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02 提案


一章第2話です!!


〜前回までのあらすじ〜

リオとエレミア、仲の良い二人!

そんな中、コスリグト隊長から会議室に呼ばれたリオたちは……果たして⁉︎


よろしくお願いします!


「おーリオくんにエレちゃん!こんな遅くにごめんね〜〜!」


陽気に声をかけてくるグリ隊長。

しかしそんな声などほとんど頭に入らない。

なぜならその隣に座っているのは……


「……なぜ法界使であろう方がここに?」


「我が名はグロネウス。職名で呼ばれるのは好みでないぞ」


法界使ーー魔導正教会のトップ5を総称してそう呼ぶ。

彼らは、このラブストブ王朝において絶対的な権限を持ち、一国民が逆らうなど断じて許されない。

事実、この国の王である。


「失礼いたしました、グロネウス様。このリオ=シグニフォードにどのようなご用件でしょうか?」


「まぁそう堅くならんでよい、座れ小僧。コスリグトとエレミヤ、お主らは席を外してくれ」


「なっ!何故に私がっ!」


咄嗟に反論するエレミヤに対しコスリグトが。


「はーい!エレちゃんはここで退出でーす」


そう言ってコスリグトに引きずられるエレミヤは、必死に抵抗するがそれも敵わず。

会議室のドアが音を立てて閉まると、リオは再度姿勢を正し、目の前の男に視線を向ける。


ーー法界使が一人、グロネウス=リード

この男とは何度か顔を合わせたことがあるリオだが、こう二人きりになるのは初めてだ。

年寄り口調に似合う白く長い髭を生やした老人は、コホンと一つ咳き込んで、場を整理する。


「時に小僧。今度の任務については聞いておるか?」


「いえ、まだ」


リオがそう答えると、グロネウスは少し間を取り、その重そうな口を開く。


「今回の任務は、天使狩りじゃ」


それを聞いたリオは、法界使を前に少し眉をひそめた。


「……それは法界使の決定事項ですか?」


「そうじゃ。本日の法界使会議で正式に決まった。他の部隊には明日通達する予定になっとる」


天使狩り。

この任務が"戦争"と表されないのは、正攻法で挑まないという点にある。

つまりアマツカゼ王朝への奇襲。

事前通達なしに一気に攻め込む。

今までは勘付かれずに接近する方法がなく、採択されなかったのだが……


「情報が手に入った、ということですか」


「察しがいいの。その通りじゃな」


「……」


実際のところ、リオはこの状況を予期していた。

毎度繰り返される会議の議事録の中で、徐々に"天使狩り"が話題となる機会が増えていたのだ。


ーーただ時期が早すぎる。


そう思い顔をしかめるリオに対し、グロネウスが尋ねる。


「不服かの?」


「不服ではありますが、反対はしません。実際、後手に回ると勝ち目はないですから」


法界使の決定は国全体の決定。

反対したところで良いことはない。


「それで、ご用件というのは?」


「あぁそうじゃった。今度の任務、420部隊の編成を考えておるが……」


「420、ですか」


以前から、奇襲であれば少なくとも500部隊は派遣すべきだ、とリオは考えていた。

奇襲は失敗すれば終わり。

二度とその機会が訪れることはない。

だからこそもう少し慎重に時期を見るべきだというのが、リオの考えなのだが……


「お主ら第二部隊に最前線を任せたいと思うてな。元は第十三部隊を投入する予定だったんじゃが、それでは戦力が足りない気がの」


最前線をどこにするかというのは、大きな問題。弱い部隊を選んでしまえば、そこから一気に崩されてしまう恐れがある。

しかし、第十三部隊といえば、二桁部隊で最も優秀とされるところ。それで尚戦力が足りないというのに、この作戦に勝ち目はあるのかと疑ってしまう。


「これはわしの独断じゃ。お主らが素直に聴く必要はない」


そして一度大きなため息をつき。


「じゃが、第十三部隊では勝てん。それはほぼ確信の域におる」


「そんな状況でなぜこの任務を?」


「小僧も言っとったろうが。時間がないんじゃよ。もうすぐ天使が攻めてくる」


ーーその根拠はなんですか?


リオはそう聞こうとしたが、失礼に値すると感じ口を紡ぐ。

それを察したかのようにまたグロネウスが口を開く。


「大天使の復活」


グロネウスのその言葉にリオは一瞬耳を疑った。


「天使の王が大天使の復活を企てとるっちゅう話があっての。嘘か真かわからんが、復活されちゃあ王朝どころか世界が支配される。この噂を放っておくわけにはいかん」


「そ、それは……」


「んで、本題に戻るが、頼めるかの?」


少し考えた後、大天使のことを踏まえて、了承するしかないと判断したリオ。


「……私は了解します。でもその前に隊長に確認を取らなければ」


するとグロネウスは顔にしわを作って笑い。


「その必要はないぞ。コスリグトは小僧の決断に委ねると言っておった。まぁ部隊は前衛が一番負担がかかるからの。あいつなりの配慮じゃな」


こうして息の詰まる話し合いが終了した。


疲れた様子で会議室から出てきたリオを、涙目になったエレミヤが迎える。

どうやら大まかな話はグリ隊長から聞かされたようで、黙ってリオの答えを待つ。


「了解してきた。第二部隊はこの任務を最前線で行う。僕の決断は、それだ」


そう告げたリオはほぼ間違いなく怒られると思っていたが、エレミヤの反応は意外だった。


「やはりそうですか……まぁこの国にはリオにぃがいないとダメってことですね!第二部隊の力を見せつけてやりましょう!」


それに合わせてオー!、とグリ隊長が拳を掲げる。


その後少しの歓談を挟み、他の隊員にはうちから話しとくね〜、というコスリグトの言葉を最後に本庁を解散した。


リオたちの帰宅から約一時間後の20時過ぎ。


『全員納得オールグリーン٩( ᐛ )و』


グリ隊長から、そう書かれたメッセージがリオに送られてきた。

あまりに早い反応に少し驚くが、それが第二部隊らしくてつい笑ってしまう。


みんなは任務のことをどう思っているのだろうか?

やはり天使と戦えると燃えているのだろうか?

戦うべきでないと考える自分は異常なのだろうか?


リオは風呂に浸かりながら、一人、そんな事を考える。

結局リオは、眠りにつくまで、天使狩りに対する不安が拭えないままでいた。



翌朝。

リオは図書館にいた。

任務のことが頭から離れず、天使に関する情報を少しでも多く知っておくべきだと判断したのだ。


「太古の時代、七大天使はそれぞれ一つずつ、計七つ

の大陸を支配していた……か」


知ってはいた事だが、リオは改めて驚かされる。

一体で一つの大陸を支配するなぞ、さぞかし強大な力を有していたに違いない。

そしてその力を僅かながらにも受け継ぐ天使たち……


「どう考えても勝てる気がしないんだよなぁ」


だが、背に腹は変えられない。

大天使が復活することを思えば、今仕掛けない手はない。


「それにしても、だ」


妙に引っかかるところが二点ほどある。


まず一つ目。


「なぜ七大天使は同時に消えたのか……」


文献によれば、七大天使全てが一晩を境に突如として消えたらしい。

しかしその消えた理由も証拠も文献には残されていない。


そして二つ目。

この世界の大陸は八つ。それに対し大天使は七体。


「大天使の数が明らかに足りない……」


どの文献も同じ。

大天使の名前は記載されていても、それぞれが支配していた具体的な大陸名が書かれていない。

八体目の大天使がいたのか、その他の存在なのか。

どうしてそれを隠蔽しているのか。

考えれば考えるほど、謎は深まるばかりだ。


懸命に思考するが、リオの低血圧な頭では全く見当がつかなかった。

もう諦めて次の資料に目を移そうとすると、リオの背後から声がかかる。


「朝から勤勉だな、リオ。天使についてか?」


「おはようカルマ。まぁ、ちょっと……」


第二部隊狙撃手、カルマ=ツェベスト。

その優れた容姿と冷血な態度から「青の貴公子」と呼ばれる、狙撃の名手である。

リオの隣に腰を下ろしたカルマは、目の前に積まれた文献の一冊を手に取り、眺める。


「昨日は悪かった。僕の独断に巻き込んで」


「いや、いいさ。法界使様直々とあれば、断る方がいかれてる」


そう言ってリオを肯定したカルマは、大きくため息をつき、愚痴を漏らす。


「でも俺ら如きが天使にゃ勝てねーよ」


「やはりカルマもそう思うか……」


自分と同じ意見のカルマに安心を覚えると同時に、勝てない、という言葉がリオの胸に刺さる。


「でも僕らに拒否権はない……」


「ま、だから情報を集めに来たっつーことだろ?」


「僕が了解してしまった以上、第二部隊の責任は僕にあるようなものだから。誰一人として死なすわけにはいかない」


カルマは相変わらずだな、と笑い、再度文献に目を落とした。


文献によれば、過去に行われた大戦はたったの二回。


一度目は九十年前。

だがこの時の記録はほとんど残されておらず、当てにできないのが現実だ。

唯一わかるのは、人類種が敗れたということ。

記録がないのはそのせいかもしれない。


そして二度目。

この三十年前に行われた大戦こそ、"最悪の戦"。

この時の記録はかなり詳細に取られているが、それでも三十年前の文献。

今とは戦い方や戦力が大きく異なっている可能性が高く、その信憑性も不確かだ。


「完全に袋小路じゃねーか」


そう呟くカルマ。

結局朝食ギリギリまで粘った甲斐なく、めぼしい情報は得られなかった。


そして昼間に差し掛かる11時過ぎ。


全634部隊に任務の通達が為された。


一章第2話御読了ありがとうございます!


書いてる途中でどんどん次の展開が出てきて、書き直す羽目になってなってしまうのが、最近の悩みです……笑笑


まだまだ駆け抜けますので、よろしくお願いします!

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