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最終巻 〜時空移動(タイムトラベル)(後編)〜

〜序章〜

体が・・・

透き通るように消えていく

不思議な感覚だ

自分で自分の体がなくなるのが分かる

仲間の声がどんどん近づいてくる

あれから・・・

スコルが来てからロクなことがなかった

暗いことばっかりだった

でも今は久々に暖かく,朗らかな気持ちだ


第1章〜荒口の遺言〜

「津式・・・,津式!!!」

力を吸われて意識が朦朧とする中,その意識の中で声がした

まるで頭に直接声が入ってきているかのようだ

「津式!!津式!!!」

声は僕をずっと呼び続けた

この声には聞き覚えがあった

前まで僕と一緒にいた人物・・・荒口の声だ!!!

「あら・・・ぐち・・・」

僕はささやいた

そしてふと,僕は今までの荒口の数々の行いを思い出した

そして

「荒口!!!!」

今度は憎しみをこめて言葉を放った

荒口は

「落ち着け津式,今までのことは悪かった。でも今はそんな場合じゃないんだ。はやく・・・早くしないと!!!!!!」

と,せかすように言った

しかし僕はそんな荒口を受け付けようとしない

「悪かっただと?そんな簡単な言葉で終わらすな!!!!お前のせいで・・・加賀,草羅・・・名屋・・・みんなが死んだんだぞ!!!!!!俺はお前を許さない!!!!」

荒口は数秒黙った

そして,声を低くさせ,落ち着いていった

「すべてを話そう」

「すべてだと?」

僕はいまだ反発していた

「お前は忘れている・・・俺の能力は透視・・・俺はこれでも一応シャイターン,しかもラストフォートレスの一員だ。未来を見通すことも・・・俺にはできる。しかしこれから先すべてが分かるだけじゃない。というより見られるが分からない・・・。意味がわからねぇだろうな。一から説明するとだな,未来・・・つまり『運命』の道は何本もあるんだ。普通,運命の道は数十本ある。しかもそれは複雑に枝分かれしててどの道を行くかは人それぞれだ。だから一つ一つの道を透視することはできてもその人がどの道に行くかまでは分からないんだ。でもある程度なら分かる。一本の道を選ぶと,それは大抵、数年はまっすぐな道でその後にまた枝分かれする,そのまっすぐな期間だけは俺の透視の能力で見ることができる。お前を裏切ったときはまさにそのときだった。だから『つらい修行をさせて死なないとは思わなかった』なんてことはありえないのさ」

荒口はアバウトではあるが大体のことを教えてくれた

言葉の意味が分からずあんまり理解できていないがなんとなくなら分かった

僕は言った

「つまりは・・・,死んでないと分かっていて・・・僕らを修行から出したのか?」

荒口はうなずいた

「なぜそんなことを?」

「あのまま行けばお前らは確実に死んでいた」

荒口は言った

「じゃぁ・・・僕らを助けたのか?」

僕は恐る恐る聞いた

荒口はまたもやうなずいた

「そ・・・そんな都合のいいこと・・・。でもよ,結果的にこうしてみんな死んでるんだぞ!!!未来が見えるならそれも分かっただろう?どっち道死ぬなら・・・修行の場で死んだほうが良かったじゃないか!!!そうすればスコルの野望もそこまでだったんだし・・・」

僕は焦りながらも確実に芯の通ったことを言った

「あぁ・・・たしかにな,どっちの道でもお前らは死んでいた,修行の場で死んでいればスコルの野望も終わった。でもな,お前らはどうなる?その道を選んだ場合,お前らは死んだままで終わりだ」

僕はわけが分からず首をかしげた

「なら・・・,この道なら・・・俺らは生き返れるのか?」

僕は目を丸くして聞いた

「あぁ,それにまだお前は死んでいない。外から見たらただ気を失ってるだけだ」

荒口は答えた

そしてさらに言う

「津式・・・,お前は・・・未来を変えたいか?」

僕は力づよくうなずいた

すると,いままで声だけだったのが突然映像ビジョンが現れ

荒口はポケットからあるものを取り出した

それは黒いビーダマくらいの大きさの玉だった

「それは?」

僕は聞いた

「消滅の玉だ」

荒口は答えた

「消滅の玉?」

「あぁそうだ。これはバイストの血から作ったもので,術師の体に埋め込むと,術師が力を使ったまさにそのときにこの玉の力が発動して内部から消滅していく仕掛けになっている。これを過去のスコルの体内に埋め込むんだ」

荒口はそういって僕に手渡した

「過去のスコルって・・・どういうことだ?」

「お前は・・・外の世界だと2年前の中学生1年のときにスコルに会ってるんだよ

(ここと外との空間には時差があるらしく,この空間で今まですごしてきた時間は1ヶ月くらいだが外では1年はたっているらしい。故に外では僕はもう3年生で2年前というと1年生ということになる)」

「僕が中学一年生のときに・・・」

僕はつぶやくように言った

荒口は

「お前が中1のときの夏休み,家族や親戚と鎌倉へ旅行に行っただろう?そのとき行った鶴岡八幡宮,15:26のときに鳥居のところですれ違ってるんだよ」

と,僕がスコルと出会った場所を告げた

僕は

「すれ違ったって・・・それだけかよ。それ,会ったって言わなくね?」

と,いった

荒口はそんな僕を無視して続けた

「スコルはかなり抜け目がなくてな,その時しか普段の位置が確認されてないんだ。だからこれからお前はその過去の時代へといってスコルにその玉を埋め込め!!」

「埋め込んだらどうなるんだ?」

僕は聞き返した

「お前勘が悪いな。過去のスコルにこれを埋め込めばスコルが仲間集めするために力を使うときに消滅するということだ。そうすればこの未来はなかったことになり、こんな悲惨な運命をお前はたどらなくて済んだことになる。過去を変えて未来を変えるというのはそういうことだ」

荒口が答え、さらに続ける

「だがお前が過去の時間にいられるのには限度がある。せいぜい3時間、もって3時間半ってとこだな」

僕は『消滅の玉』というものをひたと見据えた

この何の変哲も無いただの玉に僕の未来を変えるほどの力があるとは思えない

が、とりあえず,荒口の話を鵜呑みにしといた。

そして僕は最も聞きたかった質問をした

「過去に行くって事はあの装置をつかってだよね?あの装置はスコルが今陣取っているんだろう?ってことはスコルを倒さなきゃいけない。でも今の僕には力が無い。どうするんだ?」

荒口は少し迷いながらもこういった

「それは・・・心配ない。俺が今もってるすべての力をお前にやる。そうすればお前の炎の力だけでなく俺の透視の能力もつくはずだ。あと,生気もな」

「生気って・・・それじゃ荒口が死・・・・・・」

そういいかけた僕を荒口は止めた

そしてやわらかい笑みを浮かべる

どうやらそれは覚悟のうえらしい

次に、荒口はポケットから手帳のようなものを取り出した

「それは過去に行って時間があったら暇つぶしに書いてあることを読めばいい。今は見るなよ」

そう言い終えると荒口の映像が徐々に薄くなっていった

「そろそろか・・・」

僕はわけが分からず聞いた

「いったい・・・何がそろそろなの?」

「もう時間が無いってことさ,さぁ!!!最後に俺の今持ってるだけの力をお前に注ぐ,準備はいいな」

僕はうなずいた

すると,その時!!!

荒口の体がまばゆい光を放って僕に力がみなぎってきた

「津式,お前らと過ごした日々は短かったけど,結構楽しかったぜ」

そういって荒口は消えた


第2章〜最後の戦い〜

僕は思いまぶたをやっとのことで開いた

そしてムクッと起き上がる

スコルは装置のカプセルの中に入ろうとしていた

(どうやらあのカプセルに入ることでタイムスリップができるらしい)

まだこちらには気付いていないようだ

僕はゆっくりと立ち上がってスコルのほうへと歩いていった

スコルはおぞましいまでの笑みを浮かべて進んでいった

そこでふと,僕の足音に気付く

スコルはバッと振り返った

「やぁスコル君」

僕は言った

「なぜ・・・なぜお前は生きている」

目を丸くしてスコルが言った

「友が,・・・荒口が助けてくれたんだ」

僕はうつむきながら言った

「まさか・・・。カオスか・・・余計なことを,いつかは裏切るだろうと思っていたがよりによってこんなときに・・・」

スコルの表情が一気に強張った

そしてその視線を僕に向ける

「と、いうことは過去に戻って過去の俺を倒そうって魂胆か。一度出会ってるもんな、君とは。俺を倒せるか?」

「無論、僕はそのつもりだよ」

スコルがひそかに笑みを浮かべた

そして

「なら、やってみるがいい!!!!!!!!!!!」

そう言って手に力を集中していった」

そして、指を僕のほうへ向け光を放った

僕の周りを照らしているこの光は、草羅の時と同じ

赤みを帯びた死の光だった

スコルは僕が光につつみこまれて行くのを確認して高らかに笑った

「ハハハハ!!!!もろかったなガキが!!!俺様にたてつこうなど百年早・・・」

言いかけた言葉を飲み込んでスコルはギョッと光の中を見る

「まだ、まだまだだよ、大将さん」

僕は光をくぐりぬけてスコルをにらみつけた

スコルは

「なぜ、なぜだ!!!なぜ死なん!!!俺の力を受けてなぜ立っていられる!!!」

と、絶叫していた

僕はそんなスコルに種明かしした

「お前の力は光で包んだ物の頭を支配して強い思い込みを与えてその通りに敵を操るというものだ。ならば、光を消してやればいい」

「光を、消す?そんなことどうやったら・・・」

スコルはまだ破られたことのないであろう自分の術を破られて混乱しているようだ

「光を消す、というよりは光を同化させる、と言ったほうが近いかな?俺はお前が力を使う瞬間、俺の周りに炎の壁を作った。そして、炎の「威力」ではなく、「明るさ」を増幅させたのさ、光は闇があるからこそ生まれる。闇を消せばおのずと光も消えていってしまう」

「な・・・・な・・・」

スコルは絶句していた

「光ですべてを包み込もうなんて、到底無理なことさ」

スコルはなおも硬直していた

しかしふと我に返ると

「あぁあぁ!!!ったく、破られちまったよ・・・、まぁしゃぁないか。どうやらお前は、眼の色を見る限り透視の能力を使っているようだ。カオスから力でも分けてもらったのか?そうだろうな。じゃなきゃお前みたいなガキに手間取るわけもない。久しぶりに俺も全力で行こうかな?」

と、本気の戦闘を覚悟した顔で言った

「僕は最初からそのつもりだっ・・・」

と、その時!!!スコルの体がまばゆい光を放った!!!!

僕はスコルの体を直視できずに、とりあえず自分の周りに炎の壁を作った

いったい何が起きているんだ?

今までの光の量とは比べ物にならない大きさの光だ!!!

数分間その輝きは続いた

この間、僕は完全に目を閉じていた

ここで攻撃されたら一巻の終わりだ

けれども幸い、攻撃されることはなかった

数分後、光が徐々に消えてきた

僕はやっとのことで眼を開いた

するとそこには、豹変したスコルの体があった

体中の筋肉は膨れ上がり、目は真っ赤に血走って体のあちこちから刃のようなものが飛び出している。

その姿はもはや人ではなかった・・・まさに怪物

僕がその姿に呆気にとられている中スコルが言った

「この思い込みの力はなにも敵だけにするものじゃない。自分に強くなるという思い込みをさせれば体もその姿となる」

僕は

「ごっつくなりやがって・・・」

と、呟いた

それが聞こえたのか聞こえてないのか

スコルは突如として鋭い眼光を僕に向け

ウォォォォォと、叫んだ

声からしても人間とは思えない

「行くぞォォオオオオ」

スコルが叫んでものすごいスピードで突っ込んできた

僕も覚悟を決めてこぶしを握りしめそのこぶしに炎の力を集中させた

いよいよ戦闘開始だ!!!!!


第3章〜VSスコル〜

スコルの頭に生えた角のようになっている刃と

僕の炎を宿らせた拳がすさまじい音を立ててぶつかった

お互いに「力」は互角だった

二人ともピクリとも動かない

しかし「持久力」では相手のが上だ。

このままではいずれ僕がくし刺しにされてしまう

この状況を脱するべく、僕は透視の能力を使って力の入れ方を少し右にずらした

すると角がものすごいスピードで僕の右手を滑るように後ろのほうへと飛んで行った

コンクリートの壁にスコルの巨体がぶつかる

コンクリートの壁はまるでプリンのようにあっという間に砕けた

スコルはコンクリートの壁を何枚も何枚も突き破って

フェンスのところでようやく止まった。

スコルが僕をカッと睨む

僕は多少その眼に恐怖したがすぐに我に返って目の前の敵に集中した

スコルが今度は体を回転させて突き出ている刃で僕を切り刻もうとしてきた

あれをまともに食らったら生きていられる保証はない!!!!

止めるにしても触れた瞬間に炎ごと手が切られてしまう!!!

ならば!!!

と、僕は10本の指を突き出し

その指に細く鋭い炎を集中させた

そして一気にその力を解放する・・・

10本の炎のビームがスコルの体めがけて一直線に走った

それに気づいたスコルが体をよじって回避しようとした

しかし、光と同じ速度の炎のビームだ

それも10本も来てはすべてをかわせるはずがない!!!

僕は勝利とはまではいかないものの、大打撃を負わせられることを確信した

しかしあろうことかスコルは回転をやめ、両手に力を込めだした!!!

そしてスコルの両手が光を放つ

すると、その光を浴びた途端

もう少しでスコルに当たるといところで炎のビームが消えた!!!

僕は驚きを隠せずに数秒棒立ちになってしまった

その瞬間を逃さずにスコルが僕に突っ込んできた

僕はとっさに手を前に出し、炎を出そうとした

しかし

「遅いわぁ!!!!」

と、スコルが叫んで

その声が耳に届いたかと思うと突然脇腹に激痛を感じた

みると、脇腹にスコルの手のひらから突き出した刃が深々と刺さっていた

スコルは

「流石、歴戦重ねてきて透視の能力ももったやつだな。ど真ん中貫いてやろうと思ったら咄嗟に少し左によけやがったわ。でも、まぁ、かわしきれる攻撃じゃぁなかったな」

そう言ってスコルが手を引いた

それと同時に大量の血がしぶきを上げた

僕は床に崩れ落ちた

そしてスコルを見上げる

それを見たスコルは

「お?『なんでビームが消えたんだ?』とでもいいたそうな顔だな。いいさ、最後だもんな、言ってやるよ。お前もわかっている通り、俺の力は俺の体から出される光を見たやつに思い込みをさせるという力だ」

まさか!!!

と思い僕は目を丸くした

「おっ、感づいたみたいだな。そう、俺の手が光ったのももちろん思い込みの力の光、それを見たお前の脳はこう命令したんだよ。炎のビームを消せ、ってな」

僕はかおをゆがめて、スコルを睨んだ

「おぉ怖ぇ。そんな顔しなさんな」

ふざけたスコルの口調に僕はさらに怒りを隠しきれずに声を出そうとした。

しかし声を出そうとすると脇腹に激痛が走ったのでやめた

かわりにもっともっと睨みつけてやった

スコルは笑いながら

「さぁ、おしゃべりはここまで。そろそろとどめを刺してやろうではないか。自分の技で死ぬがいい」

そう言ってスコルは10本の指に力を集中させた

僕は透視の能力でどういった技を出そうとしているのか即座に分かったが信じられなかった。

スコルが出そうとしている技、「炎のビーム」だ


第4章〜 覚醒…そして決着― 〜

スコルの指が光りだす

そこには間違いなく炎のビームの力が宿っていた

まさに絶体絶命・・・

僕は目をそっと閉じて心を落ち着かせた

この状況だ、落ち着かせるなんて無理がある

しかし、死という大きな屈辱を受け入れるにはそれ相応の心のゆとりがいる

徐々に光が強くなってきた

そして!!!

「あばよ」

冷やかにはなったスコルの言葉と同時に僕の体を炎のビームが貫いた

衝撃で僕の体は一瞬宙に浮いた

そして頭からゆっくりと地面に触れていき

仰向けの体制で床に寝そべった

スコルはそれを確認するときびすを返してカプセルへと向かって行った

僕を倒したことに喜びもせず憐れむこともしない

最初から僕を倒すのが当たり前だったかの様に乱れない歩調で歩いて行った

しかしその歩調もつかの間、その歩みは突然ストップした

「甘いよ、スコル・・・。俺がやられる幻覚でも見たか?」

スコルは自分の喉元に炎の刃を確認して目を丸く見開いた

「おい、・・・これはどういう・・・」

どうやら驚きを隠せないようだ

それはそうだ、ほんの数秒前に自分が殺した相手に今度はその自分が死の選択を強いられているのだから

僕は得意げに

「透視の能力を持つやつが自分の技でやられると思うか?自分の技なんてもう完全に見切ってるんだ」

と、言葉を浴びせた

スコルはまだ驚いた様子でひたすら体をこわばらせていた

言葉を発せる状態じゃないと思って僕は話を続けた

「炎のビームは貫通力、つまりたての衝撃にはこの上なく強い。でも横の衝撃にはめっぽう弱くてね、それがたった一つの弱点なんだ。真正面から俺の力をぶつけたんじゃ全く意味がない。でも横から俺も炎のビームを発動させれば破ることなんて容易なことさ」

「それが・・・・わかって・・・・いた・・・として・・・・も、あの距離だ・・・・。あんな・・・一瞬でそんな・・・・・・・こと、できる・・・・わけが・・ない!!!」

スコルが、言葉途切れ途切れに言った

「それもそうなんだが、出来ちゃったものはしょうがない。俺も実は結構驚いててね」

僕は笑いながら言った

「そんなこと・・・・、そんなことで・・・、殺されて・・・たまるかぁぁぁぁぁ!!!」

スコルが威勢よく怒鳴って僕の手を振りほどいた

「はぁ!!おどろいたよ、まだそんな力が残ってたなんて」

上がり調子で言う僕の言葉を聞いてスコルがまた声を荒げた

「俺は・・・絶対に勝つんだ!!!!!」

スコルがまた思い込みの力の光を放った

僕はその光のすべてを炎で包み込み、一瞬で消してやった

スコルがまたしても目を丸くする

「残念だけどスコル、どうやら君はもう僕には勝てないようだよ」

僕は今までのスコルのように笑いながら言った

「な・・・な・・・」

スコルは絶望した顔で絶句した

僕は

「どうだい、スコル、殺される側の気分はさ。今までお前が他人に与えてきた恐怖が少しはわかったか?」

と、言った

それを聞いたスコルは「うるさい、うるさい」と何度か言った後に

「おれは・・・俺は・・・殺されない。俺は常に殺す側なんだよ!!!!」

と、今までで一番強力と思われる光を放った

僕は目をかっと見開き

全身に最高の密度の炎を張り巡らせた

そしてあたり一面の光を包み込んで同化していく・・・

そして、一気に包み込んだ光を受け流してカッ消す!!!!!!!

あたりはまた一面の闇に戻った

そして僕はスコルに飛びつき炎の刃でスコルの腹を焼き切った!!!!

最高の高温で焼き切った腹からは血も蒸発して飛び散らない

ただただ赤い不気味な蒸気が立ちのぼった

スコルの目が白目をむき始める

「お前…なぜ・・・そんな力を・・・」

風前のともしびの命のスコルが力を振り絞っていった

ぼくは

「一回死を見た人間が、天才的な力を持つといった事例はいくつかあるようだよ。それをあえて言うなら『覚醒』・・・かな?」

と、言った

「覚醒・・・俺には一生無理そうだな・・・」

それが最後のスコルの言葉だった

それを言い終えるとすぐに床にドサッと、崩れ落ちた

僕は開放していた力をスッと体の奥底に戻した

そして一回深呼吸する

とりあえず最も倒さなければならない相手、スコルを下した

この場にみんながいたらどういう反応をしただろうか?

飛び上がって喜んだろうか、それとも今までのことを思い出し涙を流しただろうか

なんにせよ、倒したことには大いなる喜びを感じていただろう

でも今の僕は違った

一番倒したかったはずの敵を倒したのに・・・

何かやりきれない気持ちが残った

この感情はいったい何なのだろう

喜びでないことは確かだ、しかし、当然悲しみもない

「僕は・・・」

何を言おうとしたわけじゃなかったが口から言葉がこぼれた・・・

僕は空を見上げてもう一度深く深呼吸した

「よし!!」

自分に喝をいれて僕はカプセルへと向かった

コクーンの形をしたカプセルを前に僕は一度立ち止まってあたりを見渡した

ほとんど死体しかないがこの時代での最後の景色となるものだ

僕はしっかりその光景を目に焼き付けた

そして・・・カプセルの中へと僕は入った・・・・・・・


第5章〜タイムトラベル〜

「ここは・・・どこだ?」

はっきりとしない意識の中で僕は思った

電車の音、クーラーの音、うるさい女子高生や他の人間の話声・・・

どうやら僕は電車の中にいるようだ

だんだん意識がはっきりしてきた

僕は電車の最後尾の車両に乗っていた

あたりを見渡すと、そこには平凡な日常の流れがうかがえた

(最も、僕ただ一人はその時間の流れに逆らっているが・・・)

≪え〜、次は鎌倉、鎌倉〜お降りの際は忘れものにご注意ください。お出口は右側です≫

車内アナウンスが流れた

僕は慌てて立ち上がり、車窓前に立った

プシュー

ドアが開いた

僕はほかの乗客と一緒になって鎌倉で下車した

どうやらちゃんとタイムトラベルできたようだ

それにしてもなんか変な気分だ

自分はちゃんとここにいるのにいる感じがしない

いてはいけない時間に無理やり入っているんだからしょうがないが本当に変な気分だ

ホームから出て僕は鶴岡八幡宮行きのバスに乗り込んだ

そして、鶴岡八幡宮の大きな鳥居の前に到着した

僕はバスから降りて鳥居のよこで立ち止まった

(ここならそのうちスコルも通るだろう)

ところがあと少しで時間だというのにスコルが現れる気配は一向にしなかった

(本当にここに来るのか?)

そう疑問を抱くようになった

僕は実際にここに来た時の自分の行動を思い返してみた

けれど、これといって思い当たる節はなかった

僕は鳥居からつながる本堂へと向かう大きな道の前に立った

何となく眺めていただけだが咄嗟に思ったことがあった

(待てよ、すれ違った時にこの消滅の玉を埋め込むのであればそれなりに近い距離であるということだ。この大きな道でそんな距離ですれ違うなんてまずないんじゃないか?)

その時、僕は僕自身の記憶の断片を見た

そこには古い銅像や絵画、彫刻などがずらりと並んでいた

まるで・・・

・・・・・・・

僕ははっとなった

そうだ!!!そういえば!!!

まずい、もう時間がない、間に合ってくれ!!!

僕はそんな気持ちを抱きながらおもむろに走り出した

そして大きな道を登って行ってわき道にそれる

確か・・・確かこの辺に!!!!

道のわきにたくさん生えている木々をかき分けて向かった先

それは・・・  美術館

そう、僕は家族とここに来た時に本堂近くで

「光と音の美術展」

という看板を見てそこに行ったのだ

15:26と言ったらそこにいたはずだ

僕は昔の僕を美術館で探しまわった

そして、とうとう見つけた!!!

2年前の僕、家族と楽しげに笑って美術品を楽しむ僕

それを見ているとなぜだか目から水のしぶきが流れ出てきた

「あれ、おかしいな・・・・。なんで、涙が・・・なんでおれ、泣いてるんだよ」

そう呟いた 

止めようとしても次々とあふれ出てくる

今、僕の目の前にある光景

もう二度と僕が手にすることのできない幸せ

その光景に僕はほっとしたのかもしれない


最終章〜完結〜

僕はその光景を眺めながらもスコルの姿を探した

そして!!!時は来た・・・

15:26−

美術館の時計がその時を刻んだ

僕はちょうど次の美術品を見るのに並んでいるところだった

そして美術展を見終わって出てきた人物

間違いない!!!スコルだ!!!!

僕は一瞬で前に出てスコルの腕をつかんだ

スコルがそれに気づいて怪訝な顔をする

僕はそんなことお構いなしに炎でスコルの腕の皮を焼き切って穴を作り消滅の玉を埋め込む。そして周りの肉を溶かして接着する

これだけの動作を一瞬でこなした

僕も成長したようだ。一瞬の激痛にスコルは「うっ」とうめいたが、僕から勢いよく腕を離す

なんだこのガキ

とでもいいたそうな顔をしてスコルは立ち去って行った

僕もここに長居すると家族に気づかれかねない。

僕もまた、一瞬にしてその場から立ち去った


それから1時間後、僕は自分の家に戻ってきていた

やっぱり最期を迎えるのであれば自分の家がいい

(時間が過ぎるとどうなるかは荒口も言わなかったがおそらく消滅してなくなるのであろう)

僕はこっそりと家にはいって自分の部屋にはいった

「もうここにも来れないんだな・・・」

時は5時ちょっと、外もそろそろ薄暗くなってきた

僕はポケットに手を突っ込んで荒口から渡された手帳を取り出した

そしてパラパラとめくる

するとそこには、今までの僕の体験したこととこれから起こるであろうことが書かれていた

僕はとりあえずそれを最初から読み始めた

まず、スコルたちがここに突然やってきたこと

それから殺しあいの宣言、スローターやオウディウスになった僕たちの友

幾人もの友達との出会い、そして共闘、さろに友の死―

思いがけない裏切り

敵の渦中に呑まれた友

シャイターンの存在、そして激戦

シャイターンだったと言われた友

そしてスコルとの激戦に勝利

そしてタイムトラベル、それから・・・

これから起こること

自分の消滅・・・・・・

いろんなことが深く、みんなの感情や行動が深く、鮮明に描かれていた

こう読んでみるとかなり波乱万丈な人生だったといえる

というか、これ以上のものはないだろう

ここで僕は自分の足が消えかけていることに気付いた

「そろそろか・・・」

僕は手帳をそっと横に置いて自分の最後に浸った

まどから外の景色を眺める

とうとうこの世界ともお別れなのだ

最後に自分の家に帰ってこれてよかった

ただいまとは言えなかったけど・・・

それでもうれしい

どんどん消えていく部分が上に来てとうとうのど元まで来た

足などの感覚はとうにない

死んでいっているのになぜか僕はとても明るく、気持ちのいい気分だった

死んでいった仲間の声が近付いてくる

「津式!!!津式!!!!」

みんなが僕の名前をコールしてくれている

あの世へと迎え入れてくれているのだろうか?

どんどん、どんどん声が近付いていって・・・・

僕は・・・消えた。





最終巻〜時空移動タイムトラベル(後編)〜 END


ついにネバービリーブも完結です。

編集者として、最後読んでてちょっと涙が・・・(笑

いやー

もう編集が出来ないんですね〜

面倒くさかったけど、なかなか楽しい作業でしたよ。

エピローグも出しますので、その際には、作者さまの感想もお聞きしたいと思います。

今までご愛読してくださった皆様、本当にありがとうございました!!

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