表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/75

第6話「冒険者」 ☆

またイラストがあります。イメージ補完にどうぞー。( ^ω^)

魔族の城を出発してから何日経ったんだろう……

アステリアにはご飯持ってくるの禁止、休む時に()い寝しようとするのも禁止、

とにかくボクに会いに来るのは全部禁止と命令した。


なんせ、ことあるごとに現れるんだ。

トイレを済ませるとどこからともなくウォシュレットしてくれるし、

汗をかいて気持ち悪いなぁって思ってると、街道のそばに温泉が湧いてたりした。

どんだけ頻繁(ひんぱん)に温泉がある街道なんだ……

もはやあれはストーカー……いや、ストーカー以上だよ……

細かく禁止を出しまくった後は現れることは無くなったけど、

また何か理由をこじつけてやって来そうな気がする。

監視の目が届かない、すぐにアステリアがやって来れない場所まで行きたい。

でももしかすると、この世界にそんな場所はないのかもしれない……


今のボクの格好は、この世界の街の住人として一般的な服装だ。

どうやって服装を知ったのかって?

アステリアが魔法の映像で戦場だけじゃなく、街の様子や生活をいろいろと

見せてくれたから分かったんだけどね。

目玉に翼が生えた魔物を放っていて、その魔物が見たものを映像として

映し出せるっぽい。

人が住む街に行くのに、魔王ルック丸出しの服じゃ行けないしね。

ボクは白っぽい麻でできたシャツに赤茶色のズボン。

それに皮の手袋をつけ、皮の靴を履いている。

ザ・市民って感じ。

その上にマントを羽織り、布の帽子をかぶる。

魔族の城を出てきたときはもっと厚着をしてたんだけどね。

城の周辺はかなり寒かった。

そういや、日本では5月中頃だったんだけど、この世界は何月なんだろう…

そもそも季節はどうなってるんだろう。


カノンもメイド服姿ではなく、ザ・市民の服装に着替えている。

羊毛でできたワンピースに、腕にはアームカバーのようなものを着けている。

カノンの髪は緑色だけど、緑の髪はこの世界でもやはり珍しいらしく、

今は茶色に染めてもらっている。

頭巾(ずきん)をかぶると素朴(そぼく)な町娘という印象で、どう見ても普通の人間にしか見えない。

「似合ってますか?」と、はにかみながら問いかけるカノンのことを、

かわいいと思ってしまった。

ごめん……彼女も魔族だし、ボクのクラスメイトや谷口くんにひどいことをした

やつらの仲間なんだ。

確かにカノンにはお城にいるときから色々お世話になっているし、

とてもいい子だとは思っている。

だけど魔族は許すわけにはいかない連中だ。

でも、一瞬それらすべてを忘れてしまうほど、彼女に親近感を持ってしまう。

やっぱり世話好きのクラス委員長の笹原さんに似てるからなのかな……


最初はきつくて続けられないと思った旅も、ほんの少しだけど慣れてきた。

これもすべてカノンのおかげなんだけどね。

野犬や蛇が現れても、視界に入ったと同時に退治してくれたし、

ボクが退屈しないようにって色んな話もしてくれた。

きつい旅が少しでも快適になるために気を遣ってくれた。

野営中に蚊に刺されないよう、魔法で透明な幕を張ってくれたりね。


いやほんと……旅って想像以上に大変だし、心細いんだ。

連日連夜が野宿だし、夜はたき火が照らす場所以外は本当に真っ暗。

街の明かりも何もないから、鼻をつままれてもわからないほど暗い。

暗闇の中に何かが潜んでいそうですごく怖い。

獣の声や得体の知れない音にビクっとなる。熊とか……いないよね?

それに虫が多くて野宿してたらわさわさ寄ってくる。カノンの魔法がなかったら

ゆっくり眠ることもできなかったと思う。

安全快適に移動できる現代日本の旅行とは全然ちがうんだ。


眠るまではずっとたき火を(なが)めて過ごす。

そうすると揺らめく火の中にお母さんの幻影が見えてくる。

お母さんだけじゃない。西野さんや谷口くん、久保くん、

そしてクラスメイトたちとの楽しい日々……

今ははるか遠くに行ってしまった日々が、炎の中に現れては消えていく。

怖くて、(さみ)しくて……全然眠れなくなる。

そんな時、ボクが何も言わなくてもカノンはいつも歌ってくれた。

カノンの歌声はとても澄み渡っていてやさしくて、でもどこか寂しげで……

それを聞いていると恐怖も寂しさも、()りをほぐすように少しずつ

(やわ)らいでいった。

おかげで快適とはいえない野営でも、ぐっすり眠ることができた。


いま思えば、魔族の城に連れてこられた時に一人で逃げ出さなくて良かった。

魔族の城から運よく逃げ出せたとしても、ボクだけじゃ、人里にたどり着く前に

死んでただろうな……その前に森の中で気が狂ってたかも。

まぁ水も食べ物もないし、絶対無理だった。

カノンは魔族だけど、ありがとうって感謝してしまう。

いや、その魔族のせいで、こんな目にあってるんだけどさ…

ほんとボク、男なのに全然ダメだ……女の子に助けられてばかりだ。





今日も日が暮れる前に幌馬車(ほろばしゃ)()め、野営の準備を始めた。

日が暮れると、あっという間に夜のとばりが下りるので、

その前に準備を終えてないといけない。

ボクは(たきぎ)を集め、たき火の準備を始める。

森の中だからたき火の材料は豊富にある。

最近はどの木の枝が燃えやすいのかわかってきた。


「あっ! ア、ア、アキラさん……もったいない!

 そんな雑用は私がいたしますのに!」


……そろそろボクの名前を呼び慣れてほしいな。

このまま街に着いて大丈夫なのかな。

ボクに頭を下げながら火をおこすカノン。

いや、だってこれくらいしないと、あまりにも役立たずすぎて、

ヒモみたいというかなんというか……


カノンはてきぱきと食事の準備を進めている。

ウサギの肉と豆を使ってスープを作ってくれてる。

いい匂いだ……


「いただきます」


一口食べる。うー、めっちゃうまい。

こんな料理、日本では食べたことない。

さすがメイド。すっごく料理が上手い。

これもまた、きつい旅をなんとか乗り切れている理由のひとつだ。

ちなみに食材の調達もカノンさんがやってくれてます…

ボク、ほんとうにヒモだこれ……

城ではヒキコモリ、外ではヒモ。

あはは……


ふーふーと熱いスープを飲みながら、思いついたことをカノンに何気なく言った。


「いやあ、カノン…めっちゃいいお嫁さんになれるよ」


バキャッ!!


派手な音がする。突然の大音量にビクっと驚く。

カノンのすぐ後ろの大木が音を立てて倒れていく。

どずずずーん。


え、なんで? なにが起きたの!?


「そ、そんな……私なんかが…もったいない……え? ほんとですか?

 いやでも…うふふ……」


手を左右にぶんぶん振り回して身もだえしているカノン。

カノン、後ろのでかい木が突然倒れたんだけど……気づいてない?


その時、少し離れた茂みの方からガサっと音がした。

獣? それとも……

頼みの綱のカノンに目を向けると、まだ両手をほっぺにあてて

上半身をクネクネしていた。


「カ、カノン……なんかいる……」


カノンはボクの声であっという間に真顔へ戻る。

警戒しながらあたりをキョロキョロ見回し、ある一点を見つめ、声をかけた。


「そこにいる人、出てきてください」


さっき、ガサって音がした方向だ。

しばらく沈黙が続いた後に出てきたのは、赤色の皮鎧を着た長身痩躯(ちょうしんそうく)の男。

皮の小手やブーツ、腰のベルトには短剣を差していた。

手入れしてなさそうな金色の髪は肩にかかるくらいある。

切れ長の目、鼻すじも細く、口元は少しにやけた感じだ。

全体的に冷たそうな雰囲気をまとっている。

男は髪をくしゃっとかき回すと、()()れしく話かけてきた。


「悪いね。怪しいもんじゃない。

 向こうでキャンプを張ってたんだがね……突然大きな音が鳴ったものだから、

 様子を見に来たんだよ」


自分のことを怪しくないっていう人は怪しいだろ……と思ったが、

こっちに連れてこられて、初めて人間と出会ったことで嬉しくなった。

現れたのがヤクザでも殺人鬼でも嬉しくなったと思う。


「あ、そこの木が突然倒れちゃって、ボクもびっくりしました」


金髪男はふーんと無造作に言いながら、倒れた木の元まで歩いていく。


「生木じゃねーか……しかもこんな大木。」


ボソっとつぶやいている。

金髪男はこちらを向いてボクたちに質問してきた。


「ここは魔族領の近くなんだが……つまり危険地帯だ。

 そんなところに少女が2人。

 ……どこから来たんだい?」


ボクはしばらく考える。

少女2人。カノンはわかるけど、もう1人は……

あー、うん……ここでもバカにされるのか……

いくら小さいからって女の子扱いはひどい。

でも、久しぶりにあった人間だ。そんな不満はおいといて。


「ぼ、ボクは男です……」


金髪男は細い目を見開く。


「え……うそだろ?

 めっちゃ美少女にしか見えないんだが……」


…今のは、聞こえなかったことにしよう。

カノンがボクの代わりにきっぱりと答えてくれる。


「私たちはここから北東にあるネイリスの街から来ました。

 今はカケイドの街に向かっているところです」


「へぇ……カケイドにたった2人で何しに行くんだい?」


「それを見ず知らずのあなたに教える気はありません」


もちろんウソだけど、この答えは旅の最初にカノンと打ち合わせして

あらかじめ用意しておいたものだ。


「まぁ、そりゃそうだわな」


金髪男は意外にあっさり引き下がった。

と思った瞬間……金髪男が短剣を抜き、カノンの首に刃を押しあてていた。

瞬きする間もないほどの、あっという間の出来事だった。


「カ、カノン!」


カノンは(ひたい)に汗をかき、首にあてられている刃物を凝視していた。

彼女が危ない目に遭っているのを見て、頭に血がのぼった。


「な、なにをするんだ!」


ボクはケンカなんてしたことない。

でも拳をぎゅっと握り、金髪男をにらんだ。

体が震える……

相手は短剣を持った大人だ。しかもカノンが反応できない速度で近づき、

刃を首に押しあてた。

多分…いや絶対に勝てない。

もしかしたら刺されるかも……

ぞっとする考えが頭をよぎった。

だけど自分がケガするかもしれないという恐怖より、カノンを救いたいという

気持ちの方が強かった。


魔族を救いたいって……ボクはどうかしちゃったんだろうか。

ちがう、彼女は旅の間ずっと守ってくれた。

ここまで無事に旅ができたのはカノンのおかげだ。

旅をする原因が魔族にあるとはいえ、カノン個人には感謝している。

だからボクも彼女を守ってあげたい。

西野さんがここにいたら、やめとけって言いそうだけどね。


金髪男は値踏(ねぶ)みするかのようにじっとボクを見つめていたが、

すっと短剣をカノンから遠ざけた。

その瞬間、張りつめていた空気が緩むのがボクにもわかった。


「いや、すまねぇ、すまねぇ。ここらには悪魔が出るって噂もあってな。

 てっきりお前らがそうじゃねーかと思ってな」


金髪男は破顔(はがん)し、人懐こい笑顔を見せた。

え……

キョトンとしていると、男は自然体な動作で倒れた木の上へ腰掛ける。


「この木……お前たち、その悪魔に狙われていたのかもな……

 運がいいぜ? 俺が来たことに気がついて逃げたのかもしれないな」


この男の人、悪魔に勝てるほど強いんだ……

すごいな……

いやそーじゃなくて。

ボクはカノンのそばまで走り寄り、声をかけた。


「カノン、大丈夫?」


ボクが心配そうに顔をのぞき込むと、カノンはニコっと微笑む。


「ア……キラさん、ご心配なく」


金髪男はボクたちに深々と頭を下げる。


「いや、本当にすまなかった。このとおりだ」


カノンと顔を見合わせると、カノンはボクにまた微笑んだ。

それを見たボクは安心し、頭を下げたままの金髪男に答える。


「あ、いえ……こんな場所だし、疑っちゃいますよね」


完全に信用したわけじゃないけど、言ってることはわかるし、

しかも自分から謝ってきてくれた…悪い人じゃなさそうだよね?


「ところで……()びといってはなんだが、俺、あんたたちの護衛として

 街まで同行しようか?」

「え?」


カノンはボクがなにか答える前に金髪男へ質問をした。


「失礼ですが……あなた、何者なのですか?」


「俺は冒険者のダーツってもんだ。

 実はこの近くにあるエヤリン村の依頼で、レッサーデーモンの討伐を受けてね。

 まぁ依頼は達成済み、あんたたちの目的地でもあるカケイドの街へ

 戻ってる最中なんだ」


挿絵(By みてみん)


「実は……俺の仲間もいるんだ」


金髪男のダーツが頭をボリボリっとかいてぼそっと告げると、

茂みの中からさらに2人出てくる。

全然気がつかなかった。


1人は黒髪ポニーテールで、見た目は忍者……の女性。

時代劇なんかで見る忍び装束(しょうぞく)みたいな服装だ。

うぅ、すごい巨乳……着物で隠し切れてなくてはみ出そう……

なんて色っぽいおねーさんなんだ。

まぁ忍者っぽいだけで、忍者じゃないのかもしれないけど。


そしてもう一人は弓を持った耳の長い男性。

美しく長い白髪を背中の半ばまで伸ばし、緑の服を着て皮鎧を身に着けている。

なかなかのイケメンだ。

人間ではありえない耳の長さで……あ、もしかしてエルフってやつ?

アニメや映画でしか見たことなかった。

ここって違う世界なんだと改めて実感した。

もしかしたら日本のどこかなのかも……と、心の隅ではほんのちょっとだけ

期待してたんだよね……


「ダーツ。ちゃんとお嬢さん方に謝罪したんだろうね」


エルフの男性は金髪男をジロリと睨む。

ダーツと呼ばれた金髪男はめんどくさそうに答える。


「ああ、うっせーなネロ。もうしたって。見てただろが」

「あんなもの、謝罪とは言わないね。誠意がこもってなかった」


エルフの男性ネロは、ボクとカノンに笑顔を向けた。

うわぁ、笑顔だけでバックに花が咲いて見えるよ。

さすがエルフ。美形って得だね。

同じ笑顔でも悪魔の紳士ルーシーとは正反対だなぁ……


挿絵(By みてみん)


「美しいお嬢さん方、本当に申し訳ありませんでした」

「おいネロ、そっちのちっこい方は男だってよ」


金髪男のダーツに指摘(してき)され、エルフのネロはわざとらしい大口を開けて

ボクを凝視した。

あ~うん、もういいよ…そんなに驚かなくても。ずっと見てたんでしょ。

でも、美しいお嬢さん方って……

背が小さいだけで顔は男らしいと思うんだけどなあ。

眉間(みけん)にぐっと力を入れて男らしくしてみる。


忍者の女性がボクにキラキラした目を向けてくる。


「こんな綺麗な男の子がこの世に存在するなんて……

 ああっ! 弟にしたいっ!」

「カザリのショタが爆発してやがるな……」

「まぁカザリの気持ちもわかります……こんな美しい男の子であれば、

 その……私でもおかしくですね」

「ネロ、おめえは綺麗な奥さんがいるじゃねーか。男に浮気か!?」


挿絵(By みてみん)


まってまって! ボクを変な目で見ないで!

魔族たちとは違った危険性を彼らに感じてしまった。

ホントに護衛してもらって大丈夫なんだろうか……


金髪男のダーツはやれやれといった感じで忍者のカザリに言う。


「おいカザリ、タイラーもここに呼んでこいよ」

「え、あっちに合流じゃないの?」

「バカかおめぇは。このいい匂い……わからねぇのか?」


忍者のカザリは鼻をすんすんと鳴らす。


「確かに……これは……」


皆の目がカノンの作ったスープに集中する。

エルフのネロはボクたちに向かっておずおずと言う。


「あのう、これ……味見していい?」


残り物のスープを皿に盛って渡すと、ネロは一口食べた。


「うあ! なにこれ! げきうま!!」


先ほどまでのキザな雰囲気はまるでなく、お腹をぎゅるるっと鳴らしている。

うん、おいしーよね。

残りの2人もスープを一口もらって食べだす。


「やべぇ……これが究極と至高の味ってやつか!

 まったりとしていて、それでいてしつこくない!」

「うぅ、美少年に至上の味のスープ! ここが天国なの!?」


全員が何か言いたそうにボクとカノンをガン見している…

ボクは空気を読んでカノンに言った。


「カノン、悪いけど皆にも作ってあげてくれる?」

「はい」


カノンは笑顔で快諾(かいだく)した。

3人ともカノンのスープを喜んでくれてる。

なぜか自分の事のように嬉しくなった。

ところで……もう一人いるっていう仲間の人はいいのかな……?



ボクらは金髪男のダーツたちと談笑(だんしょう)していた。


「で、俺が隙をつくっている内に、ネロが弓でトドメをさしたのさ」

「おいしいとこだけもってくのがネロだものね」

「あー弓汚い。さすが弓汚い」

「お、お前らな……」


ダーツたちは酒を飲み、酔っ払いながら、レッサーデーモン退治の

自慢話をしている。

ボクは久しぶりに笑った。

この世界に来てからは、いつばれるかも、いつ死ぬかもという恐怖しかなかった。

それがようやく人間と出会って…

気がつくと涙が出ていた。


「ア……キラさん……」


カノンが心配そうにボクを見る。

ボクは笑顔を作って、安心させるようにカノンに答える。


「いや、これは笑いすぎて涙がでちゃったんだ」


すると、またガサガサっと茂みの奥から一人の男が現れた。


「おい……お前ら……」


憮然(ぶぜん)とした顔をした茶髪の男が立っていた。

しばらく考え……

あ、さっきもう一人いるって言ってたなー。

金髪男のダーツたちはスープを堪能(たんのう)して、そのまま居座っちゃってたよ。


後からやってきた戦士の男へダーツたちが陽気に声をかけた。


「おぉ、やっと来たかタイラー!」

「お先にやってるわよ~~~」

「ぐー、スピー……、ぐー……」


挿絵(By みてみん)


エルフのネロはいつの間にか寝ていた。


タイラーと呼ばれた茶髪の男もカノンの料理を食べ始める。

背中にデカイ剣を背負ってる。

いかにも戦士って感じで、背もかなり高くて筋肉もすごい。

腕にはいくつもの傷跡(きずあと)があった。

歴戦の勇士って感じだ…

筋肉の体を覆ってるのは金属製の鎧なのかな。

腕や足、胸の部分、そして肩当が硬そうな金属の板で守られている。

うーん……すごく強そうだ。

顔は四角くていかついけど、タレ目のおかげかとても温和そうな雰囲気。

ボク、こんなたくましい男の人になりたいんだよね。


かっこいいなと思いながら、じーっと戦士のタイラーを見ていると、

タイラーは顔を赤らめた。

んん?


ダーツがその様子を見てニヤっと笑い、面白がってタイラーをからかう。


「その子、男の子だぜ? わはははは」


本日何度目かの驚きの目を向けられた……

なんなんだまったく……



明け方、ボクたちは出発の用意を始める。


「よう、アキラ。おは」

「あ、ダーツさん。おはようござます。

 あの……本当にありがとうございます」


約束通り彼らは、ボクたちが目指す街まで護衛してくれることになった。

ダーツは鼻の頭をぽりぽりとかきながら、

「いやいや、どーせ俺達もそっち方面に用があったからよ。気にすんな」

と照れ臭そうに言った。


「じゃ、出発!」

この世界に来て、初めて楽しいって思えている。

今だけは……いいよね?


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ