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Aランクパーティを離脱した俺は、元教え子たちと迷宮深部を目指す。  作者: 右薙 光介
第一部

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第49話 脅迫と異変

10/31時点で、第48話部分から修正をかけております。

それ以前に読んでいらっしゃる方は一旦そちらから読み直していただけると幸いです('ω')

説明不足となっていた『灰色の野』についての話を追加しています。

「おい、起きろ」


 耳障りな声と鈍い痛みで、俺は深い眠りの底から無理やりに浮上させられる。

 まだ頭痛と倦怠感はあるが、目に映った状況は俺を眠りから覚まさせるのに十分だった。


「サイモン……どうしてここにいるッ!」

「追いかけてきたからに決まってるだろ?」

「何のつもりだ……!」

「おっと、落ち着けよ? 主導権はこちらにあるんだ」


サイモンがニヤニヤとした顔をしゃくって俺の後方を示す。


「……ッ!」


 そこには拘束されたマリナ達の姿があった。

 気を失っているのか、縛られたまま動く様子はない。


 そのそばには見張っているらしいバリーとカミラが勝ち誇ったような顔で俺を見た。

 ジェミーはいつもと違って静かな様子で、別のところに立っている。


「何をした……!」

「少しばかり眠ってもらっただけだ」


 抵抗する力もほとんど残っていなかっただろうマリナ達を、一方的に奇襲したってのか、こいつは……!


「さて、ちびっこいのの首に巻いてあるものが見えるかな?」

「……?」


 意識のないレインの頭を掴み上げ、俺の方に向けるバリー。

 その細い首には見慣れない真っ黒なチョーカーが巻かれていた。

 残念ながら、これには見覚えがある。


「【隷従の首輪】……? なんでそんなものを!」

「僕たちの親切なスポンサーが貸してくれたんだよ。お前の事を随分恨んでるようだったぞ?」


 魔法道具(アーティファクト)の中には所持すら違法とされる物がいくつかある。

 そのうちの一つがあれだ。本人の意思を無視した行動をさせる魔法道具(アーティファクト)


「僕が命令すればあの女がどうなるか、わかるよな?」

「あんなものを使ってどうするつもりだ。明るみになれば犯罪者だぞ?」

「どっちにしろ、このままじゃ僕らは破滅さ。些細な行き違いで、犯罪者の刻印を入れられて国外追放されるなんて、バカげてる」


 言葉のわりにご機嫌そうなサイモン。


「そこで、お互いに損しないいい提案なんだけどさ……ボク達、仲直りしようじゃないか」

「は?」

「だってユークは僕たち『サンダーパイク』の仲間なんだから、お前が作った『クローバー』だって広い意味じゃ僕たちの仲間だろう?」


 それは人類みな兄弟……みたいな、やたらと広い意味に聞こえるぞ。

 あと、俺を勝手にお前たちの仲間に戻さないでほしい。


「ここに、公式な証書がある。これにサインしてくれるかい?」


 目の前に差し出されたそれには、信じられないような項目がかかれていた。


国選依頼(ミッション)開始時点で『クローバー』は『サンダーパイク』に連合(アライアンス)の要請をしていた〟


〝エルフに対する差別発言は『クローバー』内で日常的に行われており、『サンダーパイク』にもそれに倣うよう指示があった〟


〝これまでのあらゆる損害は『クローバー』および、ユーク・フェルディオによる狂言および扇動によるものであり、『サンダーパイク』に責任はない〟


〝ユーク・フェルディオはこれまでの事を真摯に反省し、『サンダーパイク』に謝罪する〟


〝『サンダーパイク』は『クローバー』を吸収合併し、その上で更生を促すものとする〟


「何だ、これ……!?」


 どれもこれも、到底受け入れられるものではない。

 問題があれば他人のせいにする癖は今までもあったが、ここまでとなるともはや病的だ。


「これから事実になることさ。その上で、()()()()謝罪配信をしよう」


 もはや、こいつが何を言っているのかわからないし、何が狙いかすらもわからない。

 いよいよ切羽詰まって頭の端から端までおかしくなってしまったのだろうか。

 いずれにせよ、『これ以上失うものが無い』と考えてる人間がやらかすことは、過激で容赦がない。


 【隷従の首輪】の呪いじみた効力は強力だ。

 それこそ、自決だって命令できるくらいに。

 ……俺にそれをつけなかったのは、どういうわけかわからないが。


 いや、そうか。

 公式な証書と言っていたな……おそらく、あの用紙は大きな商取引などに使用する魔法の契約書だ。

 操作などの魔法道具(アーティファクト)を使ってサインさせれば効力が失せる。

 脅迫であれ何であれ、俺自身の意志でサインをさせねば意味が無いということだろう。


 あの首輪同様、少しばかり悪知恵の働く奴の指示に違いない。


「さあ、早くしてくれよ? ユーク。なんなら、お前の愛しい小娘に『バリーの上で腰を振れ』って命令でもしてみようか?」

「く……ッ」


 少しばかり世間知らずなバカだと思っていたら、こうも本物の下衆になり下がるとは。


「これにサインしたら仲間を解放しろ」

「おいおい、僕に命令するんじゃないよ」


 サイモンの鉄靴(ソルレット)のつま先が、鳩尾に刺さる。


「が……ッ」


「わきまえろって、いつも言ってただろ? ユーク。お前さ、何を勘違いしてるんだ?」


 倒れ込んだ俺の頭を踏みにじりながら、サイモンが大きなため息をつく。


「お前が勝手に抜けたせいで迷惑がかかってるってのに、毎日毎日、楽しそうにしやがって! ゴミが! クソが! カスが!」


 何度も踏みつけられて、口に血の味が広がる。


「だから、お前から返してもらうんだよ。利子をつけて、全部ね。いいじゃないか。ここまでやってこれたのは僕らのおかげだろ? それなのに、独り占めはよくないな」

「おいおい、サイモン。殺すなよ?」

「手加減はしてるさ。でも、思い知らせてやらないと……そうだ! そこの蛮族をさ、見せしめにしたらどうだろう?」


 まるで名案とばかりに、笑うサイモン。


「ユーク。今からあの小娘に黒エルフの蛮族を殺させるよ。それで、僕の本気がわかってもらえるだろうしね」

「待てよ、サイモン。殺しちまうなら一晩俺に楽しませろよ」


 バリーの手がシルクに伸びる。


「待てッ! ……わかった。サインする」

「手早くしたほうがいい。僕だって本当は友達にひどいことをしたくないんだ」


 ここまでしておいてどの口が言う……!

 サイモンの差し出す契約書を受け取って、俺は奥歯をかみしめた。

 これにサインしたところで、状況が良くなるとは限らないのはわかっている。


 だが、今、この状況を収めるにはそれしかない。

 魔法の契約書は常に本人名義だ。死人のサインは通用しないはずだ。

 何ともならなくなれば、迷宮を脱出したら折を見て、俺が首でも落とせばいいだろう。


 ……レディ・ペルセポネに再会するのは意外と早そうだな。


「……!」


 ペンを紙につけたその瞬間、迷宮が大きく揺れた。


何度となく注意とお願いを申し上げたのですが、感想欄の荒らし行為が横行したため、感想欄を閉じさせていただきます。

作者としては読者様とのやりとりも楽しみの一つでしたが、とても許容できるレベルではなく、閉鎖を決定せざるを得ませんでした。


今後とも楽しんでいただければ…幸いです。

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