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Aランクパーティを離脱した俺は、元教え子たちと迷宮深部を目指す。  作者: 右薙 光介
第一部

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第24話 セカンダリジョブとマリナの心配

今日も更新頑張ります('ω')!

楽しんでいただければ幸いです。

「これ、『天啓の覚書』の一部だよ」

「『天啓の覚書』?」

「隠された能力を発掘するための魔法道具(アーティファクト)だよ。かなり貴重なものだ」


 しかも、状態が結構いい。

 これなら、修復して足りない部分を補填すれば『天啓の覚書』として再生できそうだ。

 少しばかり難しい案件だが、そこは錬金術師たる俺の腕の見せ所ってやつだな。


「どうしてオルクスなんかが、そんなの持ってるのかな?」

宝箱(チェスト)を漁ったか、誰かから奪ったか……そもそも、どこにあったんだ?」

「あの一番大きなオルクスが持ってた袋にくしゃってなって入ってた!」


 オルクスは略奪を好む戦闘種族だ。

 ダンジョンや犠牲者からの戦利品を携行することがままある。

 この『天啓の覚書』の一部もそうして手に入れたものだろう。


「高く売れる?」

「このままじゃ二束三文だな。それに売るのはもったいない……俺が修復するよ。上手くいったら誰かが使えばいい」


 『天啓の覚書』は普通、市場には出回らない。

 手に入れたパーティの中で消費されてしまうのが常だからだ。

 体が資本の冒険者にとって、自分の恒久的な底上げとなる才能の覚醒は、何物にも代えがたい重要性があるため、これを金に換えてしまう者はかなり少ない。


「使うとどうなるんですか?」

「その人間の才能が少し開花するって言われているな。例えば、『二つ目の職能(セカンダリジョブ)』が発現したり、新たなスキルを得たり、急に魔法が浮かんだって例もあるらしいな」


 思うに、これは気づき(インスピレーション)を与える類の魔法道具(アーティファクト)だ。

 今まで気が付かなかった自らの内面を、浮かび上がらせるような……そういうものだろう。


「では、マリナが使うのがよさそうですね」

「うん。ボクも、それがいい、思う」

「ホントに? 『二つ目の職能(セカンダリジョブ)』、目覚めるかなぁ」


 確かに、マリナには『二つ目の職能(セカンダリジョブ)』がない。

 生まれつき一つの事もあるし、目覚めるきっかけが今までなかったのかもしれない。

 俺の場合は、ちょっとした薬の調合ができないかと挑戦したときに、たまたま『錬金術師』が発現したわけだが……。


 そういえば、『サンダーパイク』の面々はみんな『二つ目の職能(セカンダリジョブ)』がなかったな。

 それを気にした風でもないというか、俺が錬金術師に目覚めた時は逆に『自分の職能一本で勝負できない無能』みたいに言われたのは少々傷ついた記憶がある。

 とれる手段が多いというのは冒険者にとって有用だと思うんだけどな。


 ま、考え方は人それぞれか。

 マリナにも押し付けるのはよそう。


「あたしでいいのかな?」

「ま、修復が終わってから考えたらいいさ。個人的には『二つ目の職能(セカンダリジョブ)』が目覚めるかどうかはわからないが」

「うー……確かに。でも『魔剣士』は珍しいから、そこに才能が集約されてるかもって神殿の人に言われた」

「そういう見方もあるか。まあ、『二つ目の職能(セカンダリジョブ)』でなくても何か隠れた才能が見つかるかもしれないぞ?」


 俺の言葉に小さく首を傾けたマリナがピンとした顔をする。


「お嫁さんとか!?」

「それは才能なんだろうか……」


 いささか疑問だが、可能性は無限大だ。


「さ、そろそろ行こうか」


 そう告げながら、端に寄せたオルクスの死体に手製の聖水を撒きかけておく。

 迷宮の魔力でアンデッドにでもなったら面倒だからな。


「階段の踊り場で予定通り休憩にしよう。魔力も全快にしておきたい」

「そう、だね。ボクの魔力も、少し減り気味だし」


 第四階梯魔法である〈火球(ファイアボール)〉を使って息切れしないだけ大したものだと思う。

 ジェミーなど、第三階梯魔法ですら辛そうにしていたのに。


 指を振って〈魔力継続回復(リフレッシュ・マナ)〉をレインに飛ばしつつ、階段に向かう。

 この『アイオーン遺跡迷宮』の階段は途中でちょっとした踊り場を挟んで折り返す形をとっており、『迷宮のルール』に漏れずそこは比較的安全な場所となっている。

 迷宮が溢れ出し(オーバーフロウ)を起こすような不安定な状況であれば、話は別だが。


 踊り場につき、一旦『ゴプロ君』を止める。

 休憩中は配信を止めるとあらかじめ言ってあるし、さすがに気を抜く時間も欲しい。


「損耗確認。俺は魔法の巻物(スクロール)を一つ消費したくらい。魔力は大丈夫だ」

「あたしも大丈夫! 元気!」

「矢は五本消耗です。まだ残り二十本あります」

「ボクは魔力減り気味。休憩中に全快可能」


 大きな消耗はない。

 オルクスはここで遭遇するにはやや強敵だが、おそらく外から入ってきて住み着いたものだろう。

 あいつらは、どこにでも勝手に住み着くからな……。


「あ、そういえば。ユーク、あれから嫌がらせ受けたりしてない?」

「ああ、ベシオ・サラスの件か。ああ、特に問題なく」


 ──ベシオ・サラス。


 マリナ達のパーティに入ろうとうろついていたEランクの冒険者。

 俺に脅しをかけてきた、ちょっと変な奴。


 実はあの後、一度ばかり遭遇したが……予定通りに、ご退場願った。

 『ゴプロ君』を飛ばして現場を押さえたので、今は冒険者としての登録も取り消されているはずだ。

 というか、彼の冒険者信用度(スコア)はたかだかちょっとした脅迫ですら取り消しになるほどに低かった。

 なぜ、あの実力と冒険者信用度(スコア)であそこまで偉そうにできたのか、いまだに謎だ。


「冒険者ギルドに伝えておいたし、処分を下してくれたんだろう」

「確かに、最近見ませんね。あの人」

「せいせい、する」


 レインは特にベシオを嫌っていたからな……。


「それもだけど、『サンダーパイク』もだよ。あの人……ユークの事、睨んでたし」

「ああ。昔からああなんだ、気にするほどの事じゃない」


 あの後、酒の席で盛大に愚痴ったので三人とも事情は知っている。

 まさか、本当につぶれるまで飲まされるとは予想外だったが。


「心配するな、戻る気は一切ない。俺はクローバー(ここ)で夢を目指すよ」

「うん。それは気にしてない。でも、前のパーティから嫌がらせとかってたまに聞くから……そっちの方が心配」


 マリナが眉尻を下げる。


「なに、嫌がらせされたって気にしやしない。今は君たちが居るからな」


 確信をもってそう笑うと、三人がそれぞれ照れたように笑いを返した。


いかがでしたでしょうか('ω')


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