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Aランクパーティを離脱した俺は、元教え子たちと迷宮深部を目指す。  作者: 右薙 光介
第二部

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第26話 挑戦者たちと先輩冒険者の勘

本日更新です('ω')!

月曜日は祝日で日曜日と勘違いしていました……えぇ、更新が遅れてすみません。

「──以上が、合同国選依頼(ミッション)の概要となる。質問はあるかね?」


 ベディボア侯爵が大会議室をくるりと見回す。

 ドゥナ冒険者ギルドの大会議室。ここには四つのパーティの各代表と、マニエラ、ボードマン子爵、そして国選依頼(ミッション)発令者であるベディボア侯爵が一堂に会していた。


「一つええですか?」


 参加パーティの一つである『フルバウンド』のリーダーであるザッカルトが手をあげる。

 『フルバウンド』はドゥナ出身者で構成される土着のパーティで、ドゥナ代表と言えば彼ら、というほど有名なBランクパーティだ。

 今回の国選依頼(ミッション)に際して、Aランクに昇格したと聞いている。


「何かね?」

「なんでCランクの『クローバー』が攻略続行なんですかね?」


 ザッカルトの険のある視線が俺に向けられる。

 気持ちはわかる。本来のところなら、『グラッド・シィ=イム』への初見調査は彼等が最有力だったのだ。

 そこに俺達『クローバー』が割り込んだ形になっているとは知らなかったが。


「彼らは最難関迷宮である『無色の闇』の調査実績もあるし、今回の『グラッド・シィ=イム』調査でも成果をあげている。ランクについても、国選依頼(ミッション)受諾中はAランクとして扱われることになっておる」


 ベディボア侯爵の視線がちらりとこちらに注がれる。

 仲間に背中を押された俺は、ベディボア侯爵の提案を受け入れて、暫定“勇者”として今回の危機に立ち向かうこととなったが、それについては伏せてもらうことにした。

 現状、それを公表したところで益はない。それは世界の危機に際して現れるもので、まだ危機と認識されていない今、却って混乱を招きかねないからだ。

 特に、ザッカルトのような功名心の高い者にこれを知らせるのは、あまり好ましくないだろう。


「いくら人気配信パーティいうたかて、特別扱いが過ぎるんちゃいますか? 『無色の闇』たって、潜ったのはたったの数階層だけやないですか。そんなん、ワイらでも余裕ってもんですわ」

「それについては異論を挟ませてもらうぞ」


 俺の隣に座る『スコルディア』のリーダー、ルーセントが低い声を威嚇するように発する。


「『フルバウンド』がどれほど迷宮攻略に精通しているかは知らないが、『無色の闇』にそんな心構えで挑めば、すぐさま悲惨なことになるだろう」

「は? わいらがそこの赤魔道士よりも劣っとるって言いたいんか?」

「経験の差は認めるべきだろうな。あの迷宮から全員五体満足で生きて帰ってくるって言うのは、そう言うことだよ」

「もう。そのへんでよしなはれ。あてらは一緒に封印要件を満たしに行く仲間(アライアンス)やろ?」


 俺を間に挟んで一触即発……という空気を緩ませてくれたのは、同じくドゥナ出身者がパーティリーダーを務める『カーマイン』のリーダー、マローナだ。

 女性リーダーというのは珍しいが、話によると構成メンバーも全員女性らしい。

 王国を放浪しながら冒険をしているらしく、Aランクの中でもかなり経験豊富だと聞いた。


「『クローバー』はんは先行調査してるさかい、一日の長があるやろ。あてらはそのぶん楽できるって思たらええやん。こないところで燻らんと、結果は仕事で出しはったらよろしい。せやろ?」

「……はン。言われんでもわかってるわ」


 ザッカルトが苛ついた様子のまま席を立って会議室を出ていく。

 それでも、大貴族の前で殴り合いに発展しなかっただけマシだろう。

 なにせ、冒険者というのは些細なことで殴り合うからな。


「空気を悪くしたようだ。申し訳ない」


 ルーセントが上座に座る三人に向かって頭を下げる。


「いいや。頼りにさせてもらうよ、ルーセント君。『無色の闇』に挑んで戻ってきた者というのはそう多くない」

「精一杯やらせていただきます」


 ベディボア侯爵の言葉に一礼して、ルーセントも会議室を後にする。その後に続くように、マローナも席を立った。

 一人残された俺は、ベディボア侯爵に向き直る。


「さて、ユーク君。いけそうかね?」

「やれるだけのことはしますよ」

「そうかね。朗報を期待するよ、〝勇者〟ユーク・フェルディオ」


 こちらに確認するかのようにその名を言葉にしたベディボア侯爵に会釈して、俺もそそくさと会議室を後にした。


 ◇


「ユーク・フェルディオ」

「ルーセントさん?」


 すっかり気疲れして階段に向かう俺を、ルーセントが呼び止める。

 もしかして待っていてくれたのだろうか。


「今回の件、君が『スコルディア』を推薦してくれたと聞いた。感謝する」

「いいえ。信頼できる腕利きの冒険者を……と尋ねられたら『スコルディア』しか出てこなかっただけですよ」

「そう言ってもらえるのは光栄なことだよ」


 今回、ベディボア侯爵から攻略依頼に関して「誰かいないか」と尋ねられた俺が名をあげたのは、『スコルディア』だった。

 ここにきて、ベンウッドの気持ちが少しわかる。

 実績のあるAランクパーティというのは他にもいるが、この危機的状況にあって誰の名をあげるかと言われたら、やはり人となりに信頼を置ける人物になってしまう。


 その点、『スコルディア』のルーセントという人物には大きな借りがあるし、あの短いやり取りの間に、彼が十分信頼に値する人物だというのは明白だった。

 〝淘汰〟などという得体のしれない危機に立ち向かうのに、『スコルディア』以上の名が思い浮かばなかったというのもある。

 彼らの行動理念は質実剛健を地で行く……言うなれば『旧き良き』冒険者の正当後継者であり、俺なんかよりもずっと英雄気質な人たちだ。

 この奇妙な国選依頼(ミッション)を受けるにあたり、彼等以上の適任が思い浮かばなかった。


記録(ログ)を読ませてもらったよ」

「え、俺達のですか?」

「意外かな?」

「『無色の闇』の時は読んでいないと伺っていたので」


 俺の言葉にルーセントが軽く笑う。


「ああ、それか……。あれは初見調査に挑むつもりでやったんだ。そう、最初の踏破者達のように。我々も黄金世代に引けを取らないと証明するためにね。些か無謀だったのは認めるが、いい経験になったよ」


 冒険者黄金時代はベンウッドやマニエラ、俺の叔父が最前線にいたころを指す言葉だ。

 冒険者ギルドが機能し始めた頃でもあり、冒険者という職業が世間に認知され始めた頃でもあったと聞いている。


「だが今回は、違う。文字通りの初回攻略だ。先行パーティがいるなら記録(ログ)だって確認する」

「役に立つといいんですが」

「読んだことで確信めいたものはあるがね」


 軽く笑って、ルーセントが俺の肩を叩く。


「今回の主役はきっと君たち『クローバー』だろう」

「え」


 “勇者”の事は漏れていないはずだが。


「迷宮と冒険者には縁ってのがある。これは私の直感だが、今回の件はきっと君たちが乗り越えるべきものなのだろう。私たち『スコルディア』はそれをサポートさせてもらうことにするよ──頑張りたまえ」


 肩から手を離して、ルーセントが階段を降りていく。

 その背中を何も言えずに俺は見送った。


いかがでしたでしょうか('ω')

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