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5話

 連れてこられたのは高級ホテルを思わせる、立派なマンションの最上階だった。

しかもそのフロアはすべて蜥蜴人さんが所有しているらしい。

 そのフロアは自由に歩き回っても良いと言われた……ただ外に出るのと階下に降りるのは危険なので禁止と何度も釘刺された。


 しかも私の部屋という事で丸々一室与えられた部屋は大きなベッドやらどうみても高級な家具が揃っているし、なんとなく開いてみた箪笥には洋服がズラリと並んでいて、その洋服は私が普段着ているようなワンピースとは明らかに生地が違っていたし。


 っていうか。

ペットってこんなに自由なもんなの?

 いや、そもそも……なんで私ここにいるの? 

ハゲワシさんに買われたはずなのに、なんで飼い主が蜥蜴人になっているの?


 訳がわからないまま座っていたダイニングテーブルに蜥蜴人が料理を運んできた。

「喰え!」

 よーく焼いた謎のお肉とシリアルが私の前に並んでいる。

 彼の前にほぼ生のステーキ。

「人間って基本俺らと食い物かわらねーみたいだなあ。食えんだろ、これ?」

 そう言って私をじーっと見つめる。


 ステーキは美味しそうな匂いがするし、シリアルは好きだけどじっと見つめられると食べにくい。

居心地悪そうにしている私に気づいたのか、蜥蜴人さんは自分のステーキを食べ始めた。

 視線が私から外れたので、私も安心して食事に手を出すことにする。

 まずはステーキ。実は食べた事がない。お肉といえばソーセージとかハムを時々食べさせてもらえるぐらい。基本私の食事はシリアルとサプリメントなのでステーキは凄く楽しみ!

 

 フォークでグサッとお肉を刺すとガブリと噛みついた。

お肉はすんなりと噛み切れ、2口3口噛んだだけで肉の旨みだけを残しすぐにに口の中から消え去ってしまった。

 

 「おいしい……っ!」


 なにこれー! なにこれー! すごーい! ソーセージとは全然ちがうー。ソーセージやハムも美味しいけどこれは格別に美味しい!

 その美味しさに一気にお肉を食べ終わり、ふと前方を見ると蜥蜴人がジッと私をみていた。

 顔に血がのぼって真っ赤になるのがわかる。

 「肉もっと食べる?」

 ちょっと可笑しそうに蜥蜴人が聞いてくるので私はブンブンと顔を横に振った。

私、そんなにお腹すいてるように見えたのだろうか……見えるよね、今の食べ方じゃあ……。


 くくく、と笑う蜥蜴さん、食事の続きを始める。

ああ、やっぱり違うなあ。なんか、食べ方が凄く綺麗だ。

 そして私のステーキの5倍ぐらいはありそうなステーキをあっさりと完食。

 見とれてしまっていた私は、思い出したようにシリアルに手を出した。


 「ところで。お前、名前なんていうの?」


 ……名前?

 首をかしげる私。


 「いや、だから……名前ぐらいあんだろ? なんて呼ばれてたのよ?」

 「……?」

 「俺はリューイ! リューイっていうの! お前のな・ま・え・は!?」

イライラと怒鳴るリューイ、怖い。

 

 「あ、わりぃ。怒ってるわけじゃなくてだな……お前、まさか名前ないの?」

 私はフルフルと首を横にふる。

 「名前あるのか?」

 私はフルフルと首を横にふる。

 「どっちだよ! ……あー、いや、怒ってねーから」


 「名前じゃないけど……赤い子、って呼ばれてた。産まれてきた時にね、区別する為に足にリボンを巻くの。そのリボンの色が赤だったから」

 チラリとリューイを見て続ける。

 「本当の名前は飼い主がつけるんだよ、って言われた」

 ジッとリューイを見つめる。

リューイが困惑しているのがなんとなくわかる。


 「あー……そうか……。名前、ねぇ……。赤か……レッド、紅、薔薇、チューリップ、梅干し、太陽……太陽か!」


 なんか赤をベースに名前を考えてくれている。

リューイは太陽が気に入ったらしい? けど太陽って呼びづらそう。まあ私が呼ぶわけじゃないのでどうでもいいけど。


「よし! お前今日から『太陽』だから。でも呼びづらいから略して『陽』で『ヒィ』な!」


 なんかよくわからないけど私は太陽でヒィらしい。

よくわからないけどコクリと頷く。

 リューイが優しく「ヒィ」と呼んで頭を撫でる。


 ん? あれ? なんか初ステーキの流れですっかり忘れてたけど、私、なんでこんな状況になってるんだっけ? 飼い主がハゲワシさんからリューイに変わった経緯とか全くわからないんだけど……。

 まあいいか、ステーキとっても美味しかったし。もう深く考えても意味がない。

名前つけてもらったし、リューイが飼い主って事でいいや。


 お腹がいっぱいになった私は眠くなってきてしまい大きな欠伸をひとつ。

 「眠る前に風呂だ。風呂とトイレこっち」

 そう言って私の手を引き案内するリューイ。

でももう今日はお風呂入らずに寝たい……凄く眠くなってきた。

 「あー、ヒィ、お前ひとりで風呂入れるの?」

 一瞬どーいう意味かわからなかったけど。お風呂ぐらい一人で入れるよ! 子供じゃないんだから!

 力いっぱい大きく頷くとリューイがホッとしたのがわかった。


 「着替えだしといてやるから、風呂入ってろ」


 そう言われたので素直に従う事にする。

脱衣所に入って驚いた。なんか無駄に広い。そして綺麗。

 なんか落ち着かないけど服を脱いで浴場に進み更に驚く。

無駄に広いのは当然ながら、その大きな窓に驚いた。

 街を見下ろす夜景が一望できる大きな窓。


 ……てか、これ外から丸見えなんじゃないの?

まあ、このマンションより高いマンションがないみたいだけど。

 でも誰かに見られてる気がしてバスタオルをはずすことができない。

 こんなお風呂ではゆっくりくつろぐ事もできないだろうに……お金持ってる人って変。


 落ち着かないままコソコソと体を洗い、さっさとお風呂をでると着替えの用意がされていた。

下着……これ、リューイが買ってきたのかな……どんな顔して買うんだろう?

 平然と女性用の下着を買うリューイが想像できたけど、どうなのこれ。

 パジャマと思ってきたシャツは男物の大きなシャツだった。リューイのかな?

かなり大きくまるでワンピースのようだ。


 髪をタオルでよーく拭きとるとそのまま脱衣所をあとにした。

体がぽかぽかして益々眠気がひどくなる。

あの大きなベッドを使ってもいいのだろうか、いいよね、私の部屋だっていってたし。


 てふてふと廊下を歩いて居間へいくとリューイがいた。

「髪、ちゃんと乾かさないとダメだ……眠いのか?」

 眠さで意識が朦朧とする。

「……ほら、乾かしてやるからこっちこい」

「ん~……」よくわからないままにリューイの方に歩いていく。

 腕を引っ張られ座らされる。

「寝てていいぞ、後で運んでやるから」

 リューイの声が耳元で聞こえる。


 ガシガシとマッサージされているかのように頭を拭かれ、なんだかそれが凄く気持ちよくて……私はすぐに眠りに落ちてしまった……。


 


お金持ちの食べる肉は霜降りステーキってやつです、たぶんきっと。

よく芸能人が「口の中でとろける~」とか言いつつ噛んでるやつですね。

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