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休日

 これからは、投稿できる日曜日にだけ投稿していきます。毎日投稿では無くなってしまいますが、完結するまで頑張りますので、これからもよろしくお願いします。m(_ _)m


 門まで着くと、シアンと一緒になるべく目立たないうにそーっと周りを見渡した。


 門はまるで大きなお屋敷の玄関みたいになっていて、門の周りは、一般的な建物の倍近くある壁で森と町を隔ててある。


門番は門の端に一人ずつ付いている。

しかし門番の仕事はこれだけにとどまらず、周りの森の生態系の確認、魔物の活動範囲の把握、森に出て薬草や魔物を狩る人の手助け・護衛など多岐に渡る。


運良くガイウスは門の警備についていた。


「シアン、いたよ。ガイウス。カッコいいね。」


スッとガイウスを指差してシアンに目配せするとパァァと笑顔になった。

ガイウスは青い上着に灰色のズボン

(制服かな?)に片手で何か棒みたいなものを肩に当てて担いでいる。


『すごいね!!お仕事はかっこいいんだね!』


「そうだね。」


わぁわぁと騒いで喜ぶシアンをみると連れてきて良かったなと思う。今までシアンに僕が助けられてきた。

そのおかげで随分立ち直れたと思う。

最近はシアンが難しそうな顔をする事が多かったから、こんなことでもシアンが喜ぶなら、また近いうちに来ようかな。


カッコいい! すごい! を繰り返すシアンにうんうんとうなずいていたら、いつのまにか周りには人だかりができていた。


「すごいわ。初めてみた」

「あの子はどうやって契約を結んだのかしら」

「精霊なんていねぇかと思ってた」


等々の声が聞こえて来る。


シアンは気にせず、自由気ままに飛び回る。

恥ずかしい…


そういえばこの町っていうかこの国では精霊って珍しいんだっけ。……失敗した。

あたりを見渡すと2、3歩引いたところから、僕を中心に円ができていた。


後悔しても時すでに遅し。

お忍びできたはずのガイウスの仕事見学は、もはや見せ物状態だった。


まずい。このままだと本人が来かねない。


「坊主?どうしてここに?」


その場を去ろうときた道を戻ろうとしたところ、案の定、ガイウスに見つかってしまった。


 この町の騎士的な役割をしている門番の登場に、周りはバラバラと円を崩しはじめた。

仕事の邪魔をしたい訳ではなかったのに、結果的に邪魔をしてしまった。


ガイウスがオロオロしてるシアンに気づき、ちょいちょいと手招きをする。シアンは?と首を傾げつつガイウスに近づく。


「あの……その仕事の邪魔してごめんなさい。

ガイウスの仕事姿が少しでも見れたらって思ってきたんだ。その、騒ぎを起こすつもりはなくて…

ごめんなさい。」


ガイウスに近づき、頭を下げた。


「え?俺の仕事見にきてくれたの?!

えー言ってよ!そしたらもっとかっこいい所見せれたのにー!」


ガシガシと頭を撫でられ、ガイウスは心底残念そうな声を出した。


『ガイウス カッコ良かったよ!』


ガイウスの肩にいつのまにか着地したシアンはマッチョポーズをして笑って見せた。

 そーお?と言うガイウスの声音には一切怒りが感じられない。

そーっと頭を上げてガイウスを見上げると、

二カッと笑顔で返された。


「……邪魔してない?」


「んー?してないしてない!

むしろ俺のやる気が上がった!!

あと少しだけど、めっちゃ頑張れちゃう」


へへへと笑うガイウスに嘘は見られなかった。

ホッと胸を撫で下ろし、ガイウスと肩でご機嫌に歌を歌うシアンと共に門へ向かった。


*

「局長!もう!……というかなんっすかその顔。

しっかり引き締めてくださいよ!

 あれ?君たちどうしたの?外には許可書がないと立ち入れないんだ。」


門番(右)はガイウスに対して怒ろうとプクーと頬を膨らませたが、それは一瞬で凹み、すごく嫌そうな顔に変わった。

それから僕たちを視界に入れて優しい笑みを浮かべた。


なんていうか、お疲れ様です。


「んあ?あーこいつは俺の息子のココ。んで肩に乗ってるのがココの契約精霊のシアン。


ココ、シアン、こいつはモンデル。門を出る時にこの人に申請するから、モンデルっつーんだ。」


悪戯っ子の様な笑みを浮かべたガイウスにモンデルは慌てた。


「局長!!その冗談いつまで使うつもりっすか!

あぁもうほら!その子達信じちゃってるじゃないですかぁ!そんな目で見つめないでください!

そんな意味全くないですから!冗談っす!」


『かわいそう』

「モンデルさん……」


可哀想なものを見る目で見つめると

「本当に局長の冗談っす!」と涙目で訴えられた。


 しばらくガイウスの様子や、モンデルさんの愚痴を聞いてから、僕たちは先に帰る事にした。


僕が初めて町に来たときのおじさんの店を目指す。

元気かな?


あの時のお礼として、依頼のお礼で貰ったお金で、お守りを買った。商売繁盛のお守りだ。

そこにコハクは、自分の魔力をほんのり込めて、あのお店を守れます様にと願った。


「こんにちは!」

『こんにちはー』


「いらっしゃい!おっ!あん時の!

元気にしてるか?」


変わらずワッハッハと笑うおじさん。

元気そうでよかった。


「今日はあの時のお礼にお守りを買ってきました。」


少し照れつつも青色のお守りをおじさんに渡す。


「おー!ありがとよ!

青色は、商売繁盛だったか!」


満面の笑みで受け取って頭を撫でてくれた。

この町には優しい人ばかりだ。


このお店には植物性の食べ物がたくさん並べてある。

見た目もよく、新鮮なのが多い。

今度来るときは、食べ物の分のお金も持ってこよう。


もう行きますと伝えると、のんびりしていけばいいのにと残念がるおじさん。

また食べ物の分のお金も持って遊びにきます。と伝えると、また来いよ!と笑顔で送り出してくれた。


ここでふとある事にふと気づく。

僕、ガイウスにお礼何もしてない。


「シアン、どうしよう。僕ガイウスにお礼してない」


『コハクお金あるのー?』


「あまりないかな……」


ボックスの中をサッと確認しても、何も買えなくらいのお金しか入ってない。

ガイウスにはちゃんとしたものを送りたい。

できれば長く使えるいいもの。


んー、何がいいんだろう?門番だから剣?

でもかなり安全なこの町にいるかな?

じゃあ、洋服?

いやダメだ。ガイウスのサイズがわからない。


じゃあ他に何か…

考えてもいい案は浮かんでこなかった。


送るものがあってもちゃんとお金がないとダメだよね。じゃあまずはお金から貯めよう。

 パッと前を向くとシアンが心配そうな顔をしてジッと見つめていることに気がついた。


「シアン、僕はまずお金を貯める事から始めようと思う。」


何事もお金が大事ってね。

どこかの偉い人も言ってるしね。

多分。


『シアンも手伝うー!!』


シアンは握り拳を顔の前で握って見せると楽しそうにクルクルと回った。

楽しそうなのは何よりだけど、シアン、さっきの反省活かされて無いね?


 指をそっと自分の口に当てると、シアンはパッと自分の口を両手で塞いでから、コクコクうなずく。


 その日はガイウスがもうすぐ終わると言っていた事もあり、帰宅する事にした。


 次の日の学校の前後に本気を出したコハクとシアンによって、ギルドの財政が一時赤字になるというレアな事件が発生した。

 また同じ頃、魔物も怯えて門に近寄って来なくなったとガイウスから聞いたコハクとシアンは“なんでだろうねー?”と不思議そうに首を傾げた。


 そういえば。竜人の村でも魔物は滅多によって来なかったな。なんでだろう。


コハクの小さな疑問は、目の前に出された美味しそうなお肉によってかき消されてしまった。



豆知識①

ガイウスはこの町を任された、この町の門番(下級騎士)をまとめるから局長と呼ばれています。


コハク達は知りませんが、町の他の門番からはガイウスは、鬼局長と影で呼ばれています。


普段はごつい上に目つきが鋭いので怖く見られがちですが、可愛いもの大好きなんです。実は。

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