第7話 地下水路と鎖の怪
更新です('ω')
ちょっと尺的に短くなってしまいました。
「なんだか、緊張しますね」
シルクが闇の向こうを見て、体を強張らせる。
「ああ。でも……少し心が浮ついてもいるよ、俺は」
「あたしも! この迷宮、何て名前にしようかな?」
マリナはもう迷宮に名前を付けるつもりでいるらしい。
こういう場面でも無邪気で自然体でいられるのは少しばかり羨ましく思う。
「魔法道具は、あるかな?」
「どうだろう。さすがに良いものは奥まで潜っていかないと見つからないかもしれないな……」
「未発見のがあると、嬉しい、です」
それは確かに。
これまで見つかっていなかった新迷宮ともなれば、未発見の財宝や魔法道具が見つかってもおかしくはない。
それが、世紀の大発見につながる可能性もあるのだ。
例えば、いま俺達が使っている配信用魔法道具の原型もそうして見つかったものなのだ。
「何か面白いものが見つかるといいな」
「うん。ロマンは、大切……!」
いつになくうきうきとした様子のレインが、ご機嫌に笑う。
「……戻ったっす」
そうこうするうちにネネが戻って来た。
こちらも返り血がついてるわけでもなく、足取りも軽い。
「どうだった?」
「魔物も罠も今のところは見つからなかったっす。逆にちょっとヘンっすね」
「ああ。もしかしたら一階層自体がエントランスだったりするのかもしれないな」
ネネの先導で暗闇の中を進みながら、いくつかの可能性を思案していく。
エントランスである可能性はあるだろう。
『無色の闇』も進入してから階段を下りるまではエントランスエリアとなっていて危険がない場所になっているし、他の迷宮にもあるにはある。
ただ、地下水路のようなダンジョンに適したロケーションで、最初のエリアがエントランスエリアになっているのは聞いたことがない。
「……! 待ってくださいっす」
ネネの鋭い囁き声が、俺の思考を中断させる。
その理由はすぐにわかった。
何か金属を引きずるような音と大きめの足音……それが、曲がり角の向こうから聞こえてきている。
しかも、それはかなりゆっくりとした歩調ながら、徐々にこちらへと近づいてきているのだ。
「……得体のしれない奴っす」
曲がり角に身を潜めて、手鏡で先を確認したネネが緊張した顔でこちらを振り向く。
「どんな奴だ?」
「鎖を体に巻き付けた人型っす。大きさはオルクスと同じくらいっすね」
「鎖……?」
必死にこれまで培った経験と知識を総動員させるが、残念ながら該当するような魔物は思い浮かばなかった。
「こっちに向かってきているっす。どうするっすか?」
「話は通じそうか?」
「私見っすけど、無理そうっす」
迷宮内で友好的な魔物に出会うという事は、まれではあるがないことはない。
人間相手に商売を覚え、食糧と引き換えに迷宮での拾得品を売る人狼や、気にいられれば古代の魔法を教えてくれる亡霊がいるダンジョンもある。
しかし、それは例外中の例外だ。
ダンジョンにいる以上、遭遇する人外は全て敵と考えたほうがいい。
人間だって信じられたもんじゃないが。
「仕掛けよう」
「了解っす」
強化魔法をみんなに付与しつつ、いくつかの魔法を準備しておく。
赤魔道士の初手は弱体魔法と決まっているしな。
〈歪光彩の矢〉といきたいところではあるが、あれは負担の大きい魔法だし、件の魔物にどの魔法が有効かも調べておきたい。
「アッ! アアア!」
飛び出そうというその瞬間、ゆっくりと迫っていたそいつが驚きの俊敏性で曲がり角から姿を現した。
一体、何を感知したのかは不明だが、奇襲のタイミングを逸したのは確かだ。
「アッ! アッ!」
興奮した様子のそいつは、地団太を踏むようにして体を震わせる。
本当に奇妙な奴だ。
ずんぐりとした人型をしているが、その体は隙間なく鎖が巻かれており、中身が人間かどうか、まるでわからない。
身体に巻かれた鎖の内いくつかは、床に垂れており、動くためにそれがじゃらじゃらと音をたてている。
それでもって、それは武器でもあるらしい。
「アッー!」
ずんぐりした体からは想像もつかない俊敏な動きでそいつが腕を振り下ろすと、垂れた数条の鎖がフレイルか鞭のように床に叩きつけられる。
正面に立っていたネネはそれをするりと躱したが、あれをもらうとただでは済まないだろう。
「〈麻痺〉、〈鈍遅〉、〈目眩まし〉」
入りが浅い!
少しばかり抵抗が強いな。中身はアンデッドか魔法生物の類だろうか?
作用自体はするが、大きな弱体化とはなっていないようだ。
「出るよッ!」
次の弱体魔法を準備する俺の隣を、黒刀を抜いたマリナが飛び出していく。
振るわれる鎖を避け、斬り落としながら鎖男に向かって距離を詰めるマリナ。
「〈猛毒〉、〈綻び〉、〈重力〉」
「アッー!?」
〈綻び〉の魔法が入った瞬間、鎖男が大きく身をよじった。
そのタイミングで、レインの放った〈衝電〉が鎖男を捉える。
小さな電撃で以て相手を怯ませる魔法ではあるが、これによって作られた隙は、マリナにとって完璧なタイミングだった。
「──殺るッ!」
“魔剣化”を乗せたマリナの黒刀が、一息で三度振るわれ……断たれた鎖が空を舞った。
「ア……アア……──」
鎖の音が止んだその場所には、もはや鎖男の姿はなく……ただ、一塊になった大量の鎖だけが残された。
いかがでしたでしょうか('ω')
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