「タンク」「オーバーキル」

 これらはよく目にする表現だが、うけいれられているように思う。ならばプライスレスもいいのではないか。

 しかし、わたしのような木っ端がわめいても、湖面にはさざなみひとつたたないのだ。


 あと考えられるのはこの文章だろうか。

『わが社はアットホームな職場をめざしているのだ。そうぜつブラックな冒険者稼業とは一線を画すのだ。』

 おなじく九十七話でだした表現である。


「アットホーム」「社」「ブラック」など中世感ぶちこわしである。

 さすがに許容範囲を超えたのかもしれない。


 あとは「ロリコン」。

 これもだしてみた。

 この言葉、みてわかるように「ん」がついている。

 これでしりとりは決着をむかえるのだが、やっぱり世界観にはそぐわないように思う。


 あとは……


 もういいだろうか。

 さすがに多すぎてどれがしゃくにさわったのか判別不可である。

 合わせ技一本なのかもしれない。

 このエッセイを読んだ方、それぞれの判断にゆだねてみようと思う。

 


 さいごに。

 しっかりとした世界観を構築した作品は文章が重い傾向にある。

 タイトルもシンプルだ。

 もし世界観にこだわるならそういった中から読むことをおすすめする。


 わたしの作品なら『殺人鬼アダムと狂人都市』だ。

 アメリカンでスチームパンクな世界観。バイオショックに似たといえばわかるひともいるだろうか。


 しかし、悲しいかなほとんど読まれていない。

 面白いのか、面白くないのか判別不可能なほどだ。

 もっと読まれて感想などがつけばいいと願わずにはいられない。




 ちなみに、あまりポイントがついていない、すでに完結している作品に辛辣な言葉を投げかけるのは死体蹴りである。

 わたしには関係ないが、いちおう明記しておこうと思う。


 いちおうね。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 初めまして。ネオ・ブリザードです。 エッセイ、とても興味深く拝読させて頂きました。 猿やゴリラがスルーされやすいのは、かの竜を探して討伐することで有名なゲームや、街外れの洞窟にどんどんも…
[良い点] 文化風俗など世界観のしっかり作り込まれた世界であきらかにその世界の常識にそぐわないものや、技術水準的にオーパーツなものが、なんの説明も無く唐突に出てきたら気になりますが、ナーロッパには深く…
[一言] 返信ありがとうございます。 >マヨネーズとかどうなんでしょう? そうですね出てくるのは確かに気になりません。 序盤の国の説明で”魔物が出るので城塞都市でしか生活できず、牧畜は行われていない…
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