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Aランクパーティを離脱した俺は、元教え子たちと迷宮深部を目指す。  作者: 右薙 光介
第一部

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第57話 『無色の闇』の性質と攻略開始

本日も更新です('ω')

「マジで来やがったか」


 明朝、冒険者ギルドの地下……大空洞に入った俺達を待っていたのは、ベンウッドとママルさんだった。

 人払いをしたのか、ギルドには誰もいない。

 この状況から見るに、ベンウッドとママルさんは俺達を見逃すつもりのようだ。


「救難配信はまだ続いているわ。でも、配信の内容からかなり危険なことが予想されます。それでも行くの?」

「もちろんです。ここで退いたら、それこそ冒険者として失格だと思っています」


 俺の言葉にママルさんが苦笑する。


「頑固なところはあの人に似てるわね。いってらっしゃい、ユークさん」

「はい……!」


 ママルさんに軽く頭を下げて、ベンウッドに向き直る。


「無理を言ってすまない、ベンウッド」

「仕方ねぇってあきらめたよ。そんかわり、無事で帰って来い。封印作業はそれまで待つ」


 やっぱりか。

 国と管理機関の判断としては、即時封印という決断をギルドに要請したのだろう。


迷宮攻略(ダンジョンワーク)のセオリーを守れ。お前が背負ってんのは、自分だけでもジェミーの奴だけでもねぇんだからな」

「わかっているさ」


 ベンウッドの視線は、俺の後ろに続くマリナ達に向けられている。

 言わんとするところは、俺も理解しているつもりだ。

 優先順位は、しっかりと頭に入っている。


「あと、ジェミーの通信からわかったことだが、階段エリアの崩落もあるらしい。ちゃんと進めたもんじゃないかもしれんぞ」

「ああ、それなんだが……。多分何とかなると思う」

「ん?」


 『無色の闇』で話していたマリナの推測が正しいとして、あの迷宮の性質(カラー)について再度、レインと一緒に整理してみた。

 おそらくだが、『無色の闇』は階段などの共通エリアを起点にして、いくつもある別のエリア──別世界──に跳躍(スキップ)させる迷宮だ。

 そしてそれは、俺達と迷宮の潜在意識によって決定づけられるのではないだろうか。


 最難関ダンジョン、最も深き場所……二十年前にこの迷宮を攻略した面々はそんな緊張感をもって挑んだはず。

 きっと、ベンウッドやママルさんを含め、その全員が「何十階層もあるはずだ」という思いを持っていたに違いない。

 そんな集団の潜在意識に『無色の闇』が応えたとすれば……それこそ、ご丁寧に挑んだ全員が納得する深度になったのではないだろうか。


 特に、前回調査の時も今回の様に迷宮の異常が観測されていた時期だという。

 『無色の闇』が迷宮としての特性が異常として出現していた可能性は高い。


 これをある程度裏付けるものとして、ジェミーが残した配信映像がある。


 サイモンたちは『一層下っただけ』で三階層への階段エリアに到達していた。

 これが示すところ……すなわち、『深淵の扉(アビスゲート)』本来の特性は、〝求める場所に到達する力〟なのではないか、というのが俺とレインが出した結論だ。


 だから、異常を探していた俺達は、最も異常性の高いフロアである『灰色の野』へとたどり着き……それを追っていたサイモンは、すぐさま俺達に追いついた。


 今回はそれを利用して、ジェミーの元へ俺たちを運んでもらう。

 だから、全員にジェミーを探すと意識を強く持ってもらうことにした。

 ……言うまでもなく、全員がそのつもりだったが。


「仮説は仮説だろう。そんな不確かなものに賭けるのか?」


 俺の説明を聞いたベンウッドが首をひねる。

 何人もの仲間を犠牲にして最奥に到達したベンウッドにとっては、納得しがたい話かもしれない。


「ダメならダメで、いつも通りに進行するさ。仲間がいるしな」

「いや、お前さんを信じるよ。なんたってあいつの甥っ子だしな」


 ベンウッドが大きくうなずく。


「おう。気をつけていってこい。大空洞に救護隊を三日間逗留させる。やばいと思ったらすぐに戻れ」

「ああ。ついでに祝杯用の酒とつまみも頼む。……それじゃあみんな、行こうか」


 軽口を叩いてから振り向くと、全員が大きくうなずく。

 その顔は決意とやる気、そして自信に満ちていた。

 少し前まで、どこか頼りなさげで、まだまだ駆け出しだと思っていた彼女たちが、今ではこうも俺を安心させてくれる。

 人の成長ってのは、思いのほか早いものだな。


「隊列は以前通りでいく。ただ、階段エリア進行の際だけは俺が前に出るから注意してくれ」


 この中でジェミーをもっともよく知っているのが俺で、一番後悔しているのも俺で、一番会いたいと思ってるのも多分、俺だ。

 どの段階で『無色の闇』が跳躍(スキップ)を管理しているのかわからないし、個人の意思が反映されるのかすらもわからないが、念を入れておくに越したことはない。


「ネネ。気をつけて行ってきなさい。ユークさんのお役に立つように」

「はいっす!」


 ママルさんの言葉に緊張した様子で頭を下げるネネ。

 契約上、ネネはこの救出についてくる義理はない。

 本来、調査依頼のための一時加入(スポット)であり、すでにそれは達せられているのだ。


 それなのに、ネネは俺達をただ助けてくれるためについてきてくれるという。本当にありがたいことだ。


「嬢ちゃんたちも無理するなよ。ユークはヘンなとこで抜けてるからな」


 マリナ達がベンウッドに苦笑する。


「でも、ユークはあたし達のリーダーだから!」

「足りない部分はわたくし達が補います」

「ユークは、まかせて」


 各々がベンウッドに応えて、俺に向き直る。

 それを合図にして、俺達は『無色の闇』の入口へと向かった。


 迫る真っ暗な入り口に、記憶が掘り起こされる。

 『灰色の野』にサイモンたちの奇襲、そして『サンダーパイク』の全滅。

 これまで、俺達『クローバー』が経験してこなかったことのほとんどが、ここで起こった。

 それでも、折れることなく、恐れることもなく、ここに進んでいけるというのは、きっと俺達がパーティとして一つに成れている証左だろう。


 だから、俺も怖くない。


 このパーティなら……俺たち『クローバー』なら大丈夫だ。

 きっと、ジェミーを助けて、ここに戻ってこれる。


「よし、〝生配信〟スタート。攻略、開始!」


いかがでしたでしょうか('ω')

次回からはダンジョン編です。


「続きが気になる」「面白かった」と思われた方は、下の☆☆☆☆☆を★★★★★に変えて応援していただけると幸いです。

よろしくお願いいたします。

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