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Aランクパーティを離脱した俺は、元教え子たちと迷宮深部を目指す。  作者: 右薙 光介
第四部

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第17話 不協和音とダークエルフ

「先行したダークエルフの皆さんが、戦闘中っす!」


 木の上から少し焦った表情で下りてきたネネが、鬱蒼とした森の向こうを指さす。

 

「急ごう! 対象は?」

「見たことが無いトカゲ系、大きさは5フィート強くらい、数は六体っす!」

「でかい上に多いな!」


 トカゲというよりもワニと言ったほうがいい大きさだ。

 怪我人が出ないうちに、タイムス達に合流するべきだろう。


「こっちっす!」


 ネネの後を追って、全員で森の中を駆ける。

 とはいえ、慣れない場所な上に足場が劣悪すぎた。


「ぁう」

「レイン!」


 躓いたレインをぎりぎりのところで転倒前に抱え上げ、そのまま抱え上げる。


「大丈夫か?」

「ん。問題ない……けど、ちょっと、恥ずい、かも?」

「少しの間我慢してくれ」


 そう苦笑しつつ、仲間たちに向って〈身体強化フィジカルエンチャント〉をいくつか発動させておく。

 合流直後に乱戦になると思えば、この間に強化しておかなくてはならない。


「見えましたッ!」


 シルクが疾走の勢いを活かして飛び上がり、数本の矢を放つ。

 さすがはホームグラウンドというところか、枝葉が視界を遮るこの状況で、シルクの矢は狙いたがわずに大蜥蜴に命中した。


「レイン、タイムス隊の治癒を。ジェミー、前衛のカバーを頼む!」

「おっけ」

「わかった!」


 レインを地面に降ろしつつ指示を飛ばし、俺は自分の仕事をするべく指を振る。

 少しばかり大きかろうと、蜥蜴は蜥蜴。

 弱体魔法に対する抵抗力はそう強くないはずだ。


「〈鈍遅(スロウ)〉、〈麻痺(パラライズ)〉、〈拘束(ホールド)〉!」


 いくつかの魔法を矢継ぎ早に発動し、今まさにタイムスに食いかかろうとしていた大蜥蜴の動きを止める。

 その瞬間を、『クローバー』の切り込み隊長が見逃すはずもなかった。


「てぇぇッ!」


 気合一閃。

 太い大蜥蜴の胴体が輪切りに裂かれる。


「大丈夫? タロムス、さん?」

「タイムスだ! 余計なことを!」


 マリナを押しのけて、鉈剣のような得物を構えるタイムス。

 大きな傷はなさそうだが、ずいぶんと消耗しているらしく、肩で息をしている。


「一匹落としたっす!」

「アタシも! シルク、どう?」

「問題ありません! 仕留めました!」


 頼もしい報告を聞く間に、残った大蜥蜴がくるりと体を翻す。

 逃げるのであれば、このまま行かせていいだろう。


「状況報告! 俺は損耗なしだ」

「あたしもなし!」

「鉄の矢を三本損耗、問題ありません」

魔力(マナ)損耗軽微。自然補充に任せるから問題なしよ」

「ボクは、少し、損耗。魔力(マナ)


 衛視の一人を治療中のレインに〈魔力継続回復(リフレッシュ・マナ)〉を放って、状況の確認を行う。


「大丈夫か? タイムス」

「お前たちの助けなど必要なかった」

「あなた、この状況でまだそんなことを!」


 シルクが剣呑とした雰囲気で、俺の横に並ぶ。

 その彼女に、タイムスが不満を隠そうとせずに口を開く。


「見慣れない魔物に不意を突かれただけです」

「その結果、仲間が負傷したのでしょう?」

「こいつに油断と訓練の不足があっただけです。次は大丈夫です」


 聞く耳を持たないという態度を強硬にするタイムス。

 ここで冒険者の講釈を垂れるのもどうかと思うが、どうにもこのタイムスという青年は危なっかしい。


「だったら余計に気を付けないとだよ」

「なんだと!?」


 言葉を探している間に、マリナが顔を出した。


「『無色の闇』に近づいてるんだから見慣れない魔物が出るなんて当たり前だもん。いま助かったのって、運が良かっただけだよ?」

「……ッ!」

「そんな風に怒ったってダメ。不意を突かれたってことはもっと警戒しないとだからネネの力も借りなきゃ」


 タイムスの顔どんどん険しくなって、青筋まで浮かび始める。

 まったく。こうなるのがわかっていたから、言葉を探してたのに。

 ああ、でも。ここは安全地帯(セーフティエリア)でもなんでもないのだから、端的に原因を理解してもらうには丁度よかったのかもしれない。


「タイムスさん、マリナの言う通りだ。ここは、協力して周辺を警戒した方がいい。あなた方が知らない魔物が出てきたってことは、溢れ出し(オーバーフロウ)の規模が大きくなってるってことかも知れない」

「よそ者が偉そうに!」


 なおも激昂するタイムスに、シルクが特大のため息を吐いた。


「わかりました。好きになさってください」

「シルク?」


 意外な言葉に、少しばかり驚いてしまう。

 というか、こんな風に冷たい様子のシルクを見ることはあまりないので、ちょっと怖い。


「『琥珀の森氏族』長老が下した決定に不満があるのでしょう?」

「そのようなことは……」

「では、何なのです? 独断で仲間の命を危険に追いやり、氏族の長が認めたわたくしの片葉を嘲り、助言に暴言で返す。あなたは何のためにここにいるんですか?」

「そ、それは……氏族のため、そして安寧のため」


 徐々に小さくなっていくタイムスの声。

 これが生配信中だって事、忘れてるんじゃないだろうな、シルク。


「あなたが氏族を救うのですか? 一人で? 魔物に不意を打たれて尻餅をつくあなたが?」

「……」

「シ、シルク……その辺にしておこう。ままずは日が暮れる前に指定された中継ポイントへ到着しないとな?」


 ちらりと背後に視線をやると、レインがちょうど衛視の治療を終えたところだった。

 それに頷いてから、ネネにハンドサインを送る。


「先行警戒を開始するっす。ルート確認に一人ついて来てくれると嬉しいっす」


 その言葉に、黙ったままのタイムスが頷いて従った。


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