第九巻 〜修行(前編)〜
〜序章〜
激しく噴火する山々
燃え盛る炎
流れ出す溶岩
吹き荒れる熱風
こんなところでどう生き抜けばいいんだ?
人が・・・いや
生き物が生きていける環境ではない!!
第1章〜修行の場へ〜
今、空間の穴の中に僕はいる
皆は今どうしているだろう
見当もつかない
でも確かなことが一つある
皆今の僕と同じように修行の場へとすさまじいスピードで真っ逆さまに落ちていってるはずだ!!
空間の穴はとても長くてかれこれもう5〜10分くらいは落ちているだろう
これだけ落ちていると体も慣れてくる
と、僕はふと下を見た
するとある場所から向こうは黒い壁が赤く染まっている
僕は何かと思った
修行の場へと近づいているのか?
僕は黒い穴から赤い穴へと落ちていった
するとなんと!!!
そこは灼熱地獄で下手をしたら体が丸コゲになってしまいそうな感じだった!!
『熱い!!熱い!!』
気が狂ってしまいそうなほどの気温だ!!
『熱い!!熱い!!』
『もうだめだ〜!!!!!!!』
そう思った瞬間、僕はバンッと地面にぶつかった
『やっと着いたのか・・・』
僕は体を起こしてあたりを見渡した
するとソコには驚くべき世界が広がっていた!!!!!
なんとまさにソコは炎の世界で黒煙が黙々と立ち上り、山々が轟々と音を立てて噴火していた
「うそだろ」
僕は思わずつぶやいた
『こんなところでどうやって過ごしていくんだよ』
そう思った
しかし、僕は妙なことに気づいた
『何でここは熱くないんだ?』
そうである
周りは悲惨なまでに空も地面も真っ赤に染まっていていかにも
『灼熱地獄』
という感じなのに僕がいるこの場所では全くといっていいほど熱さを感じないのだ
僕はふと下を見た
するとなぜか僕が立っているこの3畳くらいのスペースだけ地面が緑色だった
僕は状況がつかめず頭をかしげた
するとソコに荒口のアナウンスが入った
(何処から音が出ているのだろう)
「津式!!そこは火の世界、「ファイヤーワールド」だ。そこの気温は約500度!!普通の人間が生きていける環境じゃない。しかしお前の熱量増加の力を使えば生きていける。お前の熱量増加の力は発動していればどんな状況でも体温を一定に保てる。だから熱量増加の力を発動させ続ければ周りの気温は感じない!!しかし物に触れれば別だぞ!!気温は感じなくてもソコにある岩や溶岩に触れればその物の温度は感じるから気をつけな。そしてお前がいるそのスペースは「セーブゾーン」だ!!そのスペースにいれば力を使わなくても回りの暑さは感じないし、おまけに物に触れてもその熱も感じない。いわばソコはこの環境の中の安全地帯だな。そのスペースは12時間おきに現れては20分後にまた消える、その繰り返しだ。だからお前は嫌でも12時間は力を解放し続けなければならない。よってこの世界にいれば『力の持続力』が養われる。そして耐えるだけじゃなく流れてくる溶岩や振ってくる石や火山灰なんかからも身を守らないとだから力のコントロールや力の持ってる真の力も使えるようになるだろう、頑張って生き残れよ!!!!!!!!!!!」
そういって荒口の声が無くなった
僕は『これから色々大変そうだな』
と心の奥底から思った
第2章〜修行開始〜
セーブエリアがある20分間、僕は体を休めた。
地面に激突した衝撃と落ちてくるときの熱でそこそこの傷を負ったからだ
僕はとりあえず傷につばを塗っておいた
こうすると傷の治りが早いと親に教えてもらったことがある
効果があるかどうかは分からないが気休めにはなるし傷を気にしなくてすむ
僕は物思いに耽った
ここまでくるのにいろんなことがあった
どれもこれもそれまでの人生とは大きく違うことばかりだった
喧嘩(戦い)一つとってもスケールが違う
誰かの下につくとかいうのでも忠誠心というものが感じられる
僕達が生半可な気持ちでやっていることなんて『お遊び』に過ぎないが、ここではその生半可な気持ちが命取りになる
僕は改めて、今いる現実と平凡だった過去の違いを感じた
その時だった
徐々にセーブエリアの緑の地面が普通の地面の色に変わってきた
「よしっ!!!!!」
と、僕は自分に渇を入れて『熱量増加』の力を発動した
いよいよ修行開始だ!!!!!!!
12時間の最初の2時間くらいは何も起きなかった
ただ、ずっと立っていなければいけないのと力を発動し続けなければならないのとで結構疲れた
3〜4時間後くらいになると立っているだけでもつらくなってきた
5時間後にもなると足が震えだしてきて力の発動に集中できなくなってきた
そして5時間30分後、周囲の山々が噴火し始めた!!!!
流れ出した溶岩がこちらにぐいぐい迫ってくる!!!!!!!!
『まずい!!このままだと溶岩に飲まれてしまう!!』
僕は必死で逃げた
足が疲労で思うように進まない
だが進むしかない
息が切れてきた、だが周囲の気温が高すぎて一気に空気を吸い込むと肺が炎症を起こし咳き込んだり、むせたりする
そんな息もまともに出来ない状態の中、僕は走り続けた
ふと、横を見ると大きな洞窟のようなものがあった
僕は何も考えずに一目散に洞窟の中へと入っていた
『はぁ・・・これで溶岩からは逃げ切れた』
僕はここで一息入れた
(洞窟の中といえど気温が気温なので座ることは出来ない)
一体何分くらい溶岩から逃げていたのだろうか
想像もできないほど長く感じる
こんな足の状態では1キロ歩くのでも1時間はかかってしまうだろう
『もうこんな修行うんざりだ』
僕は心のソコから思った
こんな修行しても死んでしまったら意味ないしここで生き残れという方が無理だ!!
だがここから出る手段など無いし、皆も強くなろうと必死に修行しているに違いない!!!だから僕だけがこんなところで諦める訳にはいかない
僕はこの修行に専念しようと心に誓った
そしてひとしきり休んだ後、僕は洞窟から出た
『何でも来い!!なんにでも打ち勝ってやる』
そういう気持ちだった
第3章〜VS大蠍〜
すると地面がゴゴゴゴゴと音を立ててゆれ始めた
『火山がこれだけあれば大きな地震が起きるのは当たり前のことだ』
そう思ってこのゆれのことは気にしないようにした
しかし、気にせずにはいられなかった
ゆれ方が普通の地震とどこか違うのだ!!!
僕は自信で感じた「普通の地震」と違う点を必死に探した
心を落ち着かせてゆれに集中し、何か危険が起きてもサッとかわせるように・・・
と、僕はピンと来た!!!間違いない!!!!!!このゆれは僕に近づいてくるように大きくなっている!!!!!!
僕は足の裏ですこし地面が盛り上がるのを感じた
僕は咄嗟に後ろ方向に思いっきりジャンプした!!!!
すると僕のいた地面から何かがものすごいスピードで出てきた
何か生き物のようだ!!
尻尾の先にはドデカイドリル、体はまるで蠍のようだ
体の表面は真っ赤に燃え上がり、とても太く強靭そうな足
その風貌に僕はつばを飲んだ
こんどはこいつと戦わなければならないと心で分かったからだ
しばらくにらみ合った
そして僕は僕の体の数十倍はあろうかという巨体にむかって走り出した!!
大蠍もグゥゥゥとうなって僕に近づいてくる
大蠍が巨大なドリルのついた尻尾を僕に向かって振り下ろした
僕はそれをひらりとかわして大蠍の懐へと一気に攻めた
そして僕の熱量増加の力を手のひらに集中するイメージをして思いっきり大蠍に押し当てた
『決まった』
僕はそう思った
しかしダメージを受けたのは僕の方だった
大蠍の体に触れた瞬間、僕の手の方が真っ赤に燃え始めたのだ!!!
僕は慌てて大蠍から手を離し、距離をとった
僕は自分の手のひらを見た、酷い火傷だ
薄い皮膚は完全に溶けてしまって手のひらの中心の肉があらわになっている
モチロン痛みも半端じゃない!!
痛くて痛くて手の震えが止まらない!!!
だが今はそんな悠長なことはいってられない
目の前には無傷の大蠍がいるのだから!!!!
僕は大蠍に向き直った
そいて倒す方法を必死に考えた
考えている間にも大蠍は何度も何度も攻撃してきた
だが幸い、大蠍はその巨体ゆえにすばやい攻撃は出来ない
威力は一発一発、それはもの凄いものがあるがスピードがないので避けるのはいたって簡単だ
当たらないようにさえ注意しとけばあまり脅威ではない
考える余裕もある
僕はさっきは何で僕の熱量増加の力が押し負けたのか考えた
だが考えるまでもない、ただ純粋に力の差だ
ヤツの甲羅はものすごく熱い、その熱さに僕の力が負けた。ただそれだけだ
では一体どうやって勝つ?力のぶつかりあいじゃまず勝てない
とすると間接的な攻撃か?熱量増加の力を手に集中して使えばその辺の石をもつことは可能だろう。その石をヤツに投げつけて攻撃するか?
僕は試しにやってみた
手のひらに力を集中させて石を持ち上げた
案の定石は持てた。だが投げつけるのは不可能だった
石を持つと石が僕の熱に耐え切れずに粉々になってしまうのだ!!!
これでは投げつけることが出来ない!!
僕はチッと舌打ちをした
そしてまた大蠍の攻撃が来た
僕はそれをひょいとジャンプでかわした
僕は空中に浮かびながら思った
『敵の攻撃は当たらないのにこれじゃぁ勝てない!!!!!』
すると僕は横からものすごい衝撃を感じた
見るとなんと大蠍の尻尾がヒットしているではないか!!!!
僕は横に思いっきり吹っ飛ばされた!!
そしてそこにあった岩に激突する
僕はドサッと地面に倒れた
第4章〜鋭い熱〜
『熱い熱い』
地面がものすごい熱を帯びているため僕は地面に倒れることさえも許されない
しかし起き上がろうとしてもあまりの痛さで起き上がれない
一体どうすればいい!?
それにしてもナゼ大蠍の攻撃があったたのだろう
さっきまでの攻撃を見た限り、僕がジャンプしてるときにすぐ力の向きを変えて僕に攻撃を当てるなど出来なかったはずだ。それがナゼ今になって出来るようになっている・・・
僕は大蠍を見た
するとなんとなんと!!!
大蠍の尻尾が3本に増えているではないか!!!
両脇からさっきの尻尾に比べ一回り小さな尻尾が2本!!!
『畜生・・・、まだ手の内を隠してやがったか・・・』
僕は思った
そして最後の力を振り絞って立ち上がる
しかし立ち上がったはいいものの、僕は深い絶望に苛まれた
今までは攻撃をかわして来れたがこれからはそうはいかない
2本の動きの早い尻尾を交わしつつ、主本の尻尾も交わさなくては・・・
だがこの体力ではそんなことできるわけがない
やはり勝つには、こちらの攻撃を当てなくては・・・
僕は自分の手を見た
さっきの攻撃で中央の肉が丸見えの手、とてもみすぼらしい。しかもその肉が見えている手の中心に何か刺さっている。さっきの粉々に砕けた石か・・・
僕はじっと自分の手を見続けた
その時!!僕はある策を思いついた
そうか・・・そうか!!!!
僕は大蠍に勝てる方法を思いついたのだ!
『いける、いける!!』
僕は心のそこから思った
大蠍が大きくうなってこちらに向かってきた
僕は大蠍をにらみつける
そして大蠍に向かって思いっきり走った!!!
大蠍の2本の尻尾が襲い掛かってきた!!
僕はジャンプしないように、なるべく無駄な動作をしないようにヒョイヒョイとかわした
しかし敵の尾のスピードは予想を超えていた
かわしてもかわしてもまたすぐ向きを切り替えてこちらに向かってくる
しかし僕も必死だった
その攻撃をすべてかわしていく
そしてついに主本の尾が来た!!
僕は間一髪、その攻撃を回避した
そして、再び熱量増加の力を手に集中させた
そして一気に大蠍の甲羅へと押し当てる!!!
最初はさっき同様こちらの手の方がダメージを受けて燃えてきた
しかし僕はへこたれずにさっきよりも強く押し当てた
そしてさっき思いついた方法で手に力を集中させていく
するとなんとなんとと手が真っ赤な光に包まれていくではないか!!!
火の光ではない何かが・・・
そして一気に大蠍の甲羅を貫く!!!
数秒・・・時が止まった・・・
そして・・・大蠍が派手に音を立てて崩れ落ちた
体が頭と胴で2つに分かれている
『やっぱり』
僕は思った
一番最初に手が燃えたのは力の強さが違ったのではない
力の鋭さが違ったのだ
最初、僕は手のひら全体に力を集中させて攻撃していた
しかし、それでは相手の密度の高い熱を破ることは出来ない
でもそれを破る方法をさっき手を見たときに思いついた
手の火傷は『中心』こそ肉が見えたり石が簡単に刺さってしまうほどダメージを受けているが、側面や手のひらの周りにはそれほどダメージがなかった。
ということは敵の熱が一点に集中しているということだ
ならばこちらも一点により鋭くより高密度に熱を練ればよかったんだ
僕はこれが熱量増加の力の使い方なのかと感じた
そしてこの修行での初めての成果を手にした
高い熱ではなく鋭い熱を・・・
第九巻〜修行(前編)〜 END
読者の皆様、1ヶ月以上も更新できなくて大変申し訳ございませんでした。
これには学校行事などのとても深い理由があったわけなので、別にサボったわけではないのでご了承ください。
さて、今回から修行編に突入しました。
次回もご期待ください。