04 訓練
少し短めの一章第4話です!
よろしくお願いします!
〜前回のあらすじ〜
全部隊に通達された、次の任務。
みんな盛り上がる中、リオは心配が止まらなくて、全然眠れない!
「リオにぃ、起きて下さいませ。朝食の時間が過ぎてしまいます」
「ふぁぁぁぁ……」
「フフッ珍しいですね、リオにぃが朝遅いなんて。昨日は遅かったのですか?」
「……ん、まぁ……」
結局リオは、2時過ぎまで寝付けなかった。
考え過ぎだとリオ自身、自覚しているのだが、やはりどうしても落ち着くことができない。
だが、エレミアには心配かけまいと、眠たげな様子で何とかはぐらかす。
身なりを整え外に出た二人は、少し急ぎ足で食堂へ向かった。
朝食は完全バイキング制。
部隊証と呼ばれる各部隊専用のカードを提示することで、部隊の総資金から飯代金が引かれるというシステムになっている。
その利便性から普段は混み合っている食堂だが、今日は時間ギリギリのため人が少ない。
皿に料理を取り、近くの空いている席に腰を下ろした二人。
食事を取りつつ、今日のスケジュールを各自確認する。
ひと段落ついたエレミヤが、リオに尋ねた。
「リオにぃ、今日は一日中訓練ですか?」
「まぁ僕はそうする予定だが……」
昨日までこんを詰め過ぎたことを反省したリオは、今日一日を修練場での訓練に当てると決めていた。
「私もご一緒させて頂けませんか?実戦前に一度調整しておきたくて……」
「構わないけど、僕のトレーニングメニューは人よりハードだぞ?大丈夫か?」
他の人が言えば皮肉に聞こえる言葉だが、リオの口から出たならば、そうは聞こえない。
実際リオの戦闘力は、現在の部隊の中ではその最高級を誇っており、そのために積まれる訓練の厳しさも異常であることに相違ない。
エレミヤはそれを分かった上で、よろしくお願いします、とだけ言い、食事のペースを上げた。
食事を済ませた二人は寮に戻り、装備を手にした後、修練場を訪れた。
魔導正教会本庁内部に設置されたこの修練場は、十種類のブースによって区切られている。
各ブースで鍛えることのできる箇所が異なり、ここも食堂同様、普段なら賑わいを見せているはずだったが……。
「人が少ない、ですね……。みなさん外部訓練を行っているのでしょうか?」
「まぁ本当の実戦経験は外部でしかできないからな。作戦の緊張感を味わいたいって奴らは、みんな外に出てる」
一旦言葉を切りため息をついたリオは、でも、と話を続ける。
「俺たちは既に緊張感を持ってる。戦闘の何たるかを知っている。今外部に出てるのは、今まで緊張感の無かった奴だ。本当に鍛えたいならここ以上に最適な場所はない」
そう言って最奥の巨大ブースに入ったリオは、早速黒い箱型の通信機で、最高難易度の魔獣シュミレーターを起動させる。
大きな音を立て、光と共に現れる巨大な魔獣。
「グギャァオオォォォォオオオオーーー!!」
大陸南部の最果てで暮らす魔獣、『インペリアルドラゴン』。
今まで人類種が倒してきた中で、最も強いとされる魔獣。
エレミヤが呆気に取られ、遠い向こう側のように魔獣を眺める中、リオはそれに向かい一気に駆け出した。
「うおおぉぉぉぉぉぉぉぉーーーッ!!」
大きく振り下ろされる大剣。
それを硬い鱗で弾き返した魔獣は、リオの体が浮いたのを隙と見て、携えた鉤爪でリオの腹部を引き裂くーーかと思った瞬間。
リオは読んでいたかのようにそれを足蹴にして、後ろに大きく跳び、間合いを取る。
しかし即座に戦略を切り替えた魔獣は、遠距離広範囲の「火炎の咆哮」という容赦ない攻撃。
それを避けきないと判断したリオ。
大剣を落として、両手を前に構えることで淡い光を放つ盾を生成し、何とかその攻撃を受け止めた。
だが、止め処なく魔獣の攻撃は続く。
近づけば鉤爪、離れれば咆哮という単調そうに見えて、使い分けの難しい戦い方を難なくこなすその魔獣は、最高難度に相応しいと言える。
激しい衝突を見て、ようやく自分の立場を理解したエレミヤは、すぐさま支援に入った。
「『超加速』『超跳躍』『火耐性』『超体力』付与!」
手を伸ばして大きく叫ぶと同時に、リオの体が金色に輝く。
まだ幼いエレミヤが第二部隊という優秀部隊への配属を許された訳。
それは、彼女が「高付与魔法師」であるから。
無印の「付与魔法師」であれば、王朝内に数多くいるが、"高"とつくのは、この王朝でたった一人、エレミヤだけである。
ーー遅くなってしまい申し訳ありません、リオにぃ!
ーーおう!ちゃっちゃと片付けるぞ!
心の通じ合った二人に敵うものなどいない。
先ほどまでの劣勢が嘘のように、魔獣を圧倒し始める。
王朝で唯一の「高付与魔法師」が第二より高い部隊に配属されない訳。
それは、リオとの圧倒的信頼関係。
リオと共に戦うことで生じる、完成された連携。
一時間ほどの間繰り広げられた魔獣との戦いは、最終的にリオとエレミヤに軍配が上がった。
大きな祝福音と共に、力尽きた魔獣が光の粒となって消えていく。
強くハイタッチを交わした二人。
やっと終わりました〜、とエレミヤが安堵する中、リオが再度通信機に近づく。
そしてエレミヤを見てニヤっと笑い。
「第二回戦、スタートだ」
リオによる地獄の訓練が始まった。
……時は流れ、19時を過ぎた頃。
チャンチャンチャンチャラララーン!
十回目の祝福音を聞いた二人は、力尽きてその場に倒れこむ。
「はぁ、はぁ……さす、がに……げん、かい……です……」
「はぁ、はぁ……きぐう、だな……ぼく、も……げん、かい……だ」
ノルマの十体を見事に倒しきった二人は、閉館時間の迫る中、その場で眠ってしまった。
一章第4話御読了ありがとうございます!
いつかのあとがきで、一章は4話構成だと言った気がするのですが……ごめんなさいm(._.)m
次で一章完結予定なので、もう少しだけお付き合いください!