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Aランクパーティを離脱した俺は、元教え子たちと迷宮深部を目指す。  作者: 右薙 光介
第一部

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第53話 遺書と希望と

今日も更新間に合いました('ω')

 『ごめんね、ユーク』から始まった手紙は、ジェミーが書いた内容とは信じがたい謝罪と感謝の言葉に満ちていたが、その独特な癖字は彼女が書いたことを示していた。

 俺がいなくなってからのこと、弟の病気の事、サイモンを止められなかったことなどが、何度かに分けて書いたかのように滅裂に書かれていて、それが逆にジェミーらしさを見せている。


「……まるで、遺書のようですね」


 シルクがポツリと漏らす。

 同じ感想だ。どれもが思い出語りの様に過去形で書かれていて、自分が死んだ後に読まれることを意識したものに思える。


 手紙にはいくつかの資料も添えられていた。

 中身は『サンダーパイク』がしていた、いくつかの違法な仕事や取引の内容と、その相手だ。

 リストの中には、かつてマリナ達に付きまとっていた男──ベシオ・サラス──の名前もあった。


「……後悔してたんすね」


 ネネが、目を伏せてこぼす。


「わたしも犯罪者刻印を入れられた人間だからわかるっす。気が付いたら、逃げられない場所にいて、誰かを傷つけて、謝ることもできなくなる。この人の気持ち、少しわかっちゃうっす」

「くそ……ッ」


 ジェミーは、とっくに心を改めていたのだ。

 危険を冒してサイモンたちに随行し、最終的に俺たちを助けてくれた。

 それに疑問を覚えつつも冷静な判断を欠いて、俺は見殺しにしたわけだ。


「ユーク、自分を、責めないで。あの状況じゃ、仕方なかった」

「わかっちゃいるが、自分に納得がいかないんだ。ほんの少し冷静に考えれば、俺はジェミーを救えた。いや、サイモンたちだって、この証拠があれば……ちゃんと罪を償わせることだってできたかもしれない」


 俺達は冒険者だ。

 いつ、どこで、どんな悲惨な死が待っているかわかりはしない。

 オルクスに喰い殺される冒険者だって、それなりにいる。

 だが、あの瞬間、俺が短気で狭量な怒りに飲まれなければ……という後悔が、やはり胸の内に湧き上がる。


「……記録用の魔石も確認してみよう」


 手紙と一緒に入っていたからには、あれもジェミーが託したものだろう。

 中身を確認しなくてはならない。


 全員でリビングに下りると、シルクが俺の前にお茶をだしてくれた。


「ありがとう」

「丸二日、何も口にしていなかったんです。まずは、温かいものをどうぞ」


 お茶にはたっぷりとレモンジャムが入っていて、それをかき混ぜながら腹に収める。

 じわりと広がるお茶の温もりが、先ほどからひきつったままの胃を少しばかりなだめてくれた。


「よし、映してくれ」


 ジェミーの配信を確認するべく、タブレットに魔石を挿して再生する。


『おい、ほんとにやんのかよ』

『もちろん。ユークの奴に思い知らせてやる』

『女どもは?』

『生きていればベシオ氏が欲しいと言っていたな。特にあの小さい魔術師に御執心だ。首輪はあいつにしよう。それにあれはユークの女だ。言う事を聞かせるにはちょうどいい』

『あんなちんちくりんのどこがいいんだかな』


 画面が変わって、別に切り替わる。


『サイモンさん、これをどうぞ。【隠匿の腕輪】……人数分用意するのは骨が折れましたよ』

『その代わり女どもをくれてやるさ』

『ええ。よろしく頼みますよ。他にもダンジョンで有効な魔法道具(アーティファクト)をいくつかご用意しました。あの男の土下座配信を楽しみにしていますからね』


 ベシオ・サラスの顔が映し出されている。

 あの野郎……懲りてなかったのか。


 再び画面が切り替わる。

 今度は『無色の闇』の中のようだ。

 何やら小声で話し合っている。


『……いた。まだ()()()()()()()にいるなんてね』

『どうする、奇襲でぶっ潰すか?』

『そうだね、思い知らせてやるのもいいかもしれない。ユークを起こしたときに、女どもがボロボロの方がドラマティックだろ?』

『バカね。この先の戦力にするんだったら眠らせればいいじゃん。下手に抵抗でもされたら、あんたら殺しちゃうじゃない』


 配信に映るのは疲労困憊でうなだれるマリナ達と気絶した俺。

 奇襲直前の映像だ。

 ネネが気付き、こちらに顔が向いたところでジェミーが魔法を使った。

 今まで攻撃一辺倒で、頼んでもなかなか使ってくれなかった眠りの魔法が、マリナ達に降り注ぐ。

 そこで映像が途切れた。

 おそらく、荷物に忍ばせるために記録用の魔石を解除したのだろう。


「ここでも、助けられたんですね。ジェミーさんに」

「……ああ」


 大きく息を吐きだす。

 かなりきついが、後悔ばかりしてもいられない。


 これらをベンウッド経由で共有してもらい、ベシオ・サラスをはじめとした性質の悪いスポンサーや裏の商人たちを捕縛してもらわなくては。

 それが、これを託してくれたジェミーの遺志を汲むことになるはずだ。


「ベンウッドに会いに行く」

「あー……たぶん、そろそろくるっす」

「ん?」


 ネネの言葉に首を傾げた瞬間、ドアがノックされた。

 ネネが扉を開くと、ベンウッドがのそりと姿を現した。


「おう、起きたな? ユーク」

「ベンウッド、どうして?」

「ネネからネズミで報せがあったんでな」


 そういえば、ネネがネズミに小さな荷物をあずけているのを時々見たが、それか。

 忍者のスキルか、獣人族の力かは知らないが。


「一応、お嬢ちゃんたちから話を聞いたけど、いまいちよくわかんなくてな。配信が切れた後、何がどうなった?」

「階段エリアで『サンダーパイク』に奇襲されたんだ」

「なんだと……!? そもそもあいつら、どうやって『無色の闇』に入ったんだ?」

「違法魔法道具(アーティファクト)の【隠匿の腕輪】を使ったらしい」


 ジェミーの手紙を見せ、配信についても確認してもらう。


「レインを人質に脅迫して、俺にこいつを書かせようとしたんだ」


 最後の証拠となるサイモンの契約書を見せる。

 それを見るベンウッドの顔がゆでだこの様に怒りで赤くなっていく。


「それで……あいつらはどうした?」

「多分、死んだよ。階段エリアが崩落して、下層にいたオルクスの群れに遭遇したんだ。俺達は【退去の巻物スクロールオブイグジット】で戻ることができたが……」

「階段エリアが崩落!? そんな事ってあるのかよ。ああ、しかし、そうか……それで、か」

「何かあるのか?」

「一つ緊急で確認したいことがあってな。昨日からなんだが、お前たちしかいないはずの『無色の闇』から救難配信があがってるって報せがあったんだ」

「……!」


 小型のタブレットを机に出して、ベンウッドが一つの配信を映す。

 画質は悪く、ほとんど見えないし、音声もざらついている。

 だが、そこから漏れる声は、聞き覚えのあるものだった。


『ザー……──だレか、聞……てる? 『無──の、闇』は、かなりやば……状態よ、階層の崩落が始まって──ザザッ』


いかがでしたでしょうか('ω')

「面白かった」「続きが読みたい」って方は是非、下の☆☆☆☆☆を★★★★★に変えて、応援してくださいますと、作者も週末頑張れます。


どうぞ、よろしくお願いいたします。

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