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はじめての学校!

ー月日の流れというものは恐ろしいもので、テストを受けてからもう2ヶ月が経っていた。

魔法学校に編入。しかも特待生というのは異例中の異例だったらしく、入学までの準備に時間がかかったらしい。

今日から僕は晴れて4年生になるらしい。


そして今。今日から学校に行くと前々から言っていたのに、1時間前くらいから玄関でガイウスが大泣き。


「うーっ、あんなに小さかったココももう学校に……ううっ…うっ」


すがり付くように抱きしめられ、少し罪悪感を感じていた。

でも、さすがに1時間も続けば呆れが入ってくるのはしょうがないと思う。


「ガイウス、僕そんなに伸びてないよ。

しかも自宅通いだし、そんなに泣かないで」


「っ…シアンまで!俺は今日どうやって一人で過ごせば……!」


『コハクー、もうほっといて行こう?』


シアンは“もう飽きたー”と言わんばかりにクルクル周りを回っている。


「うーん、そうだね遅刻しちゃうし……

ガイウス、僕ちゃんと帰ってくるから。

ほら行ってきます!」


『いってきます!』


玄関のドアを開けて二人で手を振ると

ガイウスは渋々と言った様子で

「……いってらっしゃい」と振り返してくれた。


*


「にしても、学校って山奥にあるんだね」


僕とシアンは空をかなりの速度で飛んでいた。そうしないと遅刻するのだ。

しかし景色は一環して森‼︎

みんなはどうやって此処にきているんだろうか。


『色々と便利だからね。』


そう言ってシルクは真剣な顔して黙り込むと

耳に近づいてきた。


『ねぇコハク。これはシアンからの忠告。コハクは自分が竜の村出身って事もまして竜人ってことも、言わない方がいいと思う』


シアンから紡がれた珍しい言葉に僕はちょっとスピードを落としてしまった。


「どゆこと?」


『シアン、村について色々聞いたんだけど、ちょっと気になった事があるの。でもまだ確証はないから、忠告!可愛いコハクに何かあったらシアンは嫌だからね!』


シアンは腕を組みプーっと頬を膨らませる。

いつもは明るくて気の向くままに生きてるシアンがこんなこと言うなんて思っても見なかった。


「シアンが……ほんと珍しいね、

わかった。言わないようにするよ。」


実際にコハクは見た目はそこら辺の人間と変わらない容姿をしていた。

強いていうならば、コハクの瞳が琥珀色と言うのが珍しいくらいだろうか。でもそれも親を知らないと言えばなんとかなるだろう。

しかし、シアンがこんな事言うほど学校は注意をした方がいいところなのだろうか。

あと6年も通う場所なのに、とコハクは目線の先に現れた小さいお城のような建物に一抹の不安を覚えた。


*


実際に着くと学校は思っていたよりもずっと広かった。

高い城壁が学校の周りを囲っていて魔物たちの侵入を防いでるようだった。


「えーっと、どうすればいいんだろうね」


城壁を意図せず飛び越して、慌てて地面に降りたコハクとシアンは今学校の門の真前にいるのだが、勝手に入るのは気が引ける。

がしかし、先ほどドアを叩いたのにもかかわらず誰も来ない。


『探索しようよ!』


シアンは楽しそうに笑う。


「勝手にいいのかな?」


うーん、でも誰も来ない場合は…

と考えていると小さな相棒は視界から消えた。


「あっ!待てコラ!もーシアン!」


さすが風の精霊。一瞬にしていなくなった。

探しに行くとなると確実に遅刻を言い渡されるだろう。

遅刻は嫌だけど、シアンは悪戯好きだ。

何かやらかす前に見つけなければ、何をしでかすか分かったものではない。


「……探しに行きますか…」


コハクは仕方なく消えた相棒を探しに学校周りを歩き始めた。


しばらく歩いていると大きな庭園にたどり着いた。


「シアン…此処にいるかなぁ?でも花とか確か好きだよね。」


なんとなくシアンがいる気がして小走りで庭園に向かう。

一本道が永遠と続いてるだけなので、此処にいなかったらどうしようと考えつつキョロキョロしながら小走りでシアンを探した。

 前方不注意だったからなのか、


ドンッ 頭に衝撃が走り思わず尻餅をつく。

シアンがいると思って慌てすぎたな。


「すみませんっ」


自分が悪かった。完全に自分の前方不注意。

怒っているかな?と恐る恐る顔をあげると

「おっと…、んーん、気にしなくていいよ。

僕もボーッとしてたから、お互い様だよ」


とふんわり笑う金髪碧眼の美青年がいた。

男の人なのにどこか中性的な顔がグイッと近づいていて、手を差し伸べられてる状況にへんにどきっとした。


「えええっとあのその、手のひら位の白髪の精霊見ませんでしたか?」


ぶつかった時、おでこが痛かったからガイウス的なガッシリした人かと構えていたので、なんだか拍子抜けして 変に緊張してしまった。


 相手はおかしそうに笑いながら

「さっき物凄い勢いで奥の方へ精霊が飛んでいったから、きっと奥の方にいると思うよ。」とまだ終わりそうにない一本道の先を指す。


「多分その子です!ありがとうございます

えっと……」


「あぁ,レイでいいよ。」


「レイさん、ありがとうございました」


今度は失礼します。の意味を込めてペコっとお辞儀をしてから、また小走りで奥を目指す


すぐ先にリンゴの木がありよくみるとその木の上にシアンはいた。


「見つけた!もう!勝手にどこかへ行ったらダメでしょ!」


心配したんだから!と怒るコハクを他所に

シアンはずっと真剣な顔をして木の幹に座っていた。

あまりに珍しい姿に思わず「シアン?大丈夫?」と声をかけた。


一方シアンは

『んー、コハクやっぱり右の方が大きい?それとも左?』

真剣に目の前のリンゴの大きさを比較していた。


「……シアン、これ終わったら街に買いに行ってやるから、そばにいてくれ…」



帰りにお菓子を買ってもらえるからか、かなりご機嫌なシアンと何気に結構ごっそり疲れたコハクは一緒に最初の門の前まで戻ると、そこには白髪の長い髪を後ろで縛り、紺色のローブの裾を地面に余らせているおじいさんがいた。


一見すると優しそうなお爺さんだがそこからはなんとなく有無を言わせない圧があった。


「おぉ…ココさんにシアンさんかね?」


おじいさんはこちらに気づくと,

ローブを引きずってこちらへ歩いてきたので、僕は焦ってそばまで駆け寄った。


「遅れてしまってすみません。

僕はココと言います。こっちの子がシアンです。」


シアンの方に目をやるとシアンはくるりと回転した。これが精霊の挨拶というやつなんだろうか。

おじさんは目尻をキュッと細めて微笑んだ。


「元気じゃのう……

シアンお主は…風の精霊かの?お前さんたち相性が良さそうじゃのう!」


いいことだいいことだどおじさんはしきりに頷く。

シアンは褒められた!とクルクルおじさんの周りを飛び回る。

今更だけど、おじさんはどなた?


「ワシは此処の学園長じゃ。」


考えていた事が顔に出てたみたいだ。

恥ずかしくて頬に手を当てる。


「フォッフォッフォ、素直な証拠じゃ、そのままでおるが良い。お主の心が綺麗故に風の精霊にも好かれるんじゃろ。

さぁワシについてこい。

お主のクラスまで案内を任されたのでな。」


おじさ…じゃなかった。学園長はそのままクルリと門に向かい片手で軽々と門を開けた。


 外からはわからなかったが、この学校には寮が併設されていた。

 1ー9年生までいるのに対して女子寮と男子寮の二棟だけだが、最近は魔術師の人数が減ってきているので事足りるそうだ。

 校舎はその両寮の真ん中に建っていて、派手な外見からは一点してシンプルな作りだった。

木がベースの床にはなんだか自然の温もりが感じられるし、壁にはお洒落なランプが等間隔で飾られていた。壁は白で統一されていた


キョロキョロしながらも学園長についていくとさっき庭園であった美青年と遭遇した。

彼もこちらに気づき手を上げてこちらに来る

そしてサッと学園長に挨拶を済ませてこちらを向く


「やぁ、さっきぶりだね。

その子がさっき探していた子かな?」


後ろに花でも背負ってそうなキラキラした笑顔をこっちに向けてくる。

シアンは僕の後ろにサッと隠れる。

思わず僕も後ずさってしまった。

笑顔が笑顔に見えない。

庭園で見た笑顔の方が自然だったのに…


「は…はい」


思わずもう一歩後ずさってしまった。

だって!表情を隠す人って怖いんだもん!


「あれ?私は君に嫌われちゃったかな?

どうしようね、アレン」


レイさんはそう言って彼の肩に乗っている精霊に話しかける。


アレンと呼ばれた精霊は、赤い髪につり目気味の碧眼。時々女の子と間違えられるシアンとは正反対の凛々しい感じの精霊さんだった


するとアレンはプンスカ怒りながら、シアンに向かっていく。

『あーー!さっき俺のパン食ったのお前だろ!』


『シアン食べてない』


『じゃあ他に誰が食べたんだよ!

レン!こんな奴と仲良くする必要ねーよ!』



『こんな奴と仲良くする必要ない!だってさ!これだからシアン火を扱う奴苦手』


プイっと顔を背けるシアンに対してアレンはまた何か怒る。そうしてシアンとアレンの口論が激化した。


シアンがこんなに怒るなんて珍しい。

ボーッと口論の様子を見ていると

レンさんがアレンとシアンを止めに入った。


「アレン。そこまで。そんなに言う必要ないだろ。

君も探していた子が見つかってよかったね

学園長時間をとらせてしまってすまない」


レイさんは申し訳なさそうに僕と学園長に向かって頭を下げる。

「いやシアンも結構言ってますから…」と対処に困っている僕とは裏腹に、学園長はさらに笑みを深めた。


「良い良い。精霊の祝福を受けた者同士が出会う事の方が稀じゃ。仲良くやるが良い」


えっ?精霊の祝福を受けたものが少ない?

僕の村ではみんな当たり前に精霊の友達がいたのに。


「精霊の祝福を受ける者は少ないんですか?」


頭に浮かんだ疑問を口に出すと


「そうじゃ。精霊の祝福を受ける事自体が奇跡と言われてるくらいだからの。」

と学園長はどこか遠い目をした。


そうなのか。知らなかった…

でも僕はずっとシアンと一緒にいるけど、祝福?いつやってくれたのだろうか。


「シアンはいつ僕に祝福を与えてくれたの?」


肩で拗ねていたシアンに聞くとシアンはクルクル僕の頭の上を回り出した。

シアンはんー?と考えるポーズをとる。


『シアンはねー、ずーっと与えてるよ!

毎日朝起きたら“今日もいい日になりますように”って!』


シアン……!!!

なんて親友思いの子なんだ!

一瞬でも祝福をもらってないなんて思ってごめんね!


「ありがとう!」


『んー?どういたしまして!』


目を合わせて二人でふふふっと笑う。

シアンに感謝だなぁ。


「君たちは本当に仲がいいんだね、」


レンさんがふふふっと頬を緩めて笑う。

こっちの笑顔は本物だなぁ…


『シアンはコハ……ココとずっと一緒だもん』


シアンは少し頬を赤らめて、物凄い勢いで僕の肩にまた戻ってきた。照れてるのかな?


「おーい!あっ!学園長!遅いじゃないですかぁ!」


廊下からパタパタとメガネをかけた人が走ってきた。

白い長いローブを着ているからまるで研究者みたい。


「君が…はぁはぁ…ココ……はぁ…くん?」


走ってきた一本結びの人は息切れしながら僕の前に立った。

息を整えてから再び僕に向き合う。


「私は,君のクラス担当のルーマス。

みんなにはルー先生って呼ばれるけど、呼び方はなんでもいいよ。よろしく」


ルー先生はニコッと笑って僕の前にスッと手を差し伸べる。


「よろしくお願いします!僕はココです。」


先生は僕の手を素早く握ると激し上下に振った。

「よろしく!!」と満面の笑みで言われた。


先生。

痛いです。



 ようやくクラスにつき、自己紹介を軽く済ませてから、初めての授業を受けた。教科書や筆記用具などは隣のリリというピンク色の髪が肩の位置で綺麗に切りそろえられた子のを一緒に見た。


「はい、じゃあ今日は魔法と魔術の違いね。

まず僕たち人間は基本的に魔力をほんの少ししかもってません。では魔法を使うためには私たちはどうしたらいいでしょうか。はい ルシフィア」


指名されたのは水色の髪の毛に赤い目を持つ女の子。目はスッと切れ長な美人さんだ。


「エルフ又は精霊と契約を結ぶ事で魔法を使える様になります。これは契約を結ぶ事で相手の力が使用可能になるからです。」


ふふん。と美人さんはドヤ顔をした。

顔が整っているとどんな顔も絵になるからいいよなぁ


「はい。お見事です。そうですね。では両方の欠点はなんでしょうか。はい リリ」


おっお隣さんが指名された。


「契約はそもそも結べる可能性がすごく低いことが最大の欠点ではないでしょうか。

特に精霊は人前に姿を現しません。それに加えて契約は彼らにとってはなんの利益にもならないため、結んでいる人はかなり珍しいと思います。」


ピンク髪の子は答え終えると同時に席についた。

割とクールな子なのかもしれない。


「そうですね。リリありがとうございました

では次に竜人と竜の話をしていきます。」


ここに来てコハクはピクッと動いた。

ルー先生は人差し指で眼鏡をかけ直すと少し興奮気味に続けた。


「竜人は精霊やエルフとは全く違った魔法を使ったとされています。

エルフや精霊にはそれぞれの個体に決まった属性があるのに対し、竜と竜人には属性は存在しませんでした。彼らは“自然魔法”と呼ばれるものを使っていました。

自然魔法とはいわゆる治癒魔法の別称だとされています。ですが、竜人と竜はこれに加えてなんと!!

天気を操る力も持っていたと言われているんです!」


先生が両手を広げてドヤっているところに


『キーンコーンカーンコーン』


鐘がなった


「あっ!ここまでです。では皆さんお気をつけて」


先生はサッと手を戻すと、すぐに表情を真顔に戻しすぐに教室からいなくなってしまった。


先生はもしかしたら恥ずかしがりやなのかもしれない。

因みにシアンは授業中は外で探索してます。

なぜかというと


『シアン、難しい話嫌い』


だからだそうです。

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