表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Aランクパーティを離脱した俺は、元教え子たちと迷宮深部を目指す。  作者: 右薙 光介
第三部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

137/248

第17話 仲間たちの励ましと、同期の甘やかし

「わたくし達も、それを考えていました」


 会議から『フェルディオ屋敷』に帰って十数分。

 事情を話した俺にそう返したのは、資料を机に広げるシルクだった。


「現状で有効な手段が少なすぎます。それならば、防戦よりも攻勢に出たほうが、いいかもしれません」

「客観的に見ればそうだろうけどさ、行くのは俺達なんだぞ?」

「そうなるでしょうが……その、ルンが気になることを言っていて」


 小さく視線をニーベルンに誘導させるシルク。

 その先には、ちょこんと椅子に座ったニーベルンが静かに座っていた。


「ルンが? なにかあったのか?」

「お兄ちゃん。ルンの話を、信じてくれる?」


 おずおずといった様子で、俺に問いかけるニーベルン。

 いつもよりも緊張した様子に、俺も少しばかり緊張する。


「もちろん。なにかあったのか?」

「このそばにある迷宮の気配がね、変なの」

「変?」

「うん。どういっていいのかわからないんだけど、ええと……重なりがめくれてるというか、玉葱の皮をむくみたいにちょっとずつ実体が増してる」


 独特な表現だ。

 ただ、ニーベルンは異界に在った『黄昏の巫女』でもある。

 迷宮や異界の気配に関して、彼女は独特な察知能力が備わっているのかもしれない。


「それはいいこと? 悪いこと?」

「きっと悪いことが起こると思う」


 俺の質問に、ニーベルンがそう答える。


「ボクが思うに、封印が、ほどけてるんじゃないかと、思う」


 すでに話を聞いてアタリをつけていたらしいレインが、説明を挟む。


「今まで見つからなかった、ってこと自体が少しおかしい、もの。きっと、何重にも封印と、隠匿を仕掛けて、隠してたんだと、思う」

「なるほどな」


 なら、何故今更になって発見された?

 経年劣化か?


 ……いいや、きっかけはおそらく『グラッド・シィ=イム』だ。


 あれが次元間移動した影響によって、少なからずこの世界のバランスは崩れた。

 攻略および崩壊に伴って、それはすんでのところで被害を抑えられたが……『無色の闇』を刺激した結果起きた各地迷宮の活性化は未だに続いている場所がある。


 その一か所が『王廟』であり、そして隠され手入れの入らないこの迷宮はひっそりと内部で圧力を高めていったに違いない。


「みんなの意見が聞きたい。……って、ネネは?」

「周辺の状況確認と配信中継用魔法道具(アーティファクト)の設置に出向いています」

「一人で? 大丈夫なのか?」


 あの娘はまた無茶をしていないだろうか、と心配になる。

 まあ、俺達がいない分だけ身軽に動けるだろうとは思うが。


 だが、重要性も理解できる。

 魔石などを利用して定点設置型の配信用魔法道具(アーティファクト)を使うことができれば、〝大暴走(スタンピード)〟の兆候に併せて行動が可能だ。

 そして、それを利用しようと思えば今、急ぐしかない。


「マリナはどう思う?」

「あたしはいつも通り。ユークについていくよ」


 そうでなくて、自分の考えを持ってほしいのだが。

 それが顔に出てしまったのか、マリナがきゅっと眉を吊り上げる。


「む、あたしのことをちょっとおバカって思ったでしょ!? 違うもん。あたしは、ユークを信頼してる。だから、さ……ええと、ほら」

「マリナはユークさんと最後まで一緒に居たいと言いたいんですよ。もう、変なところで乙女なんですから。でも、それはわたくし達も同じです」


 彼女たちの瞳に宿るのは、覚悟。

 どうやら、侮ってかかっていたのは俺の方だったようだ。

 相変わらず、俺という奴は少しばかり独りよがりが過ぎる。


「だいたいアンタさ、逃げる気さらさらないでしょ?」


 少しの沈黙を破る様に扉から現れたのはジェミーだ。

 その姿は、『サンダーパイク』時代とは違った冒険者装束に身を包んでいて、少し大人っぽいそれは彼女の成長を表わしているようだった。


「どう?」

「よく似合うよ。なんていうか、ジェミーっぽい」

「なによ、それ」


 小さく噴き出すジェミーと、やり取りを聞いて頬を膨らませるレイン。

 『アーシーズ』での一件をまだ根に持たれているようだ。


「防衛戦にはギルドマスターとアタシが残る。少し待てば、Aランクのパーティも複数来てくれるそうよ」

「え、ジェミーさん一緒に来ないの!?」


 俺より先に声をあげたのはマリナだ。


「ついていきたいのは、やまやまだけどさ。アタシじゃちょっと実力不足だし、それに連携が取れない。足を引っ張るくらいならアンタたちの背中と帰る場所を守るわよ。その、アタシだって『クローバー』のメンバー、なんだし?」


 少し照れた様子のジェミーに、俺はほっとする。

 彼女なりに、『クローバー』を受け入れてくれたようだ、と。


「だから、ユーク。アンタはリーダーとしての判断をしなさいよ。アンタ自身はどうしたいの?」

「俺は──」


 ここに来て、迷いがあることに気が付く。

 いや違うな。これは……恐れだ。俺は怯懦に飲まれそうになっている。

 以前、『無色の闇』に挑むべきか否かを迷ったあの日と同じ。


「ユーク。ボクは、ユークがどんな判断をしても、いい」


 いつの間にか震えていたらしい俺の手を取って、レインが笑う。


「最後までユークについていく、よ。ユークは?」

「俺だって同じだ」


 そう答える俺の背後に、柔らかな感触。


「みんなで行けば大丈夫だよ! だってユークは〝勇者〟だし?」


 マリナに抱擁されながら、俺は苦笑する。

 〝勇者〟なんてただの肩書に過ぎないというのに、彼女が言うとなんだかその気にさせられる。


「では、決まりですね。では、必要物品を洗い出します。それとネネが帰ってきたらスケジュールをたてますので、後で手伝ってください」

「ボクは、市に出てくる。マリナ、手伝って」

「うん」


 それぞれが立ち上がり、部屋を出ていく。

 決まったら即行動。我がパーティのメンバーは動きが早い。

 未だに悩みを吹っ切れない俺は、残って小さくため息を吐く。


 そんな俺を、再び背後から抱くジェミー。

 こんな風に触れてくる彼女は初めてで、些か緊張してしまう。


「ジェミー?」

「頼られてるわね?」

「そう、だな。Aランクパーティの雑用サポーターが、今や〝勇者〟でパーティリーダーだ。少しばかり荷が重い」


 少しぎゅっと力を込めて、ジェミーが囁く。


「もうちょっと肩の力抜きなよ。あの娘たちに聞かせられない愚痴なら、アタシが付き合うわよ」

「……助かる。差し当たってはもうしばらくこのままでいてもらっていいだろうか」

「もう。いいわよ。ほら、愚痴っちゃいなさい」


 そう促されるまま、俺はかつて反目していた仲間に情けない愚痴をしばしこぼしたのだった。


いかがでしたでしょうか('ω')

「ジェミー、きた……!」という方は是非下の☆☆☆☆☆を★★★★★にして応援していただけると幸いです。


【お知らせ】

その①

本作にはあまり関係ないのですが、アルファポリス様で連載しております『落ちこぼれ☆1魔法使いは、今日も無意識にチートを使う』のコミックスが発刊されました!

うなぎワールドの原点ともいえる作品ですので、見かけたらお手に取っていただけると嬉しいです!


その②

1週間後の10月1日に本作の第二巻が発売されます!

web版とは少し違うので、お楽しみいただければと思います。


その③

その一週間後、10/8にはコミックス第一巻も発売!

冒険者予備研修時代の『クローバー』を描いた短編を載せていただいております。

コミック版で可愛さを増したヒロインズを是非ご照覧あれ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ