オール・ユー・ニード・イズ・モブ
『悪徳領主ルドルフの華麗なる日常』で有名なmaster1415先生とあねおれの夢のコラボが実現しました!
(コラボといいつつ企画立案やストーリー構成だけでなく、あねおれキャラの台詞の一部までmaster1415先生が担当してくださったのはナイショ! master1415先生パネェ!)
さらに同じお話をルドルフの視点で書かれている『あくおれ!~悪徳領主な私おれの楽しい異世界生活~』もmaster1415先生のほうで同時投稿中!
片方だけ読んでも楽しいですが、どっちも読むとさらに楽しいという一粒で二度美味しい作品です!
そしてmaster1415先生! 年間ランキングコメディ部門1位獲得おめでとうございます! いやっほーぃ!
「あぁ~~~だりぃ~~~」
どうもこんにちわ。
冒険者ギルドアルゼン支部の実力派、ナンバーワン受付嬢の呼び声高いマリーシア・ホルンです。
っていうか、めっちゃだるいです。
昨夜ムラサキさんと『銘酒オーガ殺しDE一気飲み!』対決したんですけど、まさかのレフリー(ヒイロさん)ストップで終わりました。
つーかなんなんだよあの女。若さとかわいさと巨乳と強さだけじゃ飽き足らず、この私に酒でも追随してくるとか意味不明ですよ。
・・・まさか、私、よく考えたらムラサキさんに勝ってる箇所が一つもない?
いやいやいやいや、そんなこたぁない。そんなこたぁないはずですよ。
私、人気者ですしね。
ほら、ちょっとウインクでもしてやれば受付には冒険者が即殺到ですよ。
「パチン!」
「・・・」
あれ、顔をそらされた。
おかしいですね。若者だったから恥ずかしかったのかな?
もう一度。
「パチン!」
「・・・・・・」
今度は中堅どころを狙ったのですが、早足でいっちゃっいました。
まぁあの人は奥さんいますからね。
本気になられても困りますし、しょうがないですね。
・・・あ、ちょうどいい人材が。
腕は悪くないが女にだらしないと評判のラウルさんがいますね。
あんなのひっかけてもどうでもいいですが、一応やってあげましょうか。
「パチン!」
「・・・・・・キモッ」
「おい待てやラウルてめーギルド永久除名か森にブルーハーブ採取1000往復か好きなほう選べや。」
「どっちもいやに決まってるだろ!」
あのおっさん逃げやがった。
ちっ、ロクな男がいないじゃない。
誰だよ『ギルド嬢は有望な若手を丸め込んで玉の輿狙える!』とか言ってたやつ。
全然嘘じゃないですか!
「あーあーだるいなー。せっかくヒイロさん一人だったのに魔法の特訓とかいって外いっちゃったしなー。めんどくさいなー。もう仕事やめたーい。」
まぁギルド職員クビになったら死活問題なので仕事やめたいは嘘ですけどね。でもそのくらいだるいってことです。
とか思ってたら一人の男性がギルドに入ってきました。
「フン、小汚い所だな。」
ギルドに来るなりしょっぱなから暴言を吐く男性。
ですが、やばいです! すごいイケメン!
年は私よりちょっと下くらいですかね? 黒髪に紫色の瞳とかなり珍しい風貌です。
ちょっとヒイロさんに似てるっていうか、ヒイロさんをもっとかっこよくした上で貴族オーラを纏わせたような感じ! キタコレ!
「なんだあいついきなり・・・まぁ実際汚いけど。」
「こんなとこに来たこともない貴族様なんでしょ・・・汚いのは同意だけど。」
「でもあの貴族様、オーラ半端ねぇわ。関わらないほうが身のためだな。実際汚いし。」
「そうだな、あんなヤバそうなのに関わるのはアホだけだぜ。汚いのは事実だしな。」
周囲の冒険者たちがイケメン貴族をチラチラ見ながらなんか言ってます。
うるせーモブども道をあけろ! この私の輝かしい玉の輿貴族夫人ロードを邪魔するべからず!
私は猛ダッシュをかけイケメン貴族さんに話しかけました。
「こんにちわ! 本日はどのようなご用件ですか!?」
冒険者たちが『マリーシア積極的に関わりにいったぁぁぁぁ! アホおつ!』みたいな顔で私を見てます。
うるせー! 虎穴にいらずんば虎児を得ずですよ!
すると、イケメン貴族さんが私に答えました。
「おい、この街で一番の冒険者を呼べ。」
めっちゃ上からめせーん! 典型的貴族ぅー! でもイケメンだから一応キーーープ!
「この街で、ですか? えっと、ご用件は? 薬草採取ですか? それとも迷い犬探し?」
「聞こえなかったのか?私はこの街で一番使える冒険者を呼べと言っているのだ。」
そういうと、イケメン貴族さんはカウンターの上に何やらピカピカしてる物体を放り投げました。
これは・・・
「ブフォ!?」
つい吹いてしまいました。
イケメン貴族さんが無造作に放り投げたものは金貨でした。
金貨て。ここアルゼンですよ? 新人冒険者の集う街ですよ? 金貨一枚に匹敵する冒険者なんて・・・
まず、ノエル様は無理ですね。貴族嫌いだし。
あとは、ムラサキさん・・・はダメだ。
あの人何やらかすかわかんないですし。連帯責任で私まで道連れにされたくありません。
とすると、残りは一人!
「います! いますよ~。ヒイロさんっていうアルゼンギルド専属のおすすめ冒険者が!」
ヒイロさんなら魔法使いだし大丈夫でしょ!
てゆーかヒイロさんで無理だったらもう他の街いってくださいって感じです。
「それで?」
「ヒイロ・ウイヅキさんという方でこの街で一番の(話が通じる)魔法使いです! 攻撃・防御・回復なんでもござれのオールラウンダーな上、冒険者なのにも礼儀正しくて文字の読み書きや数字にも強くて専門職真っ青です!」
「・・・ウイヅキ? 貴族なのか?」
「!?」
え、マジでヒイロさんたちって貴族なの?
確かにそんな噂があることはあるけど、実際どうなんだろう?
日常的に漢字使うわ商人より計算上手いわと疑わしいところは多々あるけど、貴族出であんな人たちいるかなぁ?
まぁいいか。その方向でいこう。
「実は、どこぞの大貴族の隠し子だって噂がある人で・・・秘密ですよ?」
「ほう、そこまでの男か・・・いいだろう、その男を紹介しろ。」
「えっと、今日は確か西門からちょっといったところにある岩場で訓練してるとかしてないとか?」
「ならばそいつの元まで案内しろ、いいな?」
そう言うとイケメン貴族さんは懐から追加の金貨を一枚取り出し、カウンターの上の金貨に重ねて私に差し出してきた。
・・・え!? こ、この金貨、私に!? 依頼料じゃなくて、私個人に!?
こ、こいつぁやべぇ!! 私の人生、二度目の大物やー!
「喜んでー! あ、お荷物とかあったらお持ちしますよー!?」
『あ、やっぱ金貨なしで』と言われる前に流れるような動作で金貨を受け取り懐に入れる。
やりー! もう私のもんー! 返せって言われてもゴネてできるだけ返さないー!
どうしよう、今晩は居酒屋でお酒全種類いっちゃいますか!?
えへへ、一回でいいから『このメニューにあるやつ、上から下まで全部持ってきて』ってやってみたかったんですよね!
イケメン貴族さんをヒイロさんのところまで案内するために街中を二人で歩きます。
とりあえず将来のためにも情報収集しましょう。
勝利のためにはまず情報を集めるのがベテラン冒険者の鉄則です。
「あ、あのー、もしよかったらお名前を聞かせていただけたらなって! テヘ!」
「・・・ルドルフ=ファーゼストだ」
「まぁ、素敵なお名前ですね♪」
よっし、この名前は絶対貴族確定でしょ!
この名前と態度で平民だったらサーベルで切り刻むけど!
「どこからいらっしゃったんですか? 王都のほうですか? 実は私の実家も王都の方なんですよー! 奇遇ですね!」
「・・・」
本当です。
まぁ実家の方角が王都の方なだけで、王都出身ではないですけど。
嘘は言ってませんよ?
「ルドルフ様は独身ですか? あ、ちなみに私独身なんですよお揃いですねこう見えても料理が得意なんですよーあ、今食べてみたいとか思いました? どうしよっかなー?」
「・・・・・・」
「ルドルフ様がどうしてもっていうなら手料理をご馳走することもやぶさかではないと言いますかーこれから私の部屋に遊びにきちゃいますかとか言っちゃいますけど誘ってるわけじゃなくて~」
ドン!
すると、ルドルフ様は突然壁に手をやり私を押し付けました。
こ、これはもしや、この前ヒイロさんとムラサキさんがやっていた『壁ドン』とかいうやつでは!?
なら、ここで正しい反応は!
「・・・きゃぁ♪」
フィーーーッシュ! 大物フィッシュキター!
ちょっとあまりの急展開に驚きを隠せません!
そしてルドルフ様は私の顎に手を伸ばしました。
「あっ♪」
これはあれですね! この前ヒイロさんとムラサキさんがやっていた『顎クイッ』とかいうやつですね!
いいなーと思って見てましたから間違いありません!
キター! 私の時代がキターー!!
ヒイロさんごめんなさい・・・私、追う愛には疲れたんです。誰かに愛されたいんです!
あ、誰かっていっても誰でもいい訳ではなく若くてイケメンでお金持ち限定ですが。
とりあえず目を瞑って今後の展開にドキドキする私。
すると。
「喚くなメス豚! 受付嬢の分際で気安く声をかけるな。」
「え」
・・・・・・今、なんて言った?
あれ、そして私の顎に触れた手の力がだんだん強く・・・!?
「いはいいはいいはいいはいぃー! ちょ、それやばし! とてもやヴぁいやつです!」
「それとも何か? このまま顎から下を切り取って、物理的に黙らせてやろうか? どうだ、言ってみろ。」
あごが! 顎が割れる! 何この人握力超強いんですけど!?
『貴族は怖いっていってもだいたいこんなもんでしょー』とか思ってたやつより10段階くらい上にやっばい人でしたぁぁぁ!
イケメン貴族さんはデンジャラス貴族さんでしたぁぁぁぁぁ!
「ノー! ノーであります、サー!」
「分かったら、黙ってさっさと歩け!!」
「ヒギィィィィ!」
いったぁ!?
お、おしりを鞘でぶたれましたよ!?
嘘でしょ・・・貴族ってここまでするの?
無理。貴族無理。ノーモア玉の輿貴族婦人。
「なんだあれ・・・」
「あれ、マリーシアだよな?」
「ついに借金に手を出したか・・・」
「いつか借金取りに捕まるとは思ってたんだよな・・・」
そしてなぜか私を哀れむ街の人たち。
いや、おかしいでしょ。暴行受けてるんだから助けるでしょ普通。最低でも声くらいかけるでしょ。
私、今、街中で後ろから剣の鞘でおしり叩かれてるんですよ? なんで私が悪いみたいな雰囲気になってるの?
「うぅ、やはり私にはヒイロさんしかいないんですね・・・とりあえず早急にこのデンジャラス貴族を引き取ってもらわないと・・・」
「メス豚の分際で人間の言葉をべらべらと喋りおって。生意気だとは思わんか?どうだ、ほら何とか言ってみろ」
「ひぃぃ! ぶひぃ! ぶひぃ!」
なんなのこの人!? っていうか人ってここまで無慈悲に人のおしりをバシバシ叩けるものなの!?
「ふはははは! うるさいぞメス豚、黙って歩かんか! っそら!!」
「ぶっひぃぃぃぃ!」
なんかちょっと癖になりそう・・・って、んなわけないですよ!痛いもんは痛いです!
なんでこの街には私以外は頭おかしい人しかいないの!?
master1415先生のほうでは今話のルドルフ視点でのお話が楽しめます!ぜひ今話と一緒に読んでみてください!
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