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第45話「次元を超える愛」

エリュシオンはまた王都を歩いていた。


(あ、これは……またあの夢だ……)


何度か見た夢、しかし夢とは思えないほどの現実感。

夢を見ている間はそういう風に感じるものだと理解していても、あまりに真に迫って生々しく感じる。

自分は確か、ナメクジの化け物に襲われて……

その時の恐怖が蘇る。

学校の屋上でトモコが食われていく姿を、何時間もなす術もなくただ見ていた。


(私、もしかしてもう死んでるのかな……)


タトスにもう会えないのかと思うと、とてつもなく悲しくなる。


(いやだ……結婚式するんだ。死にたくない)


ずっとずっと叶わぬ夢だと思っていた。

しかし、その願いはエリュシオンの手で(つか)めるところまで来ていた。

これまでどんなに夢見ただろう。どれほど願っただろう。

だが、自分は今、現実世界でトモコのようにナメクジに食われているのだろうと理解していた。


(タトス、すごく会いたい……)


最後に伝えたかった。

今なら素直に言えた。

愛していると。

彼女は王女で、どんなに恋焦がれても、その想いを口にすることは禁忌(きんき)だった。

結婚式のときに伝えたかった。

タトスと共に眠り、朝を迎えたかった。

もはやそれが叶わないのが、とても悔しかった。とても悲しかった。


きっと死ぬ前の最期の夢なのだ、だからこそ王都が出てきたんだと思う。

王都を(まぶた)の裏に焼き付けておこうと辺りを見回した。

そしてヒュプテの屋敷の近くにいることに気がついた。


(またここかよ……

 別に思い出があるわけでもなんでもないのに……

 せめて最後は自分の部屋か、タトスの部屋に行きたかった)


なぜここの夢ばかり見るのだろうと不思議に思う。

ヒュプテの屋敷の玄関へ向かい、中に入ろうと門番に声をかけるが、無視される。


(ああ、そういえば見えないんだったなぁ)


扉を開けようとドアノブを握るが、手がドアをすり抜けた。


(夢だしね……)


エリュシオンは屋敷の中を歩き回り、自分と会話したあの少女がいないかと探し始めた。

さほど時間もかからず、すぐに少女は見つかった。

ちょうど応接室から出てきた少女が、エリュシオンを見て驚き、尻もちをついていた。

その顔がとても愛らしく、現在の境遇を一瞬忘れて思わず笑ってしまった。





ボクは突然の出来事に思わず、腰を抜かしてしまった。


「ヒュプテさ……ヒュプテ! エ、エリュシオン王女が!」


ボクは王様で皆はボクの部下という設定なので、さん付けはおかしい、

呼び捨てにしろと、ヒュプテさんに言われていたのを思い出し、慌てて訂正した。

応接室から出たら、またあの青い髪の美少女、エリュシオン王女様がいた。


いやもう、びっくりするよ……予告無しだし。

ヒュプテさんにヘイラさん。アステリアとクトゥルー。

それからダーツさんたちとカノンが、応接室の入口に集まってくる。


「陛下、以前確かめようとしていた件、お願いできますか?」


ヒュプテさんがボクに頭を下げる。

ああ、あの触れるかどうかってやつね。

うん、了解だ。

しかし、みんなが陛下陛下って言うのはやっぱりなんだか落ち着かない。

早く慣れないといつかボロが出そう。

ともかく、さっそく王女に触れてもいいかを聞いてみる。


「あ、あの王女さ……ごほん! 王女。 ちょっと失礼して触ってもいいです……

 げほん! いいか?」

「え? 私、玄関もすり抜けちゃったけど、触れんのか?」


クトゥルーが少し意外そうに一言つぶやいた。


「ほう、アストラル体か。中々面白い力を持っておる少女だな」


クトゥルーにも見えるのか。アステリアもうなずいているし、2人とも彼女が見えてるっぽい。

アストラル体という初めて聞く言葉に、ボクはすかさず繰り返すテクを発動した。


「ふむ、アストラル体か……」


クトゥルーがボクの言葉に大仰(おおぎょう)にうなずく。


「左様です、陛下。

 彼女は精神体、つまりアストラル体となって、この現世にやってきたようですな。

 異世界を超えて来られるとは、相当な力でございますな」


ダーツさんがぽつりとつぶやく。


「つまり、幽霊みたいなもんか……」

「その通りだ、金髪無精(ぶしょう)ひげの人間よ」


クトゥルー、せめて名前で……

まぁとにかく、どうよ、みんなわかったかい?

ボクはドヤ顔でヒュプテさんを見た。

ヒュプテさんから小さく拍手された。


さあ、いざ王女様……ちょっと失礼して()れますよ……

ボクは心臓が少し高鳴り、そっと手を伸ばす。

こんな不思議な状況だからってのもあるけど、すごく綺麗な人に触るのはね……

やっぱり男の子として緊張するよね。

ボクの手がぺたっと王女様の二の腕に触れた。


「うわ! ヒュ、ヒュプテ! 触れまし……触れた!

 すごく柔らか……げほん!」


アステリアが冷ややかな視線を投げてきて、背筋が寒くなった。

カノンとカザリさんも地味に冷たい視線だったので、精神的ダメージがヤバイ。

キミたちは10代の男の子の性をわかってないんだって。

そもそもこれはヒュプテさんの作戦であって、ボクの意思じゃ断じて……ない。

ボクがドギマギしているのに、ヒュプテさんは冷静に観察している。


「陛下、手が消えていませんか?」

「え、ボクには普通に見えてるけど……」


クトゥルーがその疑問に対して、厚みのある渋い声で答えてくれた。

こんな声に憧れてるんだけどなぁ……


「陛下の手が次元を超え、王女の体と繋がってるようですな」

「え? まって……それって」


っていうか、ボクなんでそんなことできるの?

いや、この場合は王女様の力か……

ボクと波長が合うとか、なにかそういうことなのかな。

幽霊は波長が合うと見えるとか聞いた覚えあるし。

ヒュプテさんが興味津々(きょうみしんしん)な笑顔で次の希望を伝える。


「陛下、こっち側に引っ張れるか試してみませんか?」


王女様から手を離すと、ボクの手が現れて皆に見えるらしい。

ボクは次元を超えて王女の肉体に触れてるみたいだ。

でも、なんだろう……手がヌルヌルしてるんだけど……なんで?

しかも手を引っ込めると酸っぱい匂いが鼻をついた。

うーん、ボクが引っ張っても、王女があっちの世界でただ引っ張られるだけってことはない?

とりあえず、こっちの世界に引っ張り込むイメージでやってみるか。

王女様にそれを伝える。


「王女、こっちに引っ張れそうなんだけど、いい?」

「え? どういうことだ?」

「つまり、そっちの異世界からこっちの世界に戻せるかもってこと」

「ええ!?」


王女様は驚愕(きょうがく)に目を見開いたけど、すぐに目を()せた。

彼女は自分の境遇を話し始めた。


王女様の話を聞いてボクは蒼白になった。

ナメクジの化け物に食われて、今やばいことになってるって。

それってこっちに引っ張ったら……

そして気がついた。この手のヌルヌル……鼻の奥を刺激する異臭。

とんでもなく嫌な予感がする。


「陛下、悩んでいる暇はありません。もしその話が本当であれば、今を逃せば二度と機会は訪れません。

 今であれば万が一にも救える可能性があります。

 そしてこうして話している間にも、また突然消えてしまう可能性もあります」


ヒュプテさんが選択肢も時間も無いと警告する。

切迫した状況だと悟って、王女様の同意も得ず、ボクは力いっぱい引っ張った。


「あ! まって……タトスが……」


そして……


皆の予想を超えた姿で、王女様がこの世界に現れた。

ドロリとした粘液にまみれていて、体はところどころから骨が見えるほど()(くず)れていた。

(まぶた)がなくなり支える筋肉も失って、眼球が飛び出していた。

飛び出した眼は視神経でかろうじて頭と繋がっている。

美しく青い髪は半分以上が抜けている。

これがあの美しい人とは思えない惨状をさらしていた。

不思議なことに腹の肉だけは溶けていなくて、大きく(ふく)れ上がっていた。


いや、このお腹……なんか透けかかってない?

あまりに(ひど)いその姿は地獄の餓鬼(がき)に似ていた。

それでも彼女はまだ生きていた。

ビクビクと体が動き、うめき声が微かに漏れる。

そのか細い声は、タトス、タトス……と繰り返していた。

誰かの名前なんだろうか。

こんな時に呼ぶんだから、きっと大事な人の名前なんだろう。

カノンも言っていた。死の間際にボクの名前を何度も呼んでいたって。

それを思い出したボクは、目の前の王女様とカノンの姿が重なり、思わず涙がにじむ。

カノンとカザリさんは口元に手を当て、大粒の涙を流していた。

他の皆はなす術もなく、ただ呆然と床に横たわる王女様を見下ろしていた。

アステリアとクトゥルーは彼女を見ても何の表情も浮かべず、平然とした顔をしている。

魔族の人間に対する認識をそこに見た気がした。


「陛下、この王女いかがいたしますか?」


アステリアがいつもの調子でボクに尋ねる。


「え? あ、どうするって……

 助けてあげたいけど……これってどうすれば」


グスっと鼻を鳴らし、にじむ涙を腕で(ぬぐ)う。

アステリアはそんなボクを見て心配そうな顔をし、すぐに解決策を答えてくれた。


「復元できますが、急がないと別の生命体になりかかっております」


別の生命体ってなんだ……

妊娠したように膨れたお腹が少し透けてるのが関係ありそうだ。

いや、今はそんなことより……


「お願い! やってやって! 助けられるのならすぐに!」


アステリアはボクに頼られたことがとても嬉しいらしく、満面の笑顔で答える。


「もちろんでございます!」


アステリアが魔力を開放する。炎の角が生え、髪も白くなっていく。

そして美しく小さい口が、呪文を紡ぎだした。

とんでもない早口で、人間には真似できないものだった。

アステリアの周りにお盆くらいの大きさの魔法陣がいくつも浮かび上がってくる。

彼女ならできるだろう。

肉団子(にくだんご)としかいえない状態になったボクも復活できたのだから……

しかしなんだこれ、魔法陣が大量に空中に出現して、アステリアの姿が見えない。


「レグゼリオン……」


アステリアが小さくつぶやくと、大量の魔法陣が光の束となって王女に降り注ぐ。

光を浴びた王女の身体が細かく分解されていった。

詳しくはわからないけど、原子レベルまでに分解されたのか、王女の姿が目の前から一瞬消え失せる。


そして再構築がはじまった。

みんな初めて目にする光景に見とれ、ただ黙って見守っていた。

骨が形作られ、内臓、血管、筋肉と、それらが本来あるべき場所へ次々に作られていく。

人体模型(じんたいもけい)のプラモデルが出来上がっていくようだ。

うあー、自分ではわからなかったけど、ボクもこんな感じだったのかな……

最後に皮膚が体中を覆い、青い髪が生え、美しい王女様がそこにいた。

ボクは安堵するとともに、少し余裕ができたせいでまじまじと王女様を見てしまった。


ええ、一糸(いっし)まとわぬ裸でしたとも。

元々身に着けていたドレスは、彼女の体の下に落ちて敷物(しきもの)のようになってます。

ええ、ガン見しましたとも。

しかし、胸が非常に……男みたいで……ええ、残念でした。

カノンがボクの背後から手で目隠しをした。

あ、やめてカノン見えない!

目隠しを外された時には、すでに誰かが持ってきたシーツを被せられていた。

王女様の体を、まさにお姫様抱っこしたヘイラさん。

寝室に運んで休ませるとのこと。

ボクたちはホッと胸をなで下ろし、王女様を見送った。



「さすがアステリア、よくやったね。見事だったよ」


彼女に微笑みかけると、その炎の角がフリフリと左右に揺れる。

相変わらず犬みたいだ。


「陛下のご命令とあらば、このアステリア、いつでも処女を失う覚悟でございます!」

「え……!?」


アステリアの炎も凍らせるんじゃないかっていうくらい冷たい目で、カノンとカザリさんがこっちを睨みつけてきた。

ついでにタイラーさんも。

その顔を見たボクは一人で青ざめる。

ボクはなにも見なかった、聞かなかった。

この件はスルーだ。


「でも、この魔法は本当にすごいね」


正直、アステリアのすごさが際立っている。

アステリアが赤い顔をして、体をウネウネと動かしている。

クトゥルーが同意してアステリアに賛辞(さんじ)を贈る。


「まったくですな。これを使えるのは全次元の中でも、アステリア様と元帥(げんすい)のヤハウェル様、あと数人がいるのみと聞いた覚えがございます」


尊敬の眼差しでアステリアを見つめると、彼女のウネウネが早くなっていく。

てか、元帥(げんすい)って誰だ……僕の次に偉い魔族ってこと?

アステリアが一番だと思ってたよ。

謁見の時もいなかったし……

あれ、いなかったってことは、え……?

もしかして裏切り者に含まれてるの?


ヒュプテさんが恐れげもなくクトゥルーに質問した。


「とても素晴らしい、驚くべき魔法でした。

 ところで死んだ者を復活する魔法や技術などは存在するのでしょうか?」

「それは聞いた覚えがないな、だらしなく髪を伸ばした人間よ。

 死霊を操り死体を動かすイザナミの術、あれも死者の復活魔法といえばそれに近いのかもしれんがな。

 生命の完全蘇生となると、噂に聞く【原初(げんしょ)】のみであろう」


だから名前で呼んであげて……

クトゥルーは見た目の特徴だけで呼ぶクセがあるようだ。

人間に対してだけかもだけど。

しかし原初か……初めて聞いたはずなのに、なぜか懐かしい気がする名前に、思わず口に出してしまう。


「原初……」

「はい、陛下もご存知のように生命を生み出す神と言われております」


あ、いつの間にか繰り返しテク使ってたよ。

本当に便利だなこれ。万能すぎる。

うん? ボクはカノンを見て思い出した。

あれ……そうするとカノンを生き返らせた勇者メーヤって何者なの?

完全な復活の魔法も技術も存在しないはずなのに……

クトゥルーの話でカノンを見たのはボクだけではなく、ヒュプテさんもだった。

ボクと同じことを思ったのかもしれない。

ずっと見つめているボクに、カノンは嬉しそうに微笑んだ。

かわいい……



王女を寝室に運んだヘイラさんが帰ってきた。

彼女はボクに(うやうや)しく一礼をした。


「陛下、王女殿下が目を覚まし、お話をしたいそうです」

「え、もう目を覚ましたの?」


そういや、ボクも回復してすぐ目を覚ましたっけ。

ボクたちは王女が休んでいる寝室に向かった。


王女の寝室に入ったのは、ボクとヒュプテさんにアステリアとクトゥルーだ。

メイドに(うなが)されて部屋に入ると、王女様はベッドの上で上半身を起こしていた。


「アキラ様……ある程度のお話はヘイラより聞かせていただきました」

「え?」


王女様は口を動かしたけど、ふぉーんという意味不明の音しか聞こえなかった。

そういえば、やたら声小さかったっけ。

ボクは失礼して王女様のすぐそばまで近づく。


なるほど、王女様はヘイラさんから事情を聞いたってことね。


「この度は本当に……感謝しても、感謝しきれない御恩を受けました……」


王女様は自分の肩を抱きしめ、震えながら涙を流す。

化け物だらけの世界に放り込まれ、怪物に食われて死にかけたのだ。

その恐怖は想像を絶する。


「よくがんばったね。とにかく無事で良かった」

「本当に……ありがとうご……ざいま……す。ぐすっ……」


ボクももらい泣きしちゃう。

涙をごまかすようにわざと元気にふるまう。


「いやいや、お礼ならこっちのアステリアに言ってあげて。

 彼女のおかげで助かったんだよ」


王女様はアステリアに感謝し、深々と頭を下げた。

「こんな格好で、しかもベッドの上からという失礼極まりない状態ですが、お許しください」


ボクは首を横に振る。


「大変な思いをしてきたんだ。まずはゆっくり休んでくださいね」


王女様がまた頭を深々と下げる。

王族の人に頭下げられるってなんかすごい光景だ。


「陛下、ヘイラより聞きましたが、これから異世界にお行きになるとのこと。

 それで実は……お願いが……

 助けていただいた上にお願いまでするなんて、とても図々しいことだとはわかっております」


王女様がボクの手をそっと握ってくる。

うわ……細いけど、やっぱり女性の手って柔らかい……

ボクが真っ赤になっていると、アステリアがボクの背中から抱きついて、ぎゅーぎゅーと胸を押し当ててくる。

いや、いきなりなにしてるの!? すごく気持ちいいけど……場所考えて!?


「あ、アステリア、ちょっと意味がわからないので、少し大人しくしててね」

「ぐはっ!」


アステリアがしょぼんとうなだれ、静かに下がっていく。


「ごめんね。それで……お願いってなに?」


王女様が止まらない涙を流すままにボクを見つめてくる。

ほんとに綺麗な人だな……


「私も一緒に連れて行ってください」


「……え」


「まって、せっかく戻って来たのに? また恐ろしい所に行きたいって?」


王女様はうつむき、何度も口を開き、なにかを言おうとするのだが言い出せずにまた口をつぐむ。

よっぽど言いにくいのかな。


「まって、言いにくいことなら言わなくていいけど。

 ただ、わかってると思うけどとても危険だよ? それでもいい?」


王女様は顔を上げ、ボクをじっと見つめ、意を決して話だした。


「アキラ様、私の大事な人があちらの世界にいるのです。

 だから……迎えに行きたいんです」

「もしかしたら、次は戻れないかもしれないよ?」

「だからこそ行きたいのです。彼と一緒なら戻れなくてもいいんです」


王女様の気持ちは痛いほどわかる。

西野さんと違う世界に放り出され、会うことができない。

ボクだって西野さんと一緒にいられるなら、どんな世界でも良かった。

王女様はとてつもない恐怖を味わったというのに、大事な人の元に行きたいって言うんだ。

よっぽどその人のことを大切に思ってるってことだ。


「わかった。一緒に行こう」


王女様は力を込めてボクの手を握りしめ、そのまま深々と頭を下げた。


「じゃあすぐに準備はじめてね。出発するよ」

「はい」



ボクたちは屋敷の出口に向かって歩く。

アステリアが桜色に染まった顔で、ボクの腕に自分の腕をからめてくる。


「私も、どんな世界に玉体を運ばれても……お迎えに行きます」


悲しそうな顔で微笑んでいる。

そうか……彼女も魔王が行方をくらまし、15年探し続けたんだ。

アステリアの本当の探し人はボクじゃないんだけどね……。

ボクは彼女に悪いと思いつつも微笑んだ。


「ありがとうアステリア、ボクだってキミを探すさ」


アステリアの顔が真っ赤を通り越し、顔が炎に包まれてそのまま倒れた。


「うわ! アステリア!! 大丈夫!?」


彼女は真っ赤なにやけ顔のまま失神していた。

顔から火が吹くって……こういうこと?


思わず苦笑してしまったけど。

変な話だけどアステリアの探し人もいつか見つかるといいなとボクは思ってしまった。

相手は魔王だからボクの心境は複雑だったけどね。


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