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Aランクパーティを離脱した俺は、元教え子たちと迷宮深部を目指す。  作者: 右薙 光介
第二部

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第14話 依頼続行と異変

本日も更新('ω')

「方針が決まった。調査はあんた達で続行してもらうことになったよ」


 帰還から三日目の朝。

 指令所に呼び出された俺は、マニエラからそう告げられた。


「内容はどうなるんです?」

「完全踏破──と、言いたいところだけど、主な依頼内容は『内部ロケーションの調査』ってことになる」


 煙管を燻らせて、マニエラが小さく天井を仰ぎ見る。


「他の冒険者どもを抑えとくのも、いい加減限界だしねぇ」


 俺達の配信により大々的に正式発表された新迷宮……『黄昏の王都グラッド・シィ=イム』は、大きな話題を呼んでいた。

 配信の視聴数は、なんと五万。単純計算すると、タブレットを持つ王国民の約七割が俺達の初回攻略配信を目にしたということになる。

 いまだ、財宝の類がほとんど出土していないにもかかわらず、大きな反響となっているのは理由がある。


 謎多き黄昏の都市にロマンを感じている者も多いだろうが、この迷宮が都市型と判明したためである。

 『オーリアス王城跡迷宮』をはじめとする都市型迷宮は、財宝が見つかりやすい。

 と、いうのも、都市や王城そのものに魔法道具(アーティファクト)や財宝を見つけることができるからだ。

 宝箱(チェスト)の中身によらない大量の財宝が、手つかずのまま立ち並ぶ家々や王城に残されている可能性が高い。


 そして、それらは……見つけた者勝ちである。


 つまり、このまま俺達が調査の名目でこの新迷宮を占有するのは、あまりよくない空気を生み出すだろう。

 ただでさえ、俺達はフィニス所属の冒険者であり、ここではよそ者なのだ。

 ドゥナ所属の冒険者にとって、俺達は新雪を踏み荒らす無法者にしか見えていないに違いない。


「了解しました。明日、早速再突入します」

「頼んだよ。黄昏の王都の空……あれはどうにも、良くないね。充分に気をつけるんだよ」

「はい」


 マニエラにうなずいて席を立つ。

 そこで、俺は小さな居候のことについて思い出した。


「あの子の件、どうですか?」

「ん? ああ、まだ音沙汰ないね。もしかすると、孤児なのかもしれないねぇ」

「そうですか……。引き続きお願いします」

「はいよ」


 結局、あの子に関してもいまだわからずか。

 俺達が迷宮に入っている間は救護院に預かってもらうしかないが、最近は表情も明るくなってきた。

 きっと、大丈夫だろう。


「ああ、そうだ。()()()ももう通しておいたよ。思い切ったマネするね?」

「貴族やら王族相手にまごついた真似できないですからね」

「はン。やっぱあんたはサーガの息子に違いないね」


 口角を上げるマニエラに軽く会釈して指令所を出る。


 慌ただしくなってきたキャンプ地を横切ってコテージへと向かう途中、ふと視線を向けると、キャンプの入り口には別のキャンプ地ができていた。

 開放を待つ冒険者たちだ。

 中には、歩く俺に鋭い視線を投げ掛けるものもいる。


 ……これは確かに急いだほうがいいかも知れないな。





「よし、第二回の調査攻略を開始するぞ」


 予定通り、日が昇ると同時に準備を始めた俺達は、朝食をしっかりとってから地下水路の前に立っていた。


「今回は『グラッド・シィ=イム』のロケーション調査だ。昨日説明した通り、目標は都市規模の確定、生息魔物(モンスター)の調査、それと可能なら、あの城の先行調査だ」

魔物(モンスター)、いるのかな……」


 鎖男を斬った感触を思い出したのか、マリナが少し緊張した面持ちを見せる。


「いないに越したことはないがな……。だが、ロゥゲのこともある。何がいるかわかったもんじゃない。注意深くいこう」

「あ、ユークさん」


 ネネが手を上げる。


「どうした?」

「提案なんすけど、到着したらまずは建物を一つ、制圧したいっす」

「……なるほど。そうしよう」


 ネネの提案はなかなかいい案かもしれない。


 まず、あの並ぶ建物に進入可能かどうかのチェックができる。

 実際、迷宮によっては建物のように見える岩や壁の場合もあるのだ。


 次に、屋根に上れれば都市の規模をはかることができる。

 城の姿を見ることもできるし、レインに頼んで〈望遠の目(テレスコープアイ)〉の魔法を使ってもらえれば、広範囲を確認することも可能なはずだ。


「よし、行こう。配信、開始」


 俺の発した確認に全員が頷く。

 準備も十分にした。あとは、いつも通りに粛々と進むのみだ。


「最短距離を行くっす」

「ああ、頼むよ」


 念の為、ネネに先行警戒に出てもらう。

 鎖男が再出現している可能性もあるし、もしかすると水路自体が変化しているかもしれない。

 『無色の闇』の気配がする以上、警戒はするべきだ……が、その考えは杞憂だったようだ。

 静かな水路はそのまま静謐を保ち、鎖男の姿もない。

 俺達はなんの問題もなく、ごく短時間で上り階段の前に辿り着くことができた。


「いよいよですね」


 階段の上を見上げるシルクが、緊張した様子で俺を見る。

 また、俺がトラウマに呑まれやしないか、心配をかけてしまっているようだ。


「大丈夫、問題ない」


 問題ないが、差し込む黄昏の光が前回よりもやや大きく差し込んでいる気がする。

 もしかすると、黄昏時ではあるが時間経過はあるのかもしれない。

 帰ってから、配信映像を見比べてみよう。


「行こう! わくわくするなぁ」

「あわわ、待ってくださいっす」


 マリナが元気よく階段を上っていき、その隣をネネが駆けていく。


「もう、二人とも! 隊列を乱さないでください!」


 二人のあとを、シルクが追いかける。

 何とも緊張感のないことだ。

 いや、あれで緊張を紛らわせているのかもしれない。


「……さて、ここからが本番だ」

「うん。がんばろ」


 俺の隣を歩くレインが、俺の手を取る。

 黄昏の光に重くなった足取りと気持ちが少しばかり軽くなるのを感じながら、手を引かれるまま階段を一歩一歩上っていく。


「ユークさん!」


 階段の上からネネが警戒した様子で俺を呼ぶ。


「どうした?」

「何か、広場にいるっす! 魔物かどうかはわかんないっすけど」


 レインと顔を見合わせ、俺達は階段を駆け上がった。


いかがでしたでしょうか('ω')


明日以降、しばし更新が止まります。

余暇と書籍化作品の作業のために時間をいただくことになりますので、今週いっぱいはお休みとなります。


【お知らせ】

12/18に『落ちこぼれ☆1魔法使いは今日も無意識にチートを使う』の第七巻が発売されます!

うなぎワールドの真骨頂とも言えますので、Aランク離脱で右薙を知った、という人も是非ご一読いただければと思います!

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