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はじめての学校!2


 今日に授業も終わり帰り支度をしていたところ,リリさんに呼び止められた。


「帰るのちょっと待ってもらってもいい?」


リリさんが僕の肩をトントンと叩いて、無表情でそう言った。

今日は特に予定もないのでコクリと頷く。

 リリさんは僕の返事を確認するとオレンジ色の髪をした活発そうな少年のもとに去っていった。


 しばらくして、リリさんはその少年と共に戻ってくると、「この子に案内してもらうといい」と述べて帰っていった。リリさんはどこまでもクールだが、優しい人らしい。無表情なのにほんのり耳が赤かった。


 リリさんを目線で見送りつつ、少年に視線を戻す。

オレンジ色の髪の毛に黒に近い目の色。見るからに活発そうな少年だ。


「俺は、カイル!よろしくなココ!

案内って言ってもこの学校は結構教室少ないから、きっとすぐ覚えられるよ!」


 カイルはそう言うと “じゃあついてこい! 学校ツアーだ!” と言って僕の手を引いて教室を後にした。


 建物自体は3階建てで僕らの教室も三階にあった。

二階は先生達の研究室がほとんどで、生徒が使えるのは体育館と職員室という場所だけだった。


「先生達は何を研究してるの?」


ただの興味本位で聞くとカイルは笑顔で答えてくれた。


「主に精霊についてかな?多くはないけど、竜人についての過去の資料を読みあさって研究してる人達もいるかな、ルー先生もその中の一人だよ!」


心臓がどきりと嫌な音を立てた。

竜人って研究対象なんだ。

ブルリと背筋に寒気が走る。


「竜人って存在しないの?」


カイルに恐る恐る尋ねてみる。

いつのまにそんな貴重な存在になっていたんだ。

まぁ確かに、村の人口は少なかったけど……


「えー?! 何知らないの?

竜人は遥昔に突然消えたんだよ。だからもしかしたら今もいるかもしれないし、いないかもしれない。

真実が分からないから研究対象なのさ!」


カイルは驚きで目を見開きつつ説明してくれた。


 突然消えた?僕たちの先祖が?なぜ?

別に村の人達は人間を嫌ってはいなかった。

 じゃあ何か、消えなければ行けない理由でもあったのだろうか。


 んー、ダメだ。分からない。


考えてるうちに一階までたどり着いた。


「ココ、一階には魔法訓練室がいっぱいある。

授業でも使うけど、個人や団体での貸し出しもしてるから、使いたかったら職員室に行ってルー先生に許可書をもらうんだぞ。何か質問ある?」


フルフルと首を横に振る。

カイルはフッと微笑んで、頭をグシャグシャとした。

撫でられてるんだか、髪をぐしゃぐしゃにされてるんだかわからないような力で。


「ななな何?」


いまだに対人の距離が分からない。

慌ててカイルの腕を握って止めようとするが、頭はかき回され放題だ。


「なーんかお前、弟みたいなんだよなぁ……」


ボソッと呟いた声が聞こえてしまった。

弟見たいとは、どう言う感覚なんだろうか。

分からない。分からないが、なんとなく褒められてないことはわかる。


抵抗をやめて、ジッとカイルを見ると彼は慌てたように“いい意味で!”と付け足された。


解せぬ。


校内ツアーが終わると同時に

校内をウロウロしていたシアンを見つけて帰宅した。


かなり遅くなったからか、ガイウスは家のドアを開けるなりすっ飛んできた。


「お帰り!! 夕ご飯できてるぞ!」


「ただいま」

『ただいまっ!』


帰ってきたらハグというのが、この家のルールだ。


正直 恥ずかしい。恥ずかしいが、暖かい。


「今日は、リビットステーキだぞ!」


シアンと僕はその言葉にピシッと固まった。

リビット、それはこの町の森に生息する下級魔物。

めちゃめちゃ美味しい。


問題は見た目にある。


 肉が、紫色という中々に個性的な魔物なのだ。

しかもこの魔物、かなり可愛い外見をしておりこの魔物の姿を見たが最後、罪悪感でこのお肉は食べれなくなるという。


その晩,ニコニコとこっちを見つめるガイウスに負けてシアンと二人で心を殺してステーキを平らげたのであった。


村でもペットとして可愛がられていた姿を知っているため、シアンもコハクもリビットの肉は苦手なのだ。どうしても罪悪感が出てくる。

食事でごっそり体力を使った気がする。


もう二度と食べたくないものである。



次の日、今日はガイウスは仕事だし、学校もない。

シアンも暇そうにしているので、僕は久々にギルドに行く事にした。


「こんにちは」

『こんにちは!』


行く道でルンルンだったシアンは元気よく挨拶をした。エライぞーシアン!


「はいはーい!あら!ココちゃんいらっしゃい!

その子が例の精霊さん?」


ララさんは笑顔で迎え入れてくれた。


『?シアンの事知ってるのー?』


クルクルクルリン、シアンはララさんの周りを回っては首を傾げる。


「ええ、はじめまして、精霊さん。

私はララです。このギルドの受付をしてるの。

私の後ろに隠れているのが、タービア。私の契約精霊よ。よろしくね。」


シアンに視線を合わせてニコッと微笑んだララさんの肩の後ろから、赤髪の二つ結びの女の子の精霊がヒョコッと出てきた。


「はじめまして、僕はココです。

よろしくね、タービア。」


ララさんにしがみついているタービアに向かって微笑んで、片手を差し出す。

そのまま微妙な距離でジッとしていると、タービアの方からおずおずと中指を握ってくれた。


『…よろしく…お願いします』


小さな両手でキュッと中指を握るとタービアはすごい勢いでララさんの後ろに隠れてしまった。


「珍しい。タービアは絶対他人には懐かないのに」


ララさんは目を見開いて僕を見つめていた。


『コハ……ココはシアンの!』


プックーとシアンは保護を膨らまして顔にしがみ付いてきた。


「あらあら、ココちゃんはモテモテなのねぇ

精霊さんに好かれやすい体質なのね!」


ララさんはふふふと微笑むと

依頼を探しにきたのかしら?と聞いた。


勢いよく頭を縦に振ると、依頼をざっと並べてくれた。

 その中から魔物の対峙と薬草の摘み取り、荷物の運搬を選んだ。

ララさんにはびっくりされたけど、

「無理そうだったら、すぐに戻ってきなさいね。

次の人に回せばいいから。」

ととても心配そうな顔で送り出された。


何が一体そんなに危険なんだろうか。

荷物がとんでもなく重いとか?

薬草が全然生えてないとか?


今まで魔物の対峙ばかり村でしてきたコハクにはまさか自分が魔物にやられると思われているなんて、微塵も思わなかった。



荷物と薬草をパッパと終わらせて、コハク達は魔物の対峙に向かった。

 

「シアン、少し足止めお願い」


今回のターゲットはオオクマダ。

でかい図体にはびっしり黒い毛が生えていて、なおかつすばしっこい。さらに視界に何か生物が入り込もうものなら、敵と認め襲ってくるので厄介な魔物である。

 シアンに頼んで後ろから回り込む。


『任せて』


シアンが起こした風で中々前に進めないオオクマダ。

手を竜化してオオクマダの首を狙う。


「これならいける。 ごめんね。」


謝ると同時にオオクマダは地面へと倒れる。

オオクマダの毛は冬に活躍する上着の生地になるし、鋭い4本の歯は、よく切れる剣になる。


必要そうな材料だけ取ると、コハクは肉だけを切り取り、他の部位を土の中に埋める。


 今までお疲れ様でした。材料はありがたく使わせてもらいます。


コハクとシアンはしばらくその場所で手を合わせて、オオクマダに感謝を述べると、魔法で身なりを綺麗にして、材料を ボックス(魔法)にしまいギルドまで飛んだ。


 受付で、ララさんに材料と荷物の受け取り書を見せると、ちゃんとお金に替えてくれた。


「ココちゃん,ちょっといらっしゃい」


でもギルドの二階に連れてこられた。

二階には多くの部屋があったが、その中の一番手前の部屋に案内された。

中には誰もおらず、シアンとコハクとララさんだけになった。


「ココちゃん、あれ全部一人でやったの?」


真剣な目でそう聞かれた。


「?いいえ、シアンが手伝ってくれました。」


何か間違えたのだろうか。

首を傾げているとララさんはため息をついた。


「ココちゃん、あの魔物は普通の10歳の子供には狩れないのよ。しかもボックスは魔力を持っていないと使えない。使えたとしてもせいぜい一個か二個収納するのが限界でしょうね。」


それからララさんはコメカミを抑えた。


「ココちゃん、登録時は信じなかったけど……

あなた、本当に竜人なのかしら?」


ジーっとこちらを見つめる瞳に混乱する。

ララさんは信用できると思う。精霊と契約してるのもあるが、何よりこうやって人のいない所を選んで話してくれている。それはきっと僕を案じてだ。


最終手段を仰ぐようにシアンを見る。

彼はんー、と考えた後僕の目を真直ぐ見てコクっと頷く。

シアンのゴーサインを確認してからララさんに向き直った。


「…僕はおっしゃる通り竜人です。」


コクっと頷くとララさんからまたため息が漏れた。


「そう、ココちゃん。あなた竜人が研究対象だって知ってるかしら?」


「…?はい」


首を傾げる。

シアンはこの質問に飛ぶのをやめて僕の肩まで降りてきて,ジッとララさんを見つめた。


「……その中にはかなり熱心な人もいてね。

もしココちゃんがその竜人だとバレたら、…

考えるだけでも恐ろしいわね。」


ララさんはブルリと体を震わせて両腕をさする。

そんなにやばい人たちがいるのか。


「普段はいい人たちなのよ。でも研究の事になると手をつけられない人が多々いるの。

ココちゃん、今度からは受付じゃなくて、この部屋に持ってきてもらってもいい?


この上の階はいろんな人が寝泊まりできるようになっているから、入っても怪しまれないし……」


 不安が顔に出ていたのか、ララさんは慌ててフォローする。

とにかく、そんな厄介な人達に捕まりたくはないので、ララさんの提案を飲み込んだ。



「人間はなんでそんなに躍起になって竜人を探したり、研究したりするんだろうね。」


ギルドを出てからの帰り道、少しだけガイウスの仕事を見てみたいと言うシアンの要求に応えるべく、今は町と森を隔てる門に向かっている。


と言ってもさっきバレないように上空を飛んで行ったから、門に向かうのは今日で二回目なんだ。


『シアン、よく知らないけど、人間の中に竜人を毛嫌いする人もいるとは聞いたことあるよ。』


シアンは頭に乗っているので出来るだけ頭を動かさないようにしていた。が。この返答に思わず首を傾げてしまった。


『うわぁぁ!』と言うシアンの楽しそうな声が聞こえてきたから、大丈夫だったんだろう。

 コハクはそれ以降顔をがっしり固定して、まっすぐ歩く事に専念した。


Qコハクはなぜ自然の魔素だけでお腹がいっぱいになれるのに、村でも食事をとっていたのですか?



Aコハクが竜人にしてはかなり小柄だったため、周りの大人が心配して多めに魔物を狩ってきてくれていたから。


魔素だけでは、身長も体重も伸びません。


因みに精霊はご飯がなくても生きられます。

でも食べれないわけでもありません。


「えっ?!僕ってそんなに小さいの?(゜ω゜)」

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