第五巻 〜目覚め〜
〜序章〜
そんな・・・
信じてたのに・・・
僕はもっとも失いたくなかったものを
一気に3個も失ってしまった
攻めることも、止めることすらできなかった
残るのは無力感のみ・・・
強くなりたい・・・
強くなりたい!!
第1章〜テストクリア〜
青ざめていく僕らにヒーストが高笑いしながらピストルの弾を打ち出してきた
もう助からない!!恐怖で動けない!!
半分僕は諦めていた
しかし、僕は隣から漏れでる光にはっとした
隣を見てみるとなんと斉木の体が光り輝いていた!!
おそらく斉木自身、半分意識が無いのだろう
うつろな目をしている。
と、思うとさらに光が増してきて円盤状に広がり僕らを包み込んだ!!
するとなんとなんと!!
ヒーストが打ち出した弾がそれにはじかれ『カランカラン』と音を立てて床に落ちたのだ!!
「一体今のはなんだ」
ヒーストが素っ頓狂な声をあげた
僕らも訳が分からず斉木をまじまじと見る
斉木の体から光が引いてくる
どうやら光が引いてくるにつれて斉木の意識もちゃんとしてくるようだ。
うつろだった目が徐々に生気を取り戻してくる
そして斉木の体から光が完全に消えた
すると斉木が
「一体・・・俺はどうしちまったんだ?・・・何が・・・起きたんだ」
と不思議そうに言った
「それはこっちの台詞だぜ・・・一体何が起きたんだよ・・・」
名屋が言った
「俺はただ・・・皆を守りたいって・・・死にたくないって・・・ただ・・・そう思ってた・・・」
斉木がおどおどしながら言う
すると久杉が『パンパン』と手を鳴らしながら言った
「おぉ!!なんという力だ・・・最弱と言えどシャイターンの砲撃を防ぎきるとは!!みごと!!誠にもって見事!!よしお前ら!!テストは合格だ!!私の秘密を明かしてあげようではないか!!」
僕らはきょとんとした。それはヒーストも同じだ
そしてヒーストが
「バ・・・バカ言うんじゃねぇ!!俺はこいつらを倒したくてうずうずしているんだ!!何でお前にそんなこと決められなきゃならないんだ!!」
と、叫んだ
すると久杉は
「うるさい!!立場をわきまえろ!!お前は俺より格下なんだ!!何度も同じ事を言わせるな!!それとも本気で潰されたいのか!!」
と、ヒーストに怒声を浴びせた
ヒーストは『チッ』と言いながらも久杉の言うことを聞いた
そして久杉が「さて」と話しの続きをし始めた
「先ほどのヒーストの話で私の地位は分かっただろう!!私のコードネームはバルキー、VIシャイターンだ。そして・・・」
何か久杉が言いかけたが僕はそれを遮って言った
「久杉さん!!なんで・・・なんでそっち側についたんだよ!!」
皆もうんうんと僕に相槌を打つ
すると久杉は
「全く・・・津式は相変わらずだな・・・人の話を最後まで聞こうとしないその態度、良くないぞ」
と、僕をたしなめるように言った
でも僕はそんな久杉をピシャリとはねつけた
「そんなことはどうだっていい!!僕は『何でそっちの味方になったんだ』と聞いたんだ!!」
しかし久杉は聞く耳を持たなかった
でも僕があまりにも
「どうしてだ、どうしてだ」と
しつこく聞くので久杉は
まったく・・・といいながら説明し始めた
「そうだな・・・『何でそっちの味方になったんだ』というのは間違った表現だな。こっちの味方になったのではない、『もともとこちら側の人間だった』ただそれだけの話だ」
だけど!!と僕が続けようとしたが、僕よりも先に加賀が口を開いた
(カノンは加賀の横でさっきのヒーストの攻撃で死んだかと思い、ショックのあまり気絶している)
「でも久杉さんは僕らを守ってくれたじゃないか!!いろんなことを教えてくれたし・・・僕が危ないときは助けてくれた・・・。第一なんでそっちの味方なのに僕らと行動をともにしていたんだよ!!」
(加賀は久杉と同じクラスだっただけあってなにか感慨深いものがあるのだろう)
でも久杉は
「まてまて・・・だから今それを話そうとしているんだろう。俺がお前らと行動をともにしなくちゃいけなくなったわけ、それを今から話してやる。だから黙って聞いてろ」
と、受け流すように言うのだった
第2章〜敵の要求〜
久杉の言う通りに僕らは黙って話しを聞くことにした
すると久杉はよし!!と、話しを始めた
「加賀の言うとおり、俺がお前らの仲間になったことは実に不思議なことだろう。確かに、俺はお前らの仲間になる事なんて無かった。だがそれはお前らが周りの奴らのようにあっさり死んでくれたらの話しだ。お前らは知らないようだから言っとくが、この『西中を襲う』と言う計画はかなり前から決まっていたんだ。その理由はお前らには言えないがいずれ分かるだろう」
久杉がにやっと笑った
(どうやらその計画は僕らにとっていいことではないことらしい)
そして久杉が続ける
「さっきも言ったがお前らが死んでくれれば何の支障もなかった。だがお前らも中には不思議な力を持ったやつがいた。俺らのように。そう・・・それは」
と言ってある人物を久杉が指差した。
久杉の指の先にいる人物・・・僕だ!!
「津式!!お前だ!!お前には人を治す才能・・・つまり医術関係、ケア系統の力がある!!お前も心当たりあるよなぁ!!斉木を治した時、名屋を治した時、アレがそれだ!!しかもその力は未知数!!これからもその才能は伸び続けるだろう!!だから俺らはお前が邪魔だった、お前を見張り、変な動きをされないように気をつけた!!これがお前らと一緒にいた訳だ!!」
久杉が高らかに笑った
すると草羅が
「ちょ・・・ちょっと待て・・・じゃぁカノンのほかにつれてきたい人物って・・・」
と疑問を投げかけた
すると久杉が笑いながら言った
「そう・・・津式さ!!」
そんな・・・と、僕は口を大きくあけた
そして久杉に向かって言った
「で・・・でもお前らなんかに僕はついていかないぞ!!」
すると久杉が言った
「あぁ・・・別にかまわない・・・もうお前なんか要らない・・・」
僕は意味が分からなくなった。皆も混乱しているようだ
そしてその時、久杉がさらに言った
「俺は気が変わったんだ・・・。津式・・・お前の力よりも・・・。斉木の力のほうがよっぽどでかい!!そして強力!!津式の一人一人治していく能力に対して斉木の能力はその一帯、治したい、守りたいと思うものすべてを治すケア能力を持ってる!!」
そして久杉が身震いしたくなるようなおぞましい笑顔を浮かべながら言った
「斉木をわたせ」
僕らは数秒間黙りこくった。
そしてその沈黙を破ったのは斉木だった
「嫌だ!!俺はお前らの仲間にはならない!!」
と、覚悟を固めるように言った。
そうだそうだ!!と、皆も口々に言う
すると久杉は
「なら・・・カノン様の末路は見えたな」
と静かな声で言った
僕らははっとなり黙った
そして斉木が言った
「それは・・・一体どういうことだ!!」
ヒヒヒと久杉が笑って言った
「お前を勧誘するためだ。スコル様もこれくらいのことは許してくれるだろう。我らの大きな目的は3つある。その一つが別々になってしまったスコル様の力を元に戻すことだ。それはすなわちカノン様に受け継がれてしまった力を無理やり元に戻すと言うことになる。そのときは力の強いものの方に力が注がれ、力の弱いものには相当なダメージを負う事になると聞く。カノン様とスコル様ではどちらの力が強いかだなんてもう歴然としているだろう。故にダメージを負う方も決まっている。そのときに負ったダメージを放っておけば間違いなくカノン様は死ぬ。残念ながらわれわれの仲間にそういった治癒能力を持った奴はいないのだよ。だから斉木がいないとカノンは死ぬと言うことだ」
斉木が愕然とする
それは僕らも同じだった
斉木は今ものすごく悩んでいるだろう
僕らをとればカノンは死ぬ。カノンを取れば僕らの身が危険に晒される
こんなの、心の優しい斉木に決められるはずが無い
と、その時
ヒーストが耳につけていた無線機から音が聞こえた
僕らは何を言ってるか良く分からなかったがヒーストがその内容を久杉に告げた
「おいバルキー!!スコル様からの伝言だ。そろそろけりをつけろだとよ」
「ほぅ・・・そうか・・・ならば急がなくてはな」
と、久杉が言った
そして
「さぁ!!やることは沢山ある、だが時間が無い。早く決断するんだ斉木!!」
と、久杉がせかす
斉木はまだ悩んでいた
すると、久杉は
「たくっ!!じゃぁ先にカノン様をいただくとするか」
と、いって加賀とカノンのほうへ向かっていった
僕らは焦って止めに行った
だがかなうわけも無くヒョイヒョイとかわされていってカノンを奪われてしまった
カノンは完全に敵の手に落ちたのだ・・・
第3章〜斉木の選択〜
斉木が悩み、苦しんでいる中
僕らはただただ見守っていることしか出来なかった
斉木は本当に苦しそうだ
どちらかを選ばなくてはならないという圧迫感
どっちを選んでも結局どちらかは死んでしまう、つまり人の命を委ねられた責任感
そんな感情が渦巻いているのだろう
そんなときに久杉が言った
「さぁ!!早く決断しろ!!いつまでも悩んでいるのではない!!あと十秒だ・・・後十秒で決断するんだ!!」
その言葉を放った後、久杉は「10、9、8・・・・」とカウントを始めた
僕らはまた斉木に目をやった
斉木は頭を抱え、必死に答えを見つけようとしている
「4、3」久杉のカウントが聞こえてくる
斉木がついにうなり出してしまった
だが久杉はそんなことお構い無しに
「2,1」
と、カウントを続けたそして・・・
「0」
久杉が言った
と、その時!!
斉木が「ウォォォォォォ」と大声で叫んだ!!
皆がビクッと震える
そして斉木が、顔に涙を浮かべ自ら下した決断を僕らに告げた
「分かったよ久杉、お前らに・・・着いて行く・・・」
誰も斉木を止めなかった
と、言うより止められなかった、攻めることすら出来なかった
斉木が苦しみを乗り越えた末に下した決断だ。
いまここで僕らがまた何か言ったら斉木の決断が揺れてまた苦しませることになりかねない
すると久杉が「フフ」と笑って言った
「利口だな。流石は斉木だ、世の中の渡り方ってのをちゃんと理解してる。まぁお前のことだからそんなこと考えないでただ純粋にこのカノンを救いたかっただけだろうがな」
そんな久杉に斉木は言った
「うるさい、早く連れて行け、事は早くても何の問題は無いんだろ?」
「それはそうだ、とっとと行こう。おいヒースト!!移動の準備を!!」
久杉が言った
僕には斉木が早く行きたがってる訳がなんとなく掴めた
おそらく僕らのいるところから離れたいのだろう
理由なんてものもすぐ分かった、自分が見捨てると決めた友の姿など見ても苦しくなるだけだ。お互いに・・・
そんな考えを頭の中で浮かべている時
あの「ジジジジ」という音がした
そして敵の後ろをくっついて今まで守ってきた仲間と、頼りにしていた仲間、一緒にいてとても楽しかった仲間が穴の中へ入っていった
それらは僕が一番失いたくなかったもの、なによりも一番大切なものとの別れだった。
第4章〜開放〜
斉木たちの姿が見えなくなった後も僕らは動けなかった
あまりに突然の事にみんな悲しみを隠せずにいた
なにせ一気に3人もの友を失ったのだ、悲しむのも無理は無い
空気がとても重く、冷たく感じる
未来がもう無いかのようだ
僕は自分がとってもちっぽけに思えた
斉木をとめる事のできなかった無力感、久杉とヒーストに手も足も出なかった不甲斐なさ、守ると決めたものも守れずにただ見てることしか出来なかった自分への怒り
どれをとっても情けなく酷くちっぽけとしか言いようが無い
みんながドヨーンとしている中
最初に口を開いたのは名屋だった
「ちくしょう・・・なんで・・・なんでこんなことに・・・。田辺だけじゃなく久杉と斉木とカノンまで・・・」
悔しそうに口をかみ締めながら言った
「ほんとだよ・・・なんでこう・・・僕達はみんながばらばらになるんだろう」
これは加賀だ
僕も僕で悲しみに囚われていた
そんな時、草羅がこういった
「みんな・・・元気だそうよ・・・いくら悲しんだってあいつらはもう敵の手の内にあるんだ、過去を悲しんで生きる希望をなくすんじゃなく、これからのことを・・・みんなを連れ戻すように動こうよ!!」
僕はハッとした
前に久杉に言われたことがある
まだこんな事起きてないときに・・・
そうか、そうだったのか、やっと今までの謎が解けた
何で久杉があんな事言ったのかあのころは見当もつかなかったが今なら分かる
久杉はやつらの仲間だからこうなることは知っていた
だからいったんだ「復讐に生きるな、前を見ろ」と
でもなんでそんな事いったのだろう、僕らに忠告したのか?
だったら今からでもまだ久杉を仲間に戻すことが出来るかもしれない!!
そう考えると俄然元気が出てきた
ふと、僕は自分に力が無いことを思い出した
そして何を考えるでもなくただこう口にした
「強くなりたい」
これは今、心の底から思うことだ
それを聞いた皆も口々にこういった
「強くなりたい、なってみせる」
みんなこれが一番望んでいることなのだろう
全員の言葉がしっかりしてる
と、そのとき!!僕らの体から溢れんばかりの光が出てきた!!
その光はこの辺一体を取り囲む
だめだ!!光が強すぎて目を開けてられない!!意識が・・・意識がどんどん遠のいてく!!
・・・・・・・・・・・・・
数分間静かな時が流れた
そしてゆっくりと目を開けた。
まだ光はやんでいないが目が開けられなくなるほどではない
気持ちいい光だ。
僕は僕自身の体を見た
するとなんと!!僕の手から足から腹から・・・ありとあらゆる体の部位から炎が出ているではないか!!不思議なことに火が出ているのにちっとも熱くない。
ためしに隣の壁を触ってみた、するとみるみる壁が溶けていくではないか!!
僕は慌てて壁から手を離した。そしてふと周りを見る
すると僕以外のみんなの体にも変化が起きていた!!
加賀は腕と足の筋力が並大抵のものではなく膨らんでいる!!
草羅は風みたいなものに取り囲まれていて髪の毛が靡いている
名屋は体そのものの変化は無いものの名屋の足元の床が凹んでいたり、周りの水滴がまるで雨のように降っていたりとそれぞれおかしなことが起きていた。
そう思っていると、ふと光がしぼんでいった
それと同時に僕達の変化も治まっていく
そして完全に光が消えた
第5章〜己の力〜
「いったい・・・何が起きたんだ?」
名屋が言った
加賀も
「今のは一体・・・」
と口にした
僕も何が起きたのか訳が分からずあたふたしていた
すると草羅が目を丸くして言った
「い・・・今のは・・・アビリティーズカンセルか?」
「なんだよ・・・そのアビ・・・何とかって」
名屋が聞いた
「アビリティーズカンセル、直訳で『才能の解除』って意味だ」
草羅が言った
「才能の・・・解除?いったいなんなの?それ・・・」
僕が草羅に聞いた
すると草羅は分かりやすく説明してくれた
「アビリティーズカンセルは・・・それぞれの人物が持つ力が解放されたときに起こる現象なんだ。人間は普通体の奥底に1〜2つくらいの未知なる能力を持っている。その力は信念、心の揺らぎ、強い思いなんかに反応して発動できるようになるんだけど、その力がどういった物なのかを見極められるように最初の時のみ自分の意志でなく力そのものが最大値の力が発動するんだ。その現象をアビリティーカンセルというんだ」
草羅は言葉を選んで僕らに分かりやすく伝えようとしたつもりなのだろうが
僕らには何のことだか良く分からなかった
でもなんとなくは掴めた
ようは僕らにも不思議な力が使えるようになって、その力がどういうものなのか分からせるという事なのだろう
するとまたしても名屋が言った
「強い思いに反応するってことは・・・今の『強くなりたい』って感情に反応したってことか?」
草羅はうんと頷く
「じゃぁ僕らは強くなれたのか?」
名屋が顔を輝かせながら言った
草羅も笑顔でうんと頷いた
そしてさらに名屋が顔を輝かせていった
「じゃぁあいつらとも互角に戦えるのか?」
ところが草羅は難しい顔をしてこう言った
「それがそうとも限らないんだよ・・・アビリティーカンセルは一時的なものでそれも一回しか起きない。アビリティーカンセルが起きても力を自由に自分の意のままに操るのは普通1年はかかるし今の僕達じゃ修行しようにも出来ないから難しいな。」
名屋がガクッとうなだれる
ところが草羅はでも・・・と続けて言った
「でも今までより希望が出てきたのは確かだ。戦闘中に何かのきっかけで力が使えるようになるかもしれないしさ、それに人より長けた才能があったり奇跡が起きれば力を使いこなすのに1時間もかからないって言う噂もある」
名屋は顔に輝きを取り戻した
そしてこういった
「じゃぁもしかしたら奴らよりも強くなれるかもしれないのか?」
「それはもちろんさ!!」
草羅が調子のいい声で言った
ここで今まで黙りこくっていた加賀が口を開いた
「アビリティーカンセルって言うのが自分が持ってる力がどういうものなのか見極めるための現象ってことは僕らの力がなんなのか分かったんだろ?一体僕らの力は何の力を持っているんだ?」
僕もそれは言おうと思ってた
だって自分も不思議な力が使えて、しかも奴らに勝る力かもしれないなんてうずうずするではないか!!
「今の現象を見る限り・・・津式は『熱量増加』だと思う・・・、これは自分が指定した体の各部位の熱を最大限まで引き上げることなんだ。そして熱量がMAXになったときには体から炎が出せる。お前に起きたアビリティーカンセルを見るとソコまでの増加が可能みたいだな」
草羅が僕の力について説明した
『熱量増加』・・・炎人間・・・すごい!!すごすぎる!!僕にこんな才能があったなんて!! 僕がニヤニヤしながら笑う中
草羅は加賀と名屋の力について説明した
「加賀はおそらく『肉体強化』の力だ。これも自分の指定した体の各部位に変化が起きるタイプで、指定したところの筋力が半端なく増幅させることが出来る。この力のMAX値は自分だけでなく味方の筋力も増幅させられると言うことなんだけど、今のアビリティーカンセルを見るだけじゃそれが出来るかどうかは良く分からない。次に名屋だがお前の力はかなりシビアで使いにくい力だと思う。お前の力は『物質の変形』、これは発動中に自分の体に物が触れるとその物の形状を変えてしまうものなんだ。この力をMAX値まで上げると形状だけでなく物質そのものを消滅させることが可能となるんだ。しかしこの力はずっとは発動してられないんだ、ずっと周りのものを変形し続けてしまっては世界を破壊することに繋がってしまうからな。そのため発動のON OFFを常に制御しなくてはならなく使いこなすのには相当な鍛錬が必要だろう」
加賀は顔を輝かせて喜んでいるが名屋はあまりパッとしない顔つきだった
すると加賀が草羅に質問した
「じゃぁお前じしんの力はなんなんだ?」
「俺の力はおそらく『気流の誘導』だろう。この力は周りの気流(空気)を思いのままに動かすかとが出来るようになる力で、風を起こしたり、空気中の水滴を風の力でまとめて雨を降らせることなんかも出来るんだ。この力に基本MAX値は無いんだけどしいて言うなら力の放出を絶えず行えば竜巻や台風を起こせると言った事かな?」
草羅が答える
僕らは自分自身の力について深く考え始めた
今までは敵に不思議な力があってこっちは何も太刀打ちできるものが無い
と言う状況だったが、今は違う。
草羅は『力を使いこなすのは難しい』と言うがそれはあまり深く考えないでいた
頭の中でそんな考えを張り巡らせているとき、加賀が素朴な疑問を草羅に言った
「前々から気になってたんだけど・・・草羅は何でそんなにこんなことに詳しいの?」
この質問はもっともだ
なぜ草羅がこの状況についてこんなにも詳しいのかはとても気になった
今までこの状況を説明する立場にいた久杉が敵だったというのだからなおさらだ
この質問を受けた草羅は
「そのことについて、僕も皆に話そうと思ってたところさ。いいよ、聞かせてあげる。まずは僕自身の話をしよう」
第6章〜新たな刺客〜
加賀の質問を受けた草羅は
この状況をナゼこんなに理解しているのか、ナゼこんないろいろなことを知っているのか話し始めた。
「実は僕はもともとこの空間の人間じゃないんだ。」
みんながえぇぇと動揺する
「僕はここの空間じゃないところの生まれで4〜5年向こうで暮らしてたんだ。ソコの空間はここと違って戦いで勢力や地位、富を手にする時代だったんだ。ついでに言っとけばグランツさんとスコルも俺と同じ空間で生まれたって話しだ。」
草羅とカノンは同じ空間出身・・・訳が分からなくなってくる
「その空間に生まれて育ったものは出来心つくころには戦いを教えられると言う精度があった。だから嫌でも戦闘能力はつく、そしてさらに僕達の空間でも今言った「アビリティーカンセル」が良く起きるんだ。で、今僕達がいるこの空間はお前らが育ってきた空間とは別の世界だってことは知ってるよな?実はここはスコルが作った空間なんだ。そしてこの空間は僕が生まれた空間に良く似てる、おそらく僕達の空間がモチーフになっているんだろう、アビリティーカンセルが起きたのがその証拠だ。だからこの状況や仕組み、起こる現象が分かるのさ」
そうか・・・
草羅は僕達の空間出身じゃないのか・・・
僕らが納得している中、一人だけふに落ちなさそうな顔をした人物がいた、名屋だ!!
どうしたの?と僕が聞くと名屋は草羅にこう言った
「じゃぁ・・・小学校らへんのときはお前はいなかったことになる・・・お前・・・まえに田辺と一緒の小学って言ってなかったか?」
「待て待て焦るなよ・・・今するから・・・」
草羅が名屋を落ち着かせるように言った
そして名屋の質問に答える
「それはだな・・・僕のいた空間は『君たちのいる空間』の存在を知っていて『真の世界』と呼んでいたんだ。さっきも言ったとおり僕のいた空間は絶えず争いがあったからその『真の世界』はまさに楽園そのものだった。そして『真の世界』に行く技術が僕の空間にはあった。それが「空間移動」だ。でも突然空間移動してしまうと向こうで矛盾が生じてしまう、だから僕らは政府の許可を得て空間移動と同時に『タイムスリップ』もするんだ。でもタイムスリップはいつでも出来るわけじゃなくて、僕の空間からは100年に一度、10人がこの空間に来れるんだ。」
タイムスリップ・・・そんなこといきなり言われても実感がわかない。
でもまぁなんとなくなら想像がつく
おそらくその10人のうちにカノンやスコルがいて、スコルがこの空間で問題を起こし、それがたまたま草羅のいる学校と一致した
というところか・・・
偶然に偶然が重なりすぎているような気もするが
そこはあまり気にしないでおこう、もう友を疑うのはまっぴらだ!!
草羅の話しを聞き終えた後、僕らは少しの間黙っていた
久杉たちのことはモチロンのこと
草羅のことや、これからどうなるのか、何をすればいいのか
そんなことを考えていたからだ。
ひと時の静かな時間が流れる
でもこの状況においてそんな静かな時間が続くわけも無かった
なんと、また僕らの後ろに黒い穴が現れたのだ。
第五巻〜目覚め〜END
〜編集者後書き〜
今回の作品は、すこし急展開すぎたかもしれませんが仲間が一気に減ってしまいました。
今後、久杉たちとの関係がどうなるかなどもお楽しみください。
次回からは新しい人物が出てくる予定です!