03 通達
一章第3話です!!
よろしくお願いします!!
〜前回までのあらすじ〜
法界使の要望より、作戦の最前線を担う事となった第二部隊。
大天使に関する数々の謎。
リオたちの不安が募る中、作戦内容が全部隊へ通達がされる。
遂に、全634部隊に任務の通達が為された。
その内容は以下の通り。
『魔導正教会本庁より通達する。
次の十五夜より新たな作戦を開始する。
該当部隊はすぐさま相応の準備を整え、提示時刻に第一関門へ集合せよ。
(作戦名)
天使狩り
(作戦内容)
アマツカゼ王朝に奇襲を仕掛け、天使を駆逐する。
(作戦時刻)
十五夜20時
(該当部隊)
第一部隊、第二部隊……(略)……総勢420部隊
本任務は奇襲のため、口外無用とする。
情報漏洩は敵国スパイと見なし、生半可な処罰では許されない事をゆめゆめ忘れぬよう。
上記を以って、任務通達とする。
誇り高き人間諸君ら、豪然たる獅子の姿を常に思案し、実行せよ。』
「ふーむ、420とはやけに少なく出たね」
久しぶりに第二部隊全員で集まっての昼食中、この通達にまず声をあげたのは、黒の長髪が似合う第二部隊所属のシーア=ディアストム。
国内でも僅か六人しかいないと言われるとても希少なな"精霊使い"である。
その言葉を聞き、カルマも同意するように頷き、
「やはりそこだよな。奇襲っつーのはまだ良いが、少し天使を舐め過ぎてる気がする」
一桁部隊、つまり第一部隊から第九部隊までは、各五人編成。
二桁部隊はその倍の十人編成。
三桁部隊はさらに増えて十五人編成。
今回の任務は単純計算で、総勢六千人弱といったところだ。
「まぁ確かに三十年前に比べれば少ないけど、奇襲ってバレたらおしまいでしょ?法界使様もそれを危惧してのことだと思うんだよね」
「そうは言ってもよー隊長。相手は天使、数で大きく勝ってなきゃ勝ち目はないと思うが?」
正論を返すコスリグトに対し、再度正論を返すカルマ。
こうなると議論は収束がつかない。
それを理解したコスリグトは、笑ってごまかす。
「んま、リオくんがいれば何とかなるって!だいじょぶグッジョブ!」
「この人の指揮とか心配で仕方ねーわ俺」
「あっ、ひっどーい!カルマっち、今のは流石のうちも傷付いたよ⁉︎」
コスリグトがボケてカルマがつっこむ。
そんな和やかな雰囲気の中、リオだけは浮かない顔をしていた。
「リオにぃ。やっぱり不安ですか?」
「ん、まぁ。勝算がないのが現状だからな」
リオは素直にそう答える。
それを見たエレミヤは純粋な目でリオに尋ねる。
「リオにぃの力でも勝てない、と?」
「敵が一体や二体なら僕だけで何とかなるかも知れないけれど……カルマの言った通り、他の部隊の連中は天使の力を侮ってる。その緩みが敗北に繋がりそうでとても怖い」
実際、周囲は先程からお祭り騒ぎである。
武器屋や装備屋が部隊の人間で賑わいを見せ、この食堂といつもより嬉々としている。
戦う前の雰囲気として、それほど悪いわけではないが、どうも彼らが油断しているような気がしてならない。
「まぁリオもそう堅苦しくなるなって。別に彼らも天使の怖さを知らないわけじゃないさ。三十年前の悲劇を聞いたことがあれば、誰でも怖い。それでも明るく振舞おうと努力しているんじゃないのか?」
「それならいいんだが……」
シーアの宥めで少し堅さの取れたリオだが、やはり完全に拭い去るには至らなかった。
結局眠れないまま、夜も情報収集に時間を費やした。
本来、図書館の営業は18時まで。
しかし今夜は、次の休みに本の整理を手伝うということを条件として、特別に開けてもらった。
「やはり八体目の存在がいる」
山積みになった文献を漁り、そう確信したのは22時を過ぎたあたりだった。
急いで帰る支度をし司書さんにお礼を言って図書館を出たリオは、夜風に当たりながら先ほど得た情報を整理する。
これまでは全ての大陸を一つに総括した文献を読んでいたが、今日は一つの大陸について書かれたものをそれぞれ二冊ずつ、全大陸分十六冊読了した。
通常であれば2、3日を要するこの作業がたった一晩で終わったのは、リオの読む速度によるものではない。
一桁部隊専属の技術者から試供品として提供された、読む速度が格段に上がる特殊な眼鏡を使用したからだ。
リオにこの仕組みは理解できないが、提供者と性能の良さは信用できるため、情報収集の際は必ず持ち歩き、愛用している。
その中で今日得た情報は大きい。
"天使狩り"と深く関わりがあるわけではないが、何とか大天使の謎を一つ解くことができた。
八つの大陸に、七体の大天使。
まずリオが調べたのは、この世界で最も小さい大陸、アルカナ。
アルカナ大陸に関する文献で、最も記述される頻度の高い大天使の名を"ラグエル"と言い、今でも神々しい壁画などが残されているという。
おそらく"ラグエル"と呼ばれる大天使が、アルカナを支配していたと見て間違いはないだろう。
その次に小さい大陸、カッシリーナ。
この大陸では"ゼラキエル"と呼ばれる大天使が支配していたようだ。
そのように見ていくと、
三番目に小さい大陸、レグルスには大天使ウリエル。
四番目のマリスリーズに大天使レミエル。
五番目のスズラミオンに大天使ミカエル。
六番目のヨーメルファに大天使ラファエル。
そして、七番目のキルスリーゼに七体目の大天使ガブリエル。
つまり残されたサザンクロスは。
「サザンクロス大陸を支配していたのは、大天使じゃない……」
そこまでは辿り着くことができた。
文献によれば、他のどの大陸でも僅かながらに大天使の痕跡が残されている。
それは、大天使の描かれた壁画や、五百年前に直接恩恵を授かったと言う部族など、様々な形で語り継がれている。
それと比較すると、確かに人類種と天使族が暮らす大陸、このサザンクロスでは大天使の話を聞くことが少ない。
やはりサザンクロスに八体目の大天使がいたとは考えにくい。
「この大陸を支配していた、大天使以上の存在……」
これを以って、八大陸と七大天使における、不可解な数の誤差に関する疑問は解けた。
しかしこの解決を果たしたリオは、また新たな疑問にぶつかる。
ーーだとしたら、アマツカゼ王朝が復活させようとする大天使は誰だ?この土地に大天使がいなかったと仮定するならば、それは復活ではなく新たな天使の創造。だが、そんなことが可能なのか?自分たちより強大な力を創造するなんて、いくら天使でもチートが過ぎるだろう。
では創造でないとするならば、の可能性をリオは考える。
そうなるとやはり、この話自体がでまかせだった、というのが有力だ。
法界使の話すことはほぼ全てが裏付けありきだが、今回はそういうわけではないとリオは思う。
グロネウス様は本当に確証を持っていない反応だった。
だが、例えその噂が本当に嘘だったとしても、現時点でそう断定するのは早計な気がしてしまうのは、自身の性格故だろうか。
突然通り過ぎた冷たい風に吹かれ、リオは小さく身を震わせる。
風邪をひくわけにはいかないと思い、閑散とした寮までの道を歩き出した。
ーーまだ抜けている部分が何処かにある。
そう思うリオだが、その鬱積した気持ちを晴らせぬまま、その日も幕を閉じるのだった。
一章第3話、御読了ありがとうございます!
ここまで読んで頂けて感無量です……m(._.)m
一章も残り僅かですので、もう少々お付き合い下さい。
あと、参加された方々、コミケお疲れ様でした!
ちなみに私は参加できませんでした……(>_<)