第63話「次なる戦いのために」
2章終了です。今回で書きだめが無くなったので、しばらく補充期間にはいります。一ヶ月ほどお休みします。
辺りは街であった面影をわずかに残す荒涼とした大地が広がっていた。
アキラは皆に見えるように、手を上に掲げてルビーのような深紅の宝玉を見せた。
宝玉は小さく、親指の先ほどの大きさだった。
見る者すべてを魅了するほど美しいが、禍々しく鈍い輝きを放っている。
アキラ以外の者が手にすれば、秘められた怨念の影響を受けて正気を保てないだろう。
「これは……魔王だよ。これが本当の姿だったんだ。
この石が怨念を受け、生を授かった」
魔族の幹部たちは誰一人口を開かず、ただ食い入るように赤い宝玉を見つめ、アキラの次の言葉を待った。
アキラは宝玉をそっと両手で包むと、決意を秘めた力強い声で宣言した。
「魔王が力尽きる瞬間、キミを救って見せると伝えた」
機械騎士レイザノールと死霊使いイザナミの体がアキラの言葉にわずかに反応して動いた。
その反応から、彼らの望みが魔王の復活だとアキラには分かった。
「彼は今、静かに眠っている。怨念をすべて浄化したとき再び蘇る」
イザナミがアキラに問うた。
「どうやって、浄化?」
「イザナミ、そのためにはキミの力が必要だ。
ボクは地獄へ行かなくちゃいけない」
「地獄に……」
タトスは地獄と聞き、命夜からの伝言を伝えるのは今だと判断した。
「カミシロメイヤ様より、アキラ様に伝えて欲しいと言われたことがあります。
地獄界へ来い……と」
アキラはタトスを見つめ、ゆっくりうなずいた。
タトスは思わずアキラの美しさに目を奪われてしまった。
この世ならざる者の美しき芸術。
エリュシオンはそんなタトスのデレた顔にイラつき、彼の脇腹を強くつねった。
「いだだだだ! な、なにをするエリュシオン!?」
「ふんっ!」
エリュシオンは腕を組み、あさっての方向へ首を勢いよく向けた。
タトスが必死に言い訳する姿があまりに場違いで、西野とカノンは思わずクスリと笑った。
アキラも楽しそうに笑うカノンたちに微笑みを浮かべる。
それだけで西野もカノンも顔を真っ赤にし、目を逸らしてしまった。
同時に顔を背けたカノンと西野がお互いを向く形になった。
しばらく見つめ合った後、クスっと笑い合った。
ダーツが場にそぐわぬ、底抜けに明るい声で2人を茶化した。
「いちゃつくのは、帰ってからにしてくれないか?」
エリュシオンとタトスははっと我に返って真っ赤になり、黙ってうつむいた。
その姿を見て、アキラは声を上げて笑った。
西野は思わずタトスに突っ込んだ。
「この先が思いやられますね。タトスさん」
魔族たちはこの世の終わりのような戦いを潜り抜けたこの場で、明るく笑える人間たちを信じられない面持ちで見つめた。
悪魔の紳士ルーシーが皆を代表して口を開いた。
「人間とは、思った以上に大物ですね」
アステリアとクトゥルーがそれに同意して、大きくうなずいた。
アキラは皆の笑顔に微笑みかえし、エリュシオンを見つめたまま静かに話しだす。
「王女様から母さんの気配が消えている。
また地獄へ戻ったんだね……」
西野が思わず驚きの声をあげた。
「ええ!? 神代くん! あなたのお母さんって……亡くなってたの!?」
「え? うん、5年ほど前かな……ボクがまだ小学校4年のころかな」
「じゃ、あのお母さんって……地獄からあなたを救いにきたの?」
「ボクもビックリだったよ。でも久しぶりに会えて嬉しかった」
(親友の谷口くんが、将来お母さんにラクさせてあげるんだって話してたっけ。
ボクもお父さんが早くにいなくなってお母さんしかいなかったし、谷口くんと同じ思いだった。
だけど突然死んじゃったんだ。
あれ? でもなんで死んだんだっけ?)
エリュシオンとタトスも、アキラの母親が亡くなっていたという言葉を聞いて納得がいった。
5年ほど前といえば、タトスが黒衣のベルナルドに殺されかけ、生と死の狭間の世界で命夜と出会った時だ。
死者だからこそ、タトスが死にかけた時に会えたのだと分かった。
アキラはしばらく母親の死について考えたが、なにも思い出せなかった。
それより今は、この先の目的について話をするべきだと思い直す。
「ボクは地獄界を救いに行く。
怨念に苦しむ亡者を救うんだ。
魔王は地獄の怨念が生まれたから……それがきっと浄化になると思う。
彼が復活したら、今度はきっとボクの味方になってくれると信じている」
アキラは魔王との戦いを思い出す。
怨念の塊だった魔王は最期の瞬間までアキラを憎んでいた。
全てを破壊しつくしても、なおアキラを滅ぼそうとしてきた。
(あれほどの怨念を生み出す仕打ちを、ボクは皆にしてきたんだ……
なぜそれを救いだと信じてたんだろう……
自分自身のことなのに、全然わからない)
死霊使いイザナミと機械騎士レイザノールは、魔王を救うというアキラの言葉にウソは無かったと確信し、恭しく膝をつき頭をたれた。
彼らは自分たちの真の王を復活させるため、アキラに仕えることを決めた。
同時に彼らの部下の魔族も膝を屈した。
「私、神代アキラ様、お仕え、誓います」
「ワレモ、オナジク、ツカエマス(ギシュシュー)」
悪魔の紳士ルーシーも、いつもの笑みを顔に張りつけたまま膝を折る。
これからのことに思いを馳せているのか、頬に薄い紅がさしていた。
もちろん、彼の配下である悪魔軍団もルーシーに倣っている。
「私ども悪魔軍団もアキラ様に忠義を」
アステリアはアキラの美しい姿に見惚れ、自然とひざまずいた。
かつてない程の高揚感を味わい、自然と涙が頬を伝った。
彼女の配下である近衛騎士団も膝をついている。
「私は永遠にアキラさまの下僕でございます。変わらぬ永遠の愛を」
クトゥルーも触手をうごめかせ、傍からはよく分からぬが膝をついた。
魔族であり古の神とまで呼ばれた存在の彼だったが、これ以上アステリアと戦わずに済んでよかったと安堵していた。
彼の眷属もクトゥルーにならって頭を下げた。
眷属たちはあまりに異形のため、もぞもぞと動いたようにしか見えなかったが。
神々しいまでに美しい少女の姿をもつアキラの周りに、夥しい数の悪魔たちがひざまずく姿は、最後の審判を彷彿させた。
アキラは周りに控える魔族たちをゆっくりと見回した。
魔族たちが自ら進んで協力してくれることに、アキラは嬉しそうに笑顔を浮かべる。
「ありがとう皆。キミたちの協力に感謝する。
微かだけど憶えてることがあるんだ。
この先訪れる闇の世界。それを止めなくちゃいけない。
これは人間だけじゃなく、魔族を含めた生きとし生けるものすべてに関わることなんだ」
居並ぶ魔族たちを前にして、タトスは国王陛下の拝謁に突然口を挟むような緊張感でアキラへ声をかけた。
「メイヤ様が仰っていた【救済の日】のことでしょうか?」
アキラはタトスがつぶやいた言葉にギョっとし、背中に冷たい汗が流れるのを感じた。
「そうだ……少しだけ思い出した。救済の日……それだ……どんなものだったか覚えてないけど、とても……とても恐ろしいものだ……
その日は遠くない気がする。
いや、もう起こり始めているかもしれない」
アキラはアステリアやカノン、西野、ダーツ、そしてネロたち、愛する者へ順に顔を向けた。
彼らが恐るべき未来で苦しむ姿が見えた気がした。
頭を激しく横に振り、その幻覚を追い払う。
アステリアたちは、そんなアキラの様子に心配げな目を向けた。
「大丈夫。ボクは記憶を取り戻すため、地獄でお母さんにも会わなくちゃいけない。
魔王を救い、カザリさんやタイラーさんも助ける」
アキラはダーツたちを見つめると、少し寂しそうに口を開いた。
「ボクはこの後、地獄界へ向かいます。
そこはこの世界より危険で……だから……」
ダーツは力強く励ますようにアキラの肩を叩いた。
自分がこれ以上は役立てないことへの不甲斐なさで、己自身への慰めも込めたつもりだったのかもしれない。
「ああ、これ以上、俺は行けねぇな……」
「え?」
「んあ?」
「えっと違うんです……つ、ついて来て欲しいなぁって」
「なんだとぉぉ!?」
「ダーツさんだけじゃなく、カノンにも西野さんにもついて来て欲しい……」
カノンは即答でうなずいた。
「来るなって言われてもアキラさんについていきます!」
「カノン……ありがとう……」
「おいおい、それじゃ俺も嫌って言えないよな」
ダーツは困った顔を見せながらも、なぜか少し嬉しそうに答えた。
西野ははにかむように笑い、頭をポリポリとかいた。
「私は……今は行けない……今はこの世界の復興を少しでも手伝いたいの」
「……ごめんね。本当はボクもそうしたいんだ。ここはボクの世界でもあるから」
「さっきも言ってたけど、救済の日まで時間がないんでしょ?」
「……うん、もしかするとすでに始まっているかもしれない。
だから行かなくちゃ」
「うん、どうしても私の力が必要なときは、誰かを迎えに寄こしてね」
「……うん……」
「私だけじゃ次元を超えるなんて、できないからね」
アキラが泣きそうな顔をしているのを見て、西野は努めて明るく振舞った。
「せっかく会えたのに……また別れるなんて辛いよ……」
「バカだなぁアキラくん、この世界はもう怪物に襲われないんだから。
いつでも気軽に会いに来てよ!」
「うん、そうだね……また絶対会いにくるよ」
西野はたまらずアキラに駆け寄り、ぎゅっと抱きしめた。
「またね……」
「うん……またね」
名残惜しそうに2人は離れ、西野は小さく手を振った。
じっとこちらを凝視しているカノンの姿が目に入り、クスリと笑ってそばに近づいた。
西野はそっとカノンの耳元に唇を寄せて囁く。
「ルールは絶対だからね? 自分から好きって言っちゃダメなんだからね」
「え! あ、はい!
ライバル……ですもんね!」
「フフフ……その通りよ。カノンさん……アキラくんをよろしくね」
「……はい……」
アキラはエリュシオンたちに顔を向け、頭を下げた。
「王女様、ほんとうにありがとうございました」
「え!? あ、いえ……私こそ……おかげでタトスに会えたので……」
突然のアキラの感謝の言葉に、エリュシオンは思わず裏返った声で返事をしてしまった。
自分の声がこんなにはっきり聞こえると、恥ずかしい声を出してしまったこともはっきり自覚して顔を赤らめた。
「王女様やヒュプテさんたちは、クトゥルーに元の世界へ送らせます」
「あ、まって……アキラ様。
私とその……タトスはこの世界に残ります……」
「え?」
西野が割り込み、ヒジでアキラの横腹をつつく。
「察しなさい。王女様と騎士様なのよ? 元の世界じゃ決して結ばれぬ運命なのよ」
「え……あ、そうなの?」
「タトスさんとエリュシオンさんのことは私に任せて」
「そっか……わかりました」
エリュシオンたちは幸せそうに互いを見つめ合い、手を繋いでいた。
アキラは羨ましくそれを見つめた。
ヒュプテが近づき、アキラに微笑み軽くうなずいた。
「実に興味深い旅だった。
私たちは元の世界へ戻らせてもらうよ」
「あ、ヒュプテさん、それでお願いがあります」
「なにかね」
「魔族たちの件なんですが……」
「なるほど。もう人間と争うことはないから和平に持ち込むなり、なんとかしてくれという相談だね。
了解した。容易いことだよ」
「あはは……なんにも言ってないのになぁ……
相変わらずバレバレですね」
ヒュプテは楽しそうに微笑んだ。
ヘイラはその主を見つめながら、困った人だという分かりやすい表情をしていた。アキラは2人の関係性を見て思わず笑いそうになり、なんとか自制した。
☆
クトゥルーが虚空へ向かって薙ぎ払うように触手を動かすと、まるで紙が破れるように空間に大きな裂け目が開いた。
その空間はかなり大きく、学校の校舎くらいの大きさがあるようだ。
魔族たちが次々とそこへ入り、次元を渡って行く。
「西野さん……それじゃ……
王女様たちもまた……」
「うん……」
アキラはダーツたちの世界へと帰還し、一旦城に戻ることにした。
そしてイザナミの管理する地獄門から地獄界へ行くことに決めたのだ。
部下を引き連れ、機械騎士レイザノールが門をくぐった。
彼はアキラをチラリと見た後、頭を下げて静かに歩き去っていく。
何も言わないレイザノールは、アキラにとって何を考えているのか分かりづらい。
(彼は忠義に厚い人……ん? ロボかな。
……ボクの行いが自分の意に沿わなければ、再び敵にまわる気がする)
死霊使いイザナミもレイザノールに続き、門へ入る。
「アキラ様、お願い、あります」
「え? なんだい?」
アキラはイザナミの美しい顔が作り物のように見えて怖かった。
まるで表情がないからだ。
そもそも首から下は骨であり、それだけで見る者を恐怖に落とす。
(うーん……ボクってやっぱ基本チキンなんだろうか)
「その……レレナ、です」
「うん。レレナには悪いことをしちゃったよ……」
「彼女も、救って、欲しい、友達、です」
「もちろんだよ。ボクはレレナを助けて、彼女にいっぱい謝るつもりだよ。
それから彼女にも力を貸してもらうんだ」
即答するアキラに、イザナミは変わらぬ表情のままアキラを見つめた。
そして頭を深く下げた。
「深き感謝を……私、あなたに、永遠尽くします」
彼女の声にはじめて感情らしきものが垣間見えた気がしたアキラだった。
悪魔の紳士ルーシーも次元門を通る。
彼はアキラに向かって、まるで少女のように艶やかに笑う。
「これからも楽しめそうで、なによりです」
「キミは魔族のくせにウソつきだからね……できれば裏切らないでよ?」
「フフフ、ウソつきはお互い様でしょう?
私もずっと騙されていたのですよ?」
「やっぱりウソつき……初めから分かってたんでしょ?」
「私は最初に言ったはずです。私ならばレレナのマジックアイテムを使わずとも、真実を見破れると」
「そういえば、そうだった気がする……じゃ、やっぱり騙されていたのはウソじゃないか」
「ああ、これは失敗です。さすがアキラ様」
彼は楽しそうに笑いながら、そのまま通り過ぎていった。
(食えないヤツ過ぎて、これからも苦労しそうだ……
ヒュプテさんとどっちが頭いいんだろうなぁ)
ダーツはネロを抱えて次元の門をくぐろうとし、ふと立ち止まって振り返った。
(カザリ、タイラー……アキラはお前たちのおかげで無事だぜ……
より強く、たくましく成長してるぜ)
ダーツは寂しげな笑みを浮かべ、そして次元門をくぐった。
彼はそのまま一度も振り返ることなく歩いていく。
カノンはアキラと一緒に元の世界へ戻りたいと思ったが、西野の姿を見てやめた。
(ニシノさんか……とっても素敵な人……
美人だし、私じゃとても……って、私なにを言ってるの!?
わ、私はアキラさんが無事ならそれでいいのに……
ニシノさんはライバルって言ってくれたけど……私、本当にアキラさんと……そうなる未来を考えていいの?)
アキラはカノンを見つめ、優しく微笑んでくれている。
しばらく立ち呆けていたため、アキラに何かあったのかと心配されてしまった。
優しく首を横に振り、それから西野に向かって手を振った。
西野も微笑み、ゆっくりと手を振った。
次元門を通って帰還していく魔族たちを尻目にアステリアは最後まで残り、アキラと一緒に戻るとダダをこねた。
「ア、アステリア……ボク、西野さんと話があるんだ。頼むよ。
先に戻っててくれないかな?」
「アキラ様の命令と言えど、私はアキラ様の近衛騎士なのです!」
「アステリア、ボクはキミに命令なんかしないよ。
いつもキミに言ってるのはお願いだよ」
「……え?」
アステリアはキョトンとし、目を丸くしていた。
「ボクたちは主従関係じゃない。愛する大切な仲間同士なんだ」
「ほえええええええええええ!!!!
あ、あ、愛! 愛!! 愛するうぅぅ!?」
突然奇声を発するアステリアに、西野とアキラはビクリと体を跳ねさせた。
「お先に戻りましょう。このアステリア、アキラ様のお願いを聞かない悪い子ではないのです!」
そう元気に叫ぶと、スキップしながら門をくぐっていった。
アキラはその姿を見て、噴き出してしまった。
「アステリアってほんと、チョロ……げほん! かわいいよね」
「アキラくん……キミ酷いヤツだねー。
女心を弄ぶやつは、私が許さないぞ」
「いや、そんなんじゃ……いや、アステリアは大事な人だよー」
「へぇ……? 大事な人ね……ふーん」
「あ、いや、そんな意味深じゃなくて……その……」
西野はどぎまぎするアキラを見て、いつものアキラと同じ様子に大笑いしてしまった。
(うん、神代くんはそうだよ。これがキミだよね)
帰還すべき者で残っているのはクトゥルーとアキラだけになった。
クトゥルーは何も言わず、ただアキラが門を抜けるまで静かに待っている。
「西野さん……ボク……」
「うん? なにかな神代くん?」
「あの……全部終わったら……ボク、あのときから止まった西野さんとの時間を一緒に歩きたい」
西野の大きな目がさらに大きく見開かれた。
顔が赤く染まり、目尻に涙が浮かんだ。
タトスとエリュシオンも、そんな西野を見て優しく微笑んだ。
「うん……うん……」
西野の顔が涙でぐちゃぐちゃになっていく。
アキラも大粒の涙を流し、別れを惜しむ。
「ちくしょー。アキラくんのほうが冷静なんて悔しい」
「え!? ボ、ボク冷静じゃないよ……
いまだって相当勇気を……」
西野は優しく、だが力強くアキラの手を握りしめた。
「フフフ……またね、アキラくん! 約束だからね!」
「うん、約束だ!」
クトゥルーが次元の裂け目に入り込み、そしてアキラも続いた。
アキラは名残惜しそうにもう一度振り向き、悲しそうに西野を見つめた。
徐々に消えていく空間を、西野は一瞬たりとも目を閉じることなく見つめていた。
アキラもずっと目を離さず、西野を見つめ続ける。
次はいつ出会えるのか……2人には分からない。
世界を放り出しても西野はアキラと一緒にいたかった。
だがトモコや家族の弔いをしっかりしてあげたかった。
そして共に行けない最大の理由を、西野はアキラに話してはいなかった。
それは――――恐るべき変貌が始まりだしていたから。
金色の力は彼女から理性を奪い、欲望のままに行動する。
だがその変質はまだ始まりに過ぎない。
いずれ人間ですらなくなり、異形なるナニカに変わってしまう。
それをアキラに見られたくなかったのだ。
(あ……ああ……アキラ……くん……もうあなたと二度と会えないかもしれない)
そしてアキラが消える瞬間、西野はカノンとのルールを守り切れずに叫んだ。
「アキラくん! 好きなのぉぉぉぉぉ!!!!!」
膝から力が抜け、地面に座り込む西野は絶叫し、泣いた。
静寂になった世界に、ただ西野の泣き声だけが唯一残された音のように響いていた。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。非常に嬉しいです!
この先まだまだ続きます。しかし書き貯めがなくなりました。
もちろん1話ずつアップするということもできますが、技量がないため(矛盾が生じたり)
なので、しばらくの間書き溜める時間をください。
復活したときは是非、この世界の続きを見守ってあげてください。では1か月ほどのお別れです。
ぜひぜひ、ブクマ、感想などよろしくお願いいたします。
あ、近々新作も発表するので、そちらも是非見てやってくださいませ。