第九巻 〜修行(後編)〜
〜序章〜
鋭い熱・・・
力の応用・・・
近距離攻撃・・・
遠距離攻撃・・・
すべてをバランスよくもつものだけが真の強さを手に入れられる
僕も、それに少しずつでも近づいていきたい
第1章〜力の応用〜
大蠍との死闘を潜り抜けた僕の疲労はすでにピークだった
一体ここに来てから何時間たったのだろう
そろそろ12時間くらい経つ気がする
そしたらセーブエリアで20分間ゆっくり休めるのに・・・
僕はため息をついた
全部で5日分くらいある修行時間の中で半日も経ってないのにこんなにしんどいなんて・・・
先が思いやられる・・・
僕は暗い気分になった
でも今からそんな気分になっていたらこの先やっていけない!!
僕は無理やり暗い気分を振り払い
『力の応用』
について考えることにした
力の応用とはその名の通り力を応用してさらに強力な力とすることだと前に荒口が言っていた
ヒーストの場合、『吸収』の力を応用して『吐き出す』という強力なものに変えた
バイストも『消滅』の力を血に流すことで体の何処を触っても敵が消滅するという力の応用をした
僕の場合は『鋭い熱』だが、これは応用というよりも基本戦術に近い気がする
力を手のひらの一点に集中させていき、一気に相手に押し当てる
これも応用といえば応用なのだろうが、バイストやヒーストのそれとは何か感じが違う気がする
一体力の応用とはなんなのだろう?
そして僕のこの『熱量増加』の力はどのように応用してどのような力にすればいいのだろう?
見当もつかないが考える価値はありそうだ
そんなことを考えていると僕の真下の地面が緑色に変色してきた
『やっとか』
と、僕は肩を落とし、地面に這い蹲るようにして寝た
一瞬の静寂
ひと時の休息にどっぷりとつかりながら寝た
こうして僕の最初の12時間が終わった
第2章〜VSオオワシ〜
少し熱くなってきた
そろそろセーブエリアがある20分間が終わるのだろう
僕はムクッと、起き上がった
どうやらセーブエリアで休んでいると体の傷や体力が回復するらしい
さっきまでよたよただった足取りが今はしっかりしている
セーブエリアが消えた
と、同時に僕は『熱量増加の』力を発動した
またあの地獄の12時間が始まるのかと思うとホントに嫌になってくる
5時間半がすぎた
どうやら火山の噴火はこの辺りの時間帯から始まるらしい
この時間をすぎるとやたら火山が火を吹くし、火山灰や石も飛んでくる
流石にそうなってくると力を発動させていてもそこそこの暑さは感じる
石や火山灰はどうにかなるものの、問題は溶岩だ
溶岩が来てはもう避けるしかない!!
この12時間はさっきのような大蠍のような化け物は出てこなかった
ただ疲れることに変わりはない
暑さのせいで頭がおかしくなりそうなこともたびたびあった
もう立っていられなくなり地面に倒れてはまた起き上がりの繰り返し
こんな事やっていたら気がおかしくなりそうだ
ただその後のセーブエリアはまさに天国だった
疲れはどんどん抜けていくし傷は消えていく
これほど幸せな時間は無いだろうとまで思った
そして2度目の12時間も無事終わった
つぎの3度目の12時間もさっき同様
5時間半くらいをすぎると山々噴火してきた
でもさっきと違う点があった
敵が現れたのだ!!!!!!!!
今度の敵は空から現れた!!!!!
オオワシのような風貌をしているが、体全体が赤く燃えていて鍵爪も相当な熱を帯びているらしく降りかかった火山灰が一瞬にして溶けていく
あれを食らったらただじゃすまないだろう
僕はそいつをみて思った
こいつは相当強い!!大蠍とは別の強さを持ったやつだと
本能で感じた、オオワシの姿と目を見れば分かる
誇り高き精神を感じる
だが・・・倒さなければならない、越えなければならない壁だ!!!
オオワシが高々と啼いた
そしてものすごいスピードで僕の方に向かってきた!!
僕はそれをやっとのことで交わした
しかしオオワシはすぐに方向転換してきて爪を僕に向けてきた
僕は咄嗟にかがんだ!!しかし運悪く背中をかすめた
「ギャァァァァ」
僕は思わず叫んだ!!
かすっただけなのになんて威力なんだ!!!!!!!
僕は地面に足を突いた一度体制を整えなければ!!
しかしオオワシはそんな暇を与えてはくれなかった
なんとオオワシは口から火の玉を吐いたのだ!!!
僕はそれをもろに食らった!!
ドサッと倒れる
『なんだいまのは?なんでオオワシがあんな攻撃が出来る!!!』
第3章〜地の利〜
オオワシはさらに僕に畳み掛けた!!
火の玉を吐きつつその鍵爪で攻撃を仕掛けてくる
僕はされるがまま、やられるがままだった
抵抗なんて出来ない、する暇を与えてはくれない
オオワシの猛攻撃の中、僕を苦しめたのは火山灰だった
叫ぶたび、息を吸い込むたびに口に入ってくる
飲み込もうものなら内側から肺が焼かれる
目にも入って目の前をさらに暗闇にしてくる
ただでさえオオワシの攻撃で意識が朦朧としているのにこれではどうしようもない
薄れていく意識、体に蓄積されていくダメージ
そうか、これか、スピードで翻弄しながら抵抗の隙を与えずいっきに倒す
これがオオワシの強さか・・・
このスピードじゃぁ『鋭い熱』を食らわせることは出来ない
意識が完全に落ちようとしている中、僕はある作戦を思いついた
こうすればオオワシを倒せるかもしれない
しかし自分もダメージは相当ある
逃げ切れればいいが・・・
それに確立はごくわずか、オオワシが動いていては絶対に無理だ
一瞬だけ、一瞬でいい、オオワシを止める方法は無いか?
僕は周りを見た、そしてオオワシの隙をさがす
これだこれならいける!!!!
オオワシは方向転換するときに一瞬隙が出来る
そのときに火山灰を投げ当てればもっと大きな隙が出来る!!
僕は火山灰を手で強く握り締めた
『絶対に当てる、当てるんだ!!』
そう意気込んでオオワシが方向転換するのを待った
オオワシが僕に突っ込んできた
僕はそれを躱す
オオワシが方向転換してこちらに戻ろうとしてきた
「今だ!!!!!!!!」
僕は叫んでオオワシめがけて火山灰の塊を思いっきりオオワシに投げつけた
オオワシが苦しそうに叫ぶ!!
それと同時に僕は多くの火山灰を上へと向かって投げた
撒かれた火山灰の中央にはオオワシがいる
上空に舞い上がった火山灰は降ってきている火山灰と合わせるとものすごい数になった
そしてその火山灰の一つめがけて『鋭い熱』を使った
火山灰に火がついた
僕は慌ててその場から遠く離れた場所に走った
火のついた火山灰から別の火山灰へ、そしてそれからさらに別の火山灰へ
それが四方八方で行われた
中央にいるオオワシが目を見開くのが見て取れた
と、次の瞬間!!!火のついた火山灰がいっきに爆発した!!!
あまりの爆風に僕まで吹っ飛ばされた
ここにいてもそれだけの衝撃を受けるんだ
中心にいたオオワシはひとたまりもないだろう
爆発は10秒間くらい続いた
そして爆発がやんだ
爆煙がたちこめる、黙々と上空に上がっていく
僕はほっと一息ついた
僕の思いついた作戦、それは
「粉塵爆発」
可燃性のある粉塵が周囲に充満していて尚且つ、粉塵と粉塵が重なり合っていないと出来ないこの作戦はまさに賭けだった
もしかしたら粉塵の層からオオワシが逃げていたかもしれない
上手く充満していなくて爆発していなかったかもしれない
爆発しても自分が巻き込まれて死んでいたかもしれない
いろんな不安要素はあったけどやって損はないと思った
現に結果オーライだった
爆煙が晴れてきた
案の定、中央には丸コゲになったオオワシがいた
僕は本当に疲れ果てた。大蠍のときよりも体力を使った気がする
というか、頭を使った気がする
今回は頭脳で勝ったって感じだ
意外とこの戦いは早くけりがついた
だから疲れててもなかなかセーブエリアが現れずに本当にしんどかった
でも得るものはあった
徹底的にすばやく相手を倒す
そして地の利を生かした戦術
これを今日の戦いで知った
今回の戦いはそれなりに意味のあるものだったらしい
それから1時間か2時間後、やっとセーブエリアが現れた
僕はそこでゆっくり休んだ
第4章〜悪魔の溶岩〜
セーブエリアでゆっくりした後
また僕は12時間の耐え難い時間を送っている
この暑さにもそろそろ慣れてきたが限界が近いのも確かだ
セーブエリアに入っても少しダメージが残るようになってきた
しかもなんだか今度の12時間は他のと少し違っていた
5時間半くらいたっても全然山が噴火したりしないのだ
少し不安も覚えつつ僕はとりあえず修行に専念した
まず『鋭い熱』を打つ練習
その辺にある石に向かって『鋭い熱』をつかって砕いていく
自分で時間を計って決められた時間に何個正確に砕けるか
正確さと速さが求められる修行だ
それを3時間くらいやったときことは起こった
なんと、それまでなんでもなかった山々が突然噴火したのだ!!
僕は呆気にとられ呆然と立ち尽くした
しかし目に入ったあるものを見て我に返った
流れ出す溶岩だ!!
一気に噴火したため溶岩のスピードも大きさも今までのものとはダンチだった
あれをまともに食らったら間違いなく死ぬ
僕は逃げて逃げて逃げまくった
体に当たる石も、たまにであったここに住んでいるらしい生き物たちも、すべてを無視して一目散に逃げた
そんな僕を見てか生き物たちも駆け出した
中には大蠍もいたが今回ばかりは相手をしていられない
とりあえず今は走るのだ!!!
しかし、人の走るスピードでは溶岩の早さにはかなわなかった
徐々に僕と溶岩との差が縮まっていく
僕はふと、鹿のような生物に目が行った
あの生き物に乗れれば!!!
僕は鹿の方へと駆け出したそしてえいや!と鹿にまたがった
鹿は驚いて僕を振り落とそうとしたが僕も必死だ
絶対に落ちるもんかと鹿の首元を思いっきり掴んだ
すると鹿は喚き散らして全速力で駆け出した
『良し、これなら逃げ切れる』
僕は確信した
しかし甘かった
なんと前から横から・・・
四方八方から溶岩が流れてくるのだ!!
どうやらここは土地が低いらしく溶岩が皆集まってくる
しかも鹿が飛びのきがむしゃらに暴れまわった
僕はとうとう振り落とされてしまった!
僕は体を地面に打ちつけ『うっ』となった
でもそんなことしている余裕なんて何処にもない
僕は体を思いっきりひっぱたき体を起こした
周りを見ると溶岩がもうすぐそこまで迫ってきていた
まわりで生き物達が飲まれていく音がする
泣き叫ぶ生き物の鳴き声、飲みこまれていくグシャグシャという嫌な音、走り回る生き物の足音
すべてが僕に恐怖を押し付けた
頭がおかしくなりそうだ!!!!
後ほんの数百メートルで溶岩が僕を飲む
逃げ場もない
僕は
『これで終わりか』とあきらめた
僕は修行中に死亡というかっこ悪い死に方をするのだ
第九巻〜修行(後編)〜 END
本日2話目の投稿です。1ヶ月休んだ分をがんばって取り戻していきますのでよろしくお願いいたします。
さて、ついに津式くんが大ピンチに!
このあと、津式くんはどうなってしまうのでしょうか!
普通の小説なら助かるところですが、この小説では何人も死んでいるし、裏切っているので、何が起こるか分かりません!!
次回、ご期待ください!