第1話 憩いの我が家と打ち上げ
祝☆アニメ化!
ということで、勢いよく新章をスタートしてまいります('ω')!
これに関して、ご注意と変更点についてアナウンスいたします。
web版を追っていただいている皆様には大変申し訳ないのですが、第五部は【書籍版ストーリー準拠】で進行いたしております。
描きたい物語がどうしても書籍版後の設定でしか書けずでして、この点をご理解いただけますと幸いです。
(web→書籍の大まかな変更設定)
・シルクは故郷に残らず『クローバー』に復帰。
・ニーベルンはある人物のフォローで現世界に復帰。
・ユーク達はweb以上にいっぱいイチャコラした。
……というところだけをさっくり押さえていただければ、あまり違和感なく第五部を読み進んでいただけると思います。
どうぞ、何卒よろしくお願いいたします。
「みんな、お疲れ様。しばらくは休暇だ、しっかり休んでくれ」
俺の言葉に、仲間達が疲れた様子でうなずく。
ヴィルムレン島から帰ってからの俺たちは、忙しかった。
この世界を危機に晒していた『無色の闇』のにおける問題は解決されたとはいえ、やはりアレ――〝淘汰〟たる異界竜による影響は大きかったらしく、王国各地で活発化した迷宮の調査依頼が国選依頼として矢継ぎ早に発注されたのだ。
俺たち『クローバー』だけではない。
他のAランクパーティについても同じくで、いくつかの場所では連合として共に調査に当たったりもした。
これ以上、迷宮災害を発生させないという強い方針の元で依頼されたこれらは、喫緊の国選依頼として要請されており、原因を知る俺たちはあっちこっちへ向かうはめになった。
なにせ、俺たちは〝渡り歩く者〟の感覚を備えており、反転迷宮を始めとした異界の気配に詳しく、影響されにくい。
つまり、場合によっては【深淵の扉】があるかもしれない迷宮へと潜る必要がある今回の依頼と俺たちは、あまりにも使い勝手が良すぎたのだ。
「やっと、お休みだねー」
椅子の上で身体を伸ばしたマリナが、少し弾んだ声をあげる。
タフなマリナにとっても、ここのところの依頼には少し疲れがあったのかもしれない。
リーダーとしてクエスト受注のコントロールをもう少し何とかするべきだったと、反省しているところだ。
「一週間は何もないとママルさんも言ってましたし、少しゆっくりとさせてもらいましょう」
「そうっすねぇ。ようやくって感じっすけど」
シルクの言葉に、ネネが小さくぼやく。
『一つのクエストに対して三日の休息』というパーティルールは守っていたものの、やはり遠征が多くなると気持ちが休まらないところがある。
今回は一週間と言わずに一ヶ月くらい休みが欲しい気持ちだ。
「アンタもちゃんと休むのよ?」
「え」
急に話を振られて、ぎくりと固まる。
見ればジェミーが小さくため息を吐きながら、俺をジトッとした目で見ていた。
「やっぱりね。どうせ、準備だとか申請だとかで休みを埋めるつもりだったわね?」
「リーダーとしてしなくちゃいけないことはしておかないとな。冒険記録の提出もしないといけないし、いくつかたまってる書類仕事もある」
俺の言葉に、仲間達が揃って肩を落としてため息を吐く。
どうも、受け答えをミスったような気がするぞ?
「ユーク。それは、後回し。まずは、これを、調べないと」
「あー……そうだった。これの件もあるんだったな」
俺の手に触れて心配そうな顔をするレインに、苦笑して返す。
ヴィルムレン島の一件で琥珀化してしまった俺の左腕は、いまだに元へは戻っていない。
一応、王立学術院に治療法を探してもらってはいるが、日常生活に支障がないことでおざなりにしてしまっている部分もあるのだが。
「何かわかったらベンウッドに報告書を送ってもらうように頼んであるから、明日にでもとってくるよ」
「では、わたくしもご一緒しますね」
「シルクは休んでてくれていいんだぞ?」
「先生はついでに仕事を受けてきそうなので」
にこやかな中に、確かな圧を感じる。
そんなにも信用がないのだろうか、俺は。
「みんな心配してんのよ。アンタは無茶ばっかりするから」
「そうかな?」
「そうよ? リーダーだからって何でもかんでも背負いこまないの」
俺の鼻先にびしりと指を突きつけて、ジェミーが眉尻をあげる。
どうも俺は、ヴィルムレン島から帰って来てから彼女の尻に敷かれているような気がする。
まあ、遠慮がなくなったというのはいいことだと思う。
元教え子たちと違って、同期だからこその遠慮のなさというのはいろいろと気付かされるところがあるし、ジェミーのそれはいつも優しくて正しかったりするのだ。
「冒険記録はアタシ達で手分けしてやっておくわ。各種報告書と申請もある程度取りまとめておくから、後でさっと目を通しておいて。パーティのことはパーティで分担してやるのが基本でしょ」
「それはそうだけど、みんな疲れてるだろ?」
「アンタも一緒でしょ」
特大のため息を吐くジェミーに、仲間達が小さく噴き出して苦笑する。
「配信動画の魔石記録と、配信用編集はあたしがやるよ!」
「消耗品のチェックと買い出しはウチがやっておくっす」
「書類関連はアタシとレインで手を付けておくわね」
各々ができることをする。
『クローバー』は多くの修羅場を切り抜けて、いいパーティになった。
俺が出しゃばりすぎるのも良くないか。
「わかった。じゃあ、明日の段取りはそれで。でも、無理しないでくれよ?」
「先生、それはこちらのセリフですよ?」
「ん。どうせ、明日できない分を、今夜に、前倒そうとしてる。そんな顔、してる」
シルクとレインの視線に、思わず目を逸らす。
どうしてバレたんだろう。今、ほんの少しいい思い付きだと思っただけなのに。
「アンタね、顔に出てんのよ。わからないとでも思ってんの?」
「ユークってば、わかりやすいよね」
ジェミーの言葉にマリナが笑って頷く。
まさか、能天気なマリナにまで勘付かれていたなんて……!
思ったよりも、俺というのはみんなに心配をかけてしまっていたらしい。
「まいった。降参だ」
「ん。それで、いい。みんなで、やれば、すぐだよ。ユークもちゃんと、休んで」
「そうさせてもらうよ。さて、その前に……夕飯にしよう。久しぶりの我が家だ、腕によりをかけるぞ」
腕まくりする俺に、ジェミーの手刀が直撃する。
結構、強めに。
「話、聞いてた? 今日はもう何もしないって言ってんの!」
「先生は懲りないですね……悪い精霊でも憑いているのでしょうか」
「仕事人間の悪霊かも、しれない。神殿で見てもらったほうが、いいかも」
あんまりじゃないだろうか。
そりゃ、言いたいことはわかるがみんなにできることは何だってしておきたいと思っているだけなのに。
「ダメっすよ、ユークさん。ジェミーさんを怒らせちゃ」
「ユークったら、ちょっと無頓着って言うか、無自覚だよね。ジェミーさんがかわいそう」
「おだまり、二人とも。ほら、行くわよ」
少しむっとした表情をしたジェミーが俺の手を引く。
「どこへ?」
「冒険から帰ったら、打ち上げでしょ?」
少しぶっきらぼうな様子でそう口にするジェミーに少し笑って頷いて返す。
「そうだった。俺たちは冒険者だもんな……! 『踊るアヒル亭』の山盛りポテトフライが恋しい気がしてきた」
賛成の声をあげる仲間達と一緒に、俺たちは帰ってきたばかりの拠点から夜のフィニスへと繰り出すのだった。





